循環器トライアルデータベース

ELDERCARE-AF
Edoxaban Low-Dose for Elder CARE Atrial Fibrillation Patients

目的 非弁膜症性心房細動(NVAF)患者に対する直接経口抗凝固薬(DOAC)は,脳卒中(心原性脳塞栓症)予防のファーストラインの治療薬として推奨されている。しかし,高齢患者への投与については,出血リスクへの懸念から十分に行われているとは言いがたく,適切な投与量の判断がむずかしい。
ELDERCARE-AF試験では,これまで検討が行われてこなかった,標準用法・用量での投与が適用されない超高齢患者における経口直接Xa阻害薬edoxabanの有効性および安全性を検討した。

有効性の一次エンドポイントは,脳卒中および全身性塞栓症の複合。
安全性の一次エンドポイントは,ISTH(International Society on Thrombosis and Haemostasis)基準による大出血。
コメント 心房細動例の血栓塞栓症の予防に抗凝固療法が有効であることは論を俟たない。有病率の高まる高齢患者でこそ抗凝固療法が必要になるが,高齢は出血の危険因子であるため,主治医はややもすると高齢患者には抗凝固療法を見送りがちである。あるいは,効果の不確実な低用量投与を行うこともある。
出血リスクが高く,通常用量の抗凝固療法を行いがたい(と思われる)高齢日本人患者を対象に,低用量edoxaban(15 mg/日)の効果と安全性をプラセボと比較したのが本試験である。その結果,低用量edoxabanは血栓塞栓症の抑制に有効で,大出血の発生を有意に増やさなかった(ただし,消化管出血は有意に多かった)。Net clinical benefit(脳卒中,全身性塞栓症,心血管)は,有意差はつかないもののedoxaban群で低頻度であった。
日常臨床の場では,出血リスクを恐れて,高齢心房細動患者には低用量の抗凝固薬が投与されることがしばしばみられるが,主たる投与目的の血栓塞栓症の予防に有効であるか否かまったく情報のない中で行われているのが現状である。初めて本試験で推奨用量より低い用量のedoxabanが大出血を増やすことなく,80歳以上の高齢患者の脳卒中・全身塞栓症を抑制したことは,臨床的に大きな意義を持つ。edoxaban以外のDOACについてはいまだデータがないので,本試験の成績を外挿して,高齢患者に推奨用量より低い用量を投与することは慎みたい。(井上
デザイン 第III相,無作為割付け,二重盲検,多施設(日本,164施設),intention-to-treat解析。
期間 登録期間は2016年8月~2019年11月。
対象患者 984例。≧80歳,CHADS2スコア≧2のNVAF(診断から1年以内)患者で,標準用法・用量での経口抗凝固薬*による治療が適用されない者**
* warfarin, dabigatran, rivaroxaban, apixaban, edoxaban
** クレアチニンクリアランス低値(15~30 mL/分),主要な臓器または消化管出血の既往,低体重(≦45 kg),NSAIDsの継続使用,抗血小板薬服用中。

■患者背景:平均年齢86.6歳(≦85歳 45.4%,85歳超 54.6%),男性42.6%,平均体重 50.6 kg。
  • 登録時の心房細動の状況:非発作性心房細動 52.9%,発作性心房細動 47.1%。
  • 登録時にフレイルであった患者の割合:40.9 %。
  • 登録時にCHADS2スコア≧3であった患者の割合:63.1%。
  • 過去1年以内の転倒歴のある患者の割合: 34.6%。
治療法 edoxaban 1日1回15 mgを投与する群(492例)またはプラセボを投与する群(492例)に1:1の比でランダム化。
結果 追跡期間中央値466.0日。途中脱落は,301例(うち死亡は,135例)。
[有効性の一次エンドポイント:脳卒中および全身性塞栓症の複合の年間発症率]
edoxaban群2.3%/年 vs. プラセボ群6.7%/年[ハザード比(HR)0.34; 95%信頼区間(CI)0.19~0.61; 優越性のP <0.001]。このedoxabanの効果は,サブグループ解析においても一貫していた。
[安全性の一次エンドポイント:ISTH基準による大出血の年間発生率]
edoxaban群3.3%/年 vs. プラセボ群1.8%/年[HR 1.87; 0.90~3.89; P =0.09]。
edoxaban群で致死的出血の発生はなかったが,プラセボ群では2例発生した。
  • 頭蓋内出血:edoxaban群0.3%/年 vs. プラセボ群0.6%/年[HR 0.50; 0.09~2.72]。
  • 消化管出血:edoxaban群2.3%/年 vs. プラセボ群0.8%/年[HR 2.85; 1.03~7.88]。
[有効性の二次エンドポイント:脳卒中,全身性塞栓症,心血管死の複合の年間発生率]
  • edoxaban群 7.8%/年 vs. プラセボ群10.9%/年[HR 0.72; 0.50~1.03]。
[その他の項目の年間発生率]
  • MACE:edoxaban群7.7%/年 vs. プラセボ群11.0%/年[HR 0.70; 0.49~1.01]。
  • 全死亡:edoxaban群で66例(9.9%/年) vs. プラセボ群69例(10.2%/年)[HR 0.97; 0.69~1.36]。
非致死性MI,非致死性脳卒中,非致死性全身性塞栓症,CV死,出血。

★結論★ 80歳以上の非弁膜症性心房細動患者における低用量のedoxaban(15mg/日)は,プラセボに比べ,大出血リスクを有意に増加させることなく,脳卒中および全身性塞栓症リスクを有意に低減させた。
ClinicalTrials. gov No: NCT02801669
文献
  • [main]
  • Okumura K, et al for the ELDERCARE-AF Committees and Investigators: Low-Dose Edoxaban in Very Elderly Patients with Atrial Fibrillation. N Engl J Med. 2020 Aug 30 [Online ahead of print]. PubMed

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収載年月2020.10