循環器トライアルデータベース

ADAPTABLE
Aspirin Dosing: A Patient-Centric Trial Assessing Benefits and Long-Term Effectiveness

目的 心血管疾患患者において死亡,心筋梗塞,脳卒中のリスクを抑制し,大出血を最小化するaspirinの適切用量についての議論は定まっていない。本試験では,aspirin 325mg/日は81mg/日にくらべ死亡,心筋梗塞,脳卒中のリスクを抑制するか検討した。

有効性の一次エンドポイントは,全死亡+心筋梗塞による入院+脳卒中による入院(生存時間解析)。
安全性の一次エンドポイントは,大出血による入院(生存時間解析)。
コメント 20年前には世界の脅威であった循環器疾患について,各種のランダム化比較試験により標準治療が確立された。心血管イベント発症後の二次予防であっても標準治療による予後が改善したため,革新的新薬の必要性は減った。巨大製薬メーカーの新薬開発の意欲も減退し,循環器領域の新薬開発臨床試験の数は激減した。NEJMは,循環器領域の新薬開発試験を多く掲載してきた。新薬開発試験の減少により,NEJMなどの循環器一流雑誌における臨床的研究の採択のバーは下がっている。
本研究は実臨床において,アスピリン81 mgと325mgの有効性,安全性を比較したランダム化比較試験である。新薬の治験とは異なる。また,アスピリンは米国では著しい安価で購入できるOTC薬である。割り付けはシステムが行い,イベントもシステム上にて有無を判定する。循環器の新薬開発試験が活発に施行されていた数年前であれば却下されていたqualityの試験である。
米国におけるアスピリンの購入には処方箋は不要である。81 mgでも325 mgでも価格に大きな差はない。サクッと検索するとWalgreenにて325 mgのアスピリンが500錠で4.79ドル(530円くらい),81 mgが500錠で10.99ドル(1200円くらい)なので,試験の参加により25ドル貰えれば1000円くらいはお小遣いが残る。
循環器のランダム化比較試験は莫大なコストがかかるビッグビジネスであった。1例数万ドルとされた症例登録費用が1例数十ドルになれば経済的インパクトは大である。ランダム化比較試験がお小遣い程度の費用で施行可能な時代になれば,日本でも実臨床の上でのプラグマティックトライアルによりNEJMの論文を増やすことができるかも知れない。臨床試験に価格破壊が起こっていることを示す研究であった。(後藤
デザイン ランダム化,オープンラベル,多施設(米国のPatient-Centered Outcomes Research Institute[PCORI]のPCORInetに参加の40施設+健康保険1件)。
期間 追跡期間中央値26.2ヵ月。
登録期間は2016年4月~2019年6月。
対象患者 15,076例。アテローム動脈硬化性心血管疾患と確定診断された患者。

■登録時患者背景:年齢中央値は81mg/日群67.7歳,325mg/日群67.5歳。各群の女性30.6%,32.1%。体重中央値90.0kg,90.0kg。白人79.8%,79.3%。心筋梗塞既往35.6%,35.0%。高血圧83.3%,83.1%。脂質異常症86.1%,86.1%。
治療法 aspirin 325mg/日群(7,536例)または81mg/日群(7,540例)に1:1の比でランダム化。同時に,追跡間隔(3ヵ月または6ヵ月)のランダム化も行われた。
患者は割り付けられた用量のaspirinを薬局で購入した。患者には試験参加の報酬として,25ドルが支払われた。追跡期間中対面での診察は行われず,割り付けられた間隔でインターネットまたは電話での追跡が行われた。
結果 ランダム化前に13,537例(aspirin服用に関するデータを入手できたうちの96.0%)がaspirinを服用していた。服用していた用量は,81mg/日85.3%,162mg/日2.3%,325mg/日12.2%であった。

[有効性の一次エンドポイント:全死亡+心筋梗塞による入院+脳卒中による入院]
81mg/日群590例(追跡期間中央値における推定値7.28%),325mg/日群569例(同7.51%)で,同程度であった(HR 1.02,95%CI 0.91-1.14)。
全死亡:81mg/日群315例(推定値3.80%),325mg/日群357例(同4.43%),HR 0.87,95%CI 0.75-1.01。
心筋梗塞による入院:228例(推定値2.99%),213例(同2.87%),HR 1.06,95%CI 0.88-1.27。
脳卒中による入院:102例(推定値1.23%),92例(同1.27%),HR 1.09,95%CI 0.82-1.45。

[安全性の一次エンドポイント:大出血による入院]
81mg/日群53例(追跡期間中央値における推定値0.63%),325mg/日群44例(同0.60%)で,同程度であった(HR 1.18,95%CI 0.79-1.77)。

325mg/日群における用量変更は41.6%と81mg/日群7.1%より多く,また割り付けられた用量の曝露日数中央値が短かった(650日vs. 434日)。
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★結論★ アテローム動脈硬化性心血管疾患患者における心血管イベントおよび大出血について,aspirin 81mg/日と325mg/日の間に有意差は認めなかった。325mg/日群は81mg/日への用量変更が多かった。
ClinicalTrials. gov No: NCT02697916
文献
  • [main]
  • Jones WS, et al.; ADAPTABLE Team. Comparative Effectiveness of Aspirin Dosing in Cardiovascular Disease. N Engl J Med. 2021; 384: 1981-1990. PubMed

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収載年月2021.07