循環器トライアルデータベース

EMPULSE
Empagliflozin 10 mg Compared to Placebo, Initiated in Patients Hospitalised for Acute Heart Failure (De Novo or Decompensated Chronic HF) Who Have Been Stabilised

目的 SGLT2阻害薬の慢性心不全に対する有効性については,EMPEROR-PreservedEMPEROR-ReducedDAPA-HFにより示されているが,急性心不全患者に対する有効性は不明である。本試験では,急性心不全で入院した患者を対象に,empagliflozinの有効性をプラセボと比較した。

一次エンドポイントは,全死亡,心不全イベント,カンザスシティ心筋症質問票総合症状スコア(KCCQ-TSS)の階層的複合評価。
コメント Empagliflozin(SGLT2阻害薬)の慢性心不全患者に対する有用性は,EMPEROR-Reduced試験,EMPEROR-Preserved試験で左室駆出率(LVEF)によらず有効であることが示されているが,今回のEMPULSE試験で急性心不全に対する早期介入の有効性が初めて示された。割り付け後90日間の評価ではあるが,全死亡,心不全イベント,心不全症状(KCCQ-TSSスコア)が,心不全病型(新規心不全/慢性心不全の増悪),糖尿病合併の有無,LVEFの良否に関わらず認められたことは重要な成果である。安全性についても過度の血圧低下,ケトアシドーシス,重篤な脱水症状は見られなかった。サブグループ解析でも,年齢,性別,腎機能によって有効性に差がなかったが,アジア人集団で有効性が示せなかったのは,症例数が少ないための限界とは言え,気になるところである。今後,日本人集団での検証が望まれる。(
デザイン ランダム化,二重盲検,プラセボ対照,多施設(15ヵ国,118施設),intention-to-treat解析。
期間 登録期間は2020年6月~2021年2月。
対象患者 530例。18歳以上(日本人は21歳以上),左室駆出率(LVEF)にかかわらず,急性心不全(新規または非代償性慢性心不全)により入院し,臨床的に安定した患者。
急性心不全の診断は,安静時または運動時の呼吸困難があり,胸部X線検査上の肺うっ血像,聴診上のラ音,浮腫,頸静脈の怒張のうち,2項目以上を満たす場合とする。患者は24時間以後5日以内に割付を行う。
除外基準:
・収縮期血圧100mmHg以下
・割付前6時間以内の利尿薬(IV)の増量,血管拡張薬(IV)の投与
・NT-proBNP<1600pg/mLまたはBNP<400pg/mL
・心原性ショック,肺塞栓,脳血管障害,急性心筋梗塞
・心移植,在宅補助循環の予定者
・強心薬(IV)で治療中
・eGFR<20mL/min/1.73m²
■登録時患者背景:年齢中央値はempagliflozin群71歳,プラセボ群70歳,各群の男性67.5%,64.9%。白人79.6%,76.2%。NYHA心機能分類II 35.8%,34.3%,III 50.6%,54.7%,IV 9.8%,8.7%。KCCQ-TSS中央値37.5,39.6。LVEF≦40%:68.7%,64.9%。糖尿病46.8%,43.8%。
治療法 empagliflozin群(265例):10mg/日またはプラセボ群(265例)に1:1の比でランダム化。
結果 [一次エンドポイント(全死亡,心不全イベント,KCCQ-TSSの階層的複合評価)]
・全死亡
empagliflozin 群11例(4.2%),プラセボ群22例(8.3%)が死亡した。
・心不全イベント
empagliflozin群28例(10.6%),プラセボ群39例(14.7%)に心不全イベントが発症した。
・KCCQ-TSS
ベースライン時から90日後における変化(平均)は,empagliflozin群36.2,プラセボ群31.7であった。

上記3項目の階層的総合評価により,empagliflozin群の勝率は53.9%,プラセボ群の勝率は39.7%,引き分けは6.4%で,empagliflozin群がプラセボ群よりすぐれた臨床的有用性を有する確率を推定するwin ratioは1.36(95%CI 1.09-1.68)と有意に高かった(P=0.0054)。
empagliflozinの臨床的有用性は,急性心不全の状態(新規または非代償性),LVEF,NT-proBNP値,糖尿病の有無,年齢,性別,腎機能(eGFR)などのサブグループ間で一貫していた。

[二次エンドポイント]
心血管死または心不全イベントはempagliflozin群12.8%,プラセボ群18.5%であり,有意差はなかった(HR 0.69,95%CI 0.45-1.08)。

[安全性]
試験薬の中止に至る有害イベントはempagliflozin群8.5%,プラセボ群12.9%,重篤な有害事象はそれぞれ32.3%,43.6%に認められた。


★結論★急性心不全のため入院した患者において,早期にempagliflozinを追加することにより,安全性の懸念なく90日後の臨床的有用性を得られる可能性がある。
ClinicalTrials. gov No: NCT04157751
文献
  • [main]
  • Voors AA, et al. The SGLT2 inhibitor empagliflozin in patients hospitalized for acute heart failure: a multinational randomized trial. Nat Med. 2022; 28: 568-574. PubMed

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収載年月2022.05