循環器トライアルデータベース

STOP AF First
Cryoballoon Catheter Ablation in Antiarrhythmic Drug Naïve Paroxysmal Atrial Fibrillation

目的 薬物治療が奏効しない症候性の発作性心房細動(PAF)の再発予防には,抗不整脈薬よりカテーテルアブレーションのほうが有効である。しかし,先行研究は高周波カテーテルアブレーションと薬物療法との比較であり,第一選択治療としてのバルーンカテーテルの薬物治療に対する優越性は確立されていない。
Stop AF First試験では,薬剤抵抗性の症候性PAF患者において,抗不整脈薬治療を対照に,第一選択治療としてのクライオバルーンアブレーションの有効性および安全性を検証した。

有効性の一次エンドポイントは,12カ月後の治療の成功*
安全性の一次エンドポイントは,手技およびクライオバルーンシステム関連の重篤な有害事象**
* 90日(ブランキング期間)後以降のイベントフリー率; 左心房の手術やアブレーション/心房性不整脈の再発/カルディオバージョン/抗不整脈薬の使用(アブレーション群のみ)。
** アブレーション群のみで評価。手技後30日以内の心嚢液貯留,手技後12カ月以内の症候性の肺静脈狭窄または左房-食道瘻,12カ月後の横隔神経傷害および手技後7日以内の一過性脳虚血発作,脳卒中,心筋梗塞,重篤な血管合併症など。
コメント 本研究は,発作性心房細動の初めてのリズム・コントロールとして,抗不整脈薬治療に比べてクライオアブレーションが有効であることを示した。これまで高周波エネルギーを用いたアブレーションが抗不整脈薬より優れた再発予防効果を示すことが,繰り返し報告されてきたことを思えば,今回の結果は当然予想されたものである。
本研究の限界・問題点として,まず症例数が少ないこと,使用されたアブレーション器具が第二世代であることが挙げられる。新しい器具で,多くの症例を対象にすれば,異なる結果(アブレーションのさらに高い有効性?)が出るのではないか? 次に,再発予防効果の判定が定期受診時の心電図・ホルター心電図,心電図電話伝送で行われていることである。昨今ではより厳密な再発効果の判定に,植え込み型の心電図モニターが利用されることが多い。本研究では,発作頻度の低い,無症候性の再発を評価できていない可能性がある。アブレーション後には,再発が無症候性になることがしばしばあり,このような例を拾い上げられていない可能性である。QOLの評価はアブレーション群のみで実施されており,薬物治療群でも実施されていればアブレーション群の有用性が検証できたであろう。薬物治療群の約1/3の例でアブレーションへのクロスオーバーが起きている。そのうちの半数弱はエンドポイントとして計上され,残りの半数強ではエンドポイント発生後であったが,いずれにしても主治医・患者ともにアブレーションの優越性を受け入れていることの証しであろう。(井上
デザイン 無作為割付け,多施設(米国の24施設),modified intention-to-treat解析。
期間 登録期間は2017年6月~2019年5月。
対象患者 203例。18~80歳の症候性PAFを繰り返し,初めてリズム・コントロールを受ける患者。
おもな除外基準:過去7日間以上の抗不整脈薬による治療歴,左房径>50mm,左房アブレーション歴あるいは手術歴など。

■登録時患者背景:平均年齢(クライオアブレーション群60.4歳/薬物治療群61.6歳),男性(61%/58%)。
  • 左房径:クライオアブレーション群 38.7mm/薬物治療群38.2mm。
  • おもな併存症:高血圧(56%/58%),糖尿病(14%/17%),睡眠時無呼吸(25%/20%),冠動脈疾患(両群とも12%)。
  • CHA2DS2-VAScスコア>3の割合:クライオアブレーション群11%/薬物治療群14%。
  • 治療状況:抗凝固薬(両群とも69%),アスピリン(20%/13%),Ca拮抗薬(10%/4%),β遮断薬(6%/9%)。
治療法 第二世代のクライオアブレーション(Arctic Front Advance™ 冷凍アブレーションカテーテル,Medtronic社)により肺静脈隔離法を行う群(クライオアブレーション群104例)と,ACC/AHA/HRSのガイドラインに則った抗不整脈薬を投与する群(薬物治療群99例)に1:1の比でランダム化。
両群ともランダム化後30日以内に治療開始。クライオアブレーション群は,手技後80日間までは抗不整脈薬の服用(除くamiodarone)が認められた。
不整脈のモニタリングは,以下の方法で実施; ① ベースラインおよび1,3,6,12カ月後の定期受診時:12誘導心電図,② ブランキング期間後:患者自身による心電図電話伝送(毎週/症状発生時),③ 6および12カ月時点:24時間ホルター心電図。
薬物治療群における薬剤の投与量および投与間隔の調整は,介入開始後90日間は許可(以後の変更は推奨せず)。
結果 追跡期間12カ月。追跡調査を完遂したのは203例中193例(95%)。
90日間のブランキング期間中のクライオアブレーション群の手技成功率は97%。クライオアブレーション群の平均手技時間は,139分。 
[一次エンドポイント:12カ月後の治療の成功*
クライオアブレーション群74.6%[95%信頼区間(CI)65.0~82.0] vs. 薬物治療群45.0%(95%CI 34.6~54.7); P <0.001(ログランク検定)。
試験中のアブレーション再実施は,両群ともなし。
アブレーションへのクロスオーバー:薬物治療群の15例でアブレーション実施(エンドポイントに算入)。その他に19例はエンドポイント発生後にアブレーション実施。

[安全性の一次エンドポイント:重篤な手技関連またはクライオバルーンシステム関連の有害事象の発生**
  • イベント発生は,2例(手技後30日以内の心嚢液貯留/手技後7日以内の心筋梗塞)。
  • Kaplan-Meier法による12カ月以内の安全性の一次エンドポイント発生率は1.9%(95%CI 0.5~7.5)。

[その他]
  • 重篤な有害事象の発生:両群で同等(14%)。
  • クライオアブレーション群におけるQOLの変化については,手技後の有意な改善が認められた[QOLの指標には,Atrial Fibrillation Effect on Quality of Life (AFEQT)およびEQ-5Dを採用,ベースラインと12カ月後のスコアを比較して評価]。
  • 手技後の医療機関利用の状況:①入院(クライオアブレーション群13例/薬物治療群32例),②救急外来受診(10例/17例),③予定外の外来受診(44例/39例)。

★結論★ 薬物治療抵抗性の症候性PAFに対する第一選択治療としてのクライオアブレーションは,抗不整脈薬治療に比べ再発予防に有効。
ClinicalTrials. gov No: NCT03118518
文献
  • [main]
  • Wazni OM, et al for the STOP AF First Trial Investigators: Cryoballoon Ablation as Initial Therapy for Atrial Fibrillation. N Engl J Med. 2021; 384: 316-24. PubMed

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収載年月2021.03