循環器トライアルデータベース

EMPEROR-Reduced
Empagliflozin Outcome Trial in Patients with Chronic Heart Failure and a Reduced Ejection Fraction

目的 左室駆出率の低下した慢性心不全(HFrEF)患者を対象に行われたDAPA-HF試験では,心不全の標準治療へのSGLT2阻害薬dapagliflozinの追加はプラセボにくらべ,糖尿病の有無にかかわらず,心不全の悪化および心血管死リスクを低下させた。本試験では,HFrEF患者において,SGLT2阻害薬empagliflozinの有効性を検討した。

一次エンドポイントは,心血管死+心不全による入院の複合。
コメント 本臨床試験はDAPA-HF試験に続いて,SGLT2阻害薬(empagliflozin)が糖尿病の有無にかかわらずHFrEF患者の予後改善に有効か否かを検証した大規模臨床試験であり,期待通り心血管死および心不全による入院を有意に抑制した。心血管死の抑制効果(8%の減少)はDAPA-HF試験(18%の減少)より小さかったが,2型糖尿病患者を対象とした試験では,その抑制効果は薬剤(empagliflozin, dapagliflozin, canagliflozin)によらず一貫しており,薬剤による差とは考えられない。一方,腎機能(eGFR)の低下速度が,empagliflozin群はプラセボ群に比し小さく,腎保護作用が心不全の抑制に寄与していることが示唆された。本臨床試験によりSGLT2阻害薬の効果として,糖尿病の有無にかかわらず,HFrEF患者の予後改善および心不全の悪化抑制に有効であることが確認されたといえよう。また,ARNI(sacubitril/valsartan)と同様,心不全治療における心腎連関の重要性を示したことも特記すべきである。(
デザイン ランダム化,二重盲検,プラセボ対照,多施設(20ヵ国,520施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間中央値16ヵ月。
登録期間は2017年4月~2019年11月。
対象患者 3,730例。18歳以上,NYHA心機能分類II~IVでLVEF≦40%のHFrEF患者。重篤な心不全イベントリスクが高い患者を登録するため,LVEF≧30%の場合は12ヵ月以内に心不全による入院歴があるか,NT-proBNPが高値(LVEF≧30%ではNT-proBNP≧600pg/mLに対し,31~35%では≧1,000 pg/mL,36~40%では≧2,500 pg/mL)の患者を対象とした。心房細動を有する場合はNT-proBNPの基準値を上記の2倍とした。

■登録時患者背景:平均年齢はempagliflozin群67.2歳,プラセボ群66.5歳,各群の女性23.5%,24.4%。NYHA心機能分類II 75.1%,75.0%,III 24.4%,24.4%,IV 0.5%,0.6%。平均SBP 122.6 mmHg,121.4 mmHg。平均LVEF 27.7%,27.2%。NT-proBNP中央値1,887 pg/mL,1,926 pg/mL。平均eGFR 61.8 mL/分/1.73m²,62.2 mL/分/1.73m²。12ヵ月以内の心不全による入院31.0%,30.7%,心房細動35.6%,37.8%,糖尿病49.8%,49.8%,高血圧72.4%,72.3%。
治療法 地域(北米,ラテンアメリカ,欧州,アジア,その他),糖尿病の状態,eGFR(<60または≧ 60 mL/分/1.73m²)による層別化後,empagliflozin群(1,863例):10mg/日またはプラセボ群(1,867例)に1:1の比でランダム化。
いずれも心不全標準治療への追加投与。
評価は2~3ヵ月おきに行った。
結果 治療はempagliflozin群303例(16.3%),プラセボ群335例(18.0%)で早期に中止された。

[一次エンドポイント:心血管死+心不全による入院の複合]
empagliflozin群は361例(19.4%)と,プラセボ群462例(24.7%)にくらべ,有意に低下した[ハザード比(HR)0.75,95%CI 0.65-0.86,P<0.001]。
心血管死:HR 0.92,95%CI 0.75-1.12
心不全による入院:HR 0.69,95%CI 0.59-0.81
empagliflozinによる一次エンドポイント抑制効果は,糖尿病の有無にかかわらず一貫していた(糖尿病患者:HR 0.72,95%CI 0.60-0.87,非糖尿病患者:HR 0.78,95%CI 0.64-0.97)。

[二次エンドポイント:心不全による全(初回および再)入院,eGFRの低下率]
心不全による入院はempagliflozin群388件で,プラセボ群553件にくらべ,有意に少なかった(HR 0.70,95%CI 0.58-0.85,P<0.001)。
eGFRの低下率(/年)はempagliflozin群(-0.55 mL/分/1.73m²)で,プラセボ群(-2.28 mL/分/1.73m²)より小さく,有意な群間差が認められた(1.73 mL/分/1.73m²/年,95%CI 1.10-2.37,P<0.001)。
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★結論★ 心不全に対する推奨療法を受けているHFrEF患者において,2型糖尿病の有無にかかわらず,empagliflozin群はプラセボ群にくらべ,心血管死+心不全による入院のリスクを有意に抑制。
ClinicalTrials. gov No: NCT03057977
文献
  • [main]
  • Packer M, et al.; EMPEROR-Reduced Trial Investigators. Cardiovascular and Renal Outcomes with Empagliflozin in Heart Failure. N Engl J Med. 2020; 383: 1413-1424. PubMed

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収載年月2021.04