循環器トライアルデータベース

EAST-AFNET 4
Early Treatment of Atrial Fibrillation for Stroke Prevention Trial

目的 現行のガイドラインに準じた適切な管理にもかかわらず,心房細動患者における脳卒中,心不全などの心血管合併症リスクは依然として低下していない。
心房細動の心血管合併症リスクは発症早期に増加する可能性が示唆されているが,これに対するリズムコントロール(洞調律維持療法)の有効性は明らかになっていない。
現在,心房細動の治療は,先行試験の結果を受け,リズムコントロールよりレートコントロール(心拍数調節療法)が優先される傾向にあるが,いくつかの小規模試験ではリズムコントロールの早期介入が有効で,患者転帰を改善する可能性が示唆されている。
EAST-AFNET 4試験では,発症早期の心房細動患者において,早期のリズムコントロールとレートコントロールの有効性および安全性を比較検討した。

一次エンドポイントは,心血管(CV)死,脳卒中,心不全の増悪または急性冠症候群(ACS)による入院の複合。
安全性の一次エンドポイントは,全死亡,脳卒中,事前に設定されたリズムコントロールに伴う重篤な有害事象の複合。
コメント 心房細動が持続するにつれ心房リモデリングが生じ,細動がますます起こりやすく,その持続も長くなることが様々な実験で明らかにされてきた(AF begets AF)。この概念が妥当であるなら,臨床例においても早期に心房細動を抑制して洞調律を維持すれば,その後の心房細動再発やそれに伴う種々の合併症も抑制できるのではないかという作業仮説を検証するために本試験が実施された。
その結果,診断後の早期からリズムコントロールを行い洞調律を維持するように努めると,2年後に82.1%の例で洞調律が維持され(対照群では60.5%),イベント,とくに心血管死と脳卒中を,レートコントロールに比べると有意に抑制することができた。ただし,治療に伴う有害事象(多くは抗不整脈薬関連)がリズムコントロール群で多かった。
かつてAFFIRM試験など,リズムコントロールとレートコントロールを比較した試験では,イベント発生率に差がみられなかった。その当時,アブレーションは導入されておらずリズムコントロールは抗不整脈薬によっていたこと,使用される抗不整脈薬の種類も異なること,心血管疾患などの併存症に対する治療にも差があることなどが,関係していよう。本試験では2年後のアブレーション実施率は19.4%とそれほど多いわけではない。
本試験では,レートコントロール群でも2年後に60.5%が洞調律であり,また実際のAF burdenが評価されておらず,追跡期間中のAF再発頻度・持続時間が不明である。したがって,どの程度に洞調律を維持すればイベント発生を抑制できるかは明らかではない。しかし,心房細動発生後の早期にリズムコントロールを開始し洞調律を維持するという治療方針の有効性が示唆された意義は大きい。(井上
デザイン 無作為割付け,非盲検,多施設(欧州11カ国,135施設),医師主導型,intention-to-treat解析。
期間 登録期間は2011年7月~2016年12月。
対象患者 2789例。≧18歳の発症早期(初回診断から≦12カ月)の心房細動患者で,一過性脳虚血発作/脳卒中の既往がある>75歳の者か,以下の条件*のうち2つ以上に該当する者。
* 年齢>65歳,女性,心不全,高血圧,糖尿病,重症冠動脈疾患,慢性腎臓病,左室肥大,末梢動脈疾患。

■患者背景:平均年齢70.3歳,女性46.4%。
  • 心房細動の診断から登録までの日数:中央値で36日。
  • 登録時の心房細動の状況:初発 37.6%,発作性 35.6%,持続性 26.6%。
  • 登録時の洞調律の割合:54.0%
  • 登録時のCHA2DS2-VASCスコアの平均値:3.4
治療法 現行のガイドラインが推奨する治療(抗凝固薬,レートコントロール)および合併するCV疾患に対する治療を受けたうえで,早期のリズムコントロール(洞調律維持療法)**群(1395例)または標準治療のみの群(1394例)に1:1の比でランダム化。
** 抗不整脈薬または心房細動アブレーションによる治療。調律は遠隔モニタリングデバイス(Vitaphone)で管理。週に2度また症状発生時は,ECGを送信するよう指示。
抗凝固薬による治療とレートコントロール(心拍数調節療法)を中心とした治療。これらの治療でも心房細動による症状が生じた場合は,リズムコントロールを実施。
結果 追跡期間中央値5.1年。
有効性が確認されたため,第3回目の中間解析の時点で試験は中止。
2年後の治療状況は,リズムコントロール群では65.1%が抗不整脈薬継続,標準治療群では85.4%がレートコントロールを継続。

[一次エンドポイント:CV死,脳卒中,心不全の増悪または急性冠症候群(ACS)による入院の複合]
早期リズムコントロール群249例(3.9/100人・年) vs. 標準治療群316例(5.0/100人・年)[ハザード比(HR)0.79; 96%信頼区間(CI)0.66~0.94; P =0.005]。早期リズムコントールの標準治療に対する優越性は,CV死,脳卒中についても認められた。

[安全性の一次エンドポイント:死亡,脳卒中,事前に設定されたリズムコントロール(洞調律維持療法)に伴う重篤な有害事象の複合]
早期リズムコントロール群231例(16.6%)vs. 標準治療群223例(16.0%)で,有意差は認められなかった。
  • 脳卒中:早期リズムコントロール群2.9% vs. 標準治療群4.4%(P =0.03)。
  • 死亡:9.9% vs. 11.8%。
  • リズムコントロールに関連する重篤な有害イベント:4.9% vs. 1.4%(P <0.001)。

[二次エンドポイント:年間入院日数]
群間で有意差は認められなかった。
平均値:早期リズムコントール群 5.8日/年 vs. 標準治療群5.1日/年(P =0.23)。

[その他]
症状,左室機能,認知機能の2年間の変化:両治療群間に有意差は認められなかった。

★結論★ 発症早期の合併症リスクが高い心房細動患者における早期リズムコントールは,レートコントロールによる標準治療にくらべ,心血管有害イベントリスクを低減させた。
ClinicalTrials. gov No: NCT01288352
文献
  • [main]
  • Kirchhof P, et al for the EAST-AFNET 4 Trial Investigators: Early Rhythm-Control Therapy in Patients with Atrial Fibrillation. N Engl J Med. 2020; 383: 1305-16. PubMed

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収載年月2020.11