循環器トライアルデータベース

VICTORIA
Vericiguat Global Study in Subjects with Heart Failure with Reduced Ejection Fraction

目的 ガイドラインに則った適切な心不全治療にもかかわらず症状が緩和されない,左室駆出率が低下した慢性心不全患者は心血管(CV)イベントのリスクが高く,新しい心不全治療薬により治療選択肢が広がることが望まれる。
新規心不全治療薬として治験が進んでいる可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬vericiguatを使ったVICTORIA試験では,心不全増悪が認められるHFrEF患者における同薬の有効性および安全性を検討した。

一次エンドポイントは,心血管(CV)死および心不全による初回入院の複合。
コメント 近年,HFrEFに対する新しい治療薬がつぎつぎに登場している。イバブラジン,ARNI(sacubitril-valsartan),SGLT2阻害薬に続いて,今回のVICTORIA試験により,sGC刺激薬としてvericiguatが加わった。本剤は,sGCを直接刺激するのみならず,sGCの内因性NOに対する感受性を増強させる作用をもち,慢性心不全で低下しているcGMPを補強することにより心筋障害や血管不全を抑制する作用をもつ。
このVICTORIA試験は,PARADIGM-HFL試験DAPA-HF試験よりもNYHA心機能分類およびBNP(NT-pro BNP)値から見て重度の患者を多く登録しており,6カ月以内に心不全が増悪した比較的重度の心不全患者に対して本剤の有効性を示した点で意義が大きい。本試験においては,標準治療薬としてβ遮断薬,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)およびACE阻害薬/ARBの3剤投与例は60%を占め,15%ではあるがARNIも投与されていた。サブ解析では,NYHA IIIまたはIV度に対する有効性はNYHA IまたはII度に対する有効性と差はなく,また硝酸薬でみられた有効性の人種差も認めていない。例数は十分ではないが,ARNI投与の有無による差も認めなかったのは朗報である。一方で,腎機能低下例(eGFR <30 mL/min/1.73m²)に対する有効性は認められていない。さらに,本剤の作用機序から,血管拡張作用による低血圧は避けがたいと考えられるが,症候性低血圧の頻度は危惧していたほどは高くなく,許容範囲であった。
本剤は,HFpEFに対する有効性も期待されていたが,SOCRATES-PRESERVED試験(第II b相)で,NT-pro BNPおよび左房容積に有効性が見られなかったことから,HFpEFに対する本剤の効果は今のところ否定的であろう。(
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(42か国616施設),intention-to-treat解析。
期間 登録期間は2016年9月~2018年12月。
対象患者 5050例。≧18歳,左室駆出率が低下し(EF<45%),NYHA心機能分類II~IV度,ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値上昇* の慢性心不全で,心不全増悪** が認められる者。
* 割付け前30日以内のBNPが,洞調律の心不全で ≧300 pg/mL,心房細動合併心不全では≧500 pg/mLの者。
また,同期間のNT-proBNP が洞調律の心不全で≧1000 pg/mL,心房細動合併心不全では≧1600 pg/mLの者。
** 割付け前の3カ月以内に心不全により入院/割付け前の3~6カ月間に心不全により入院/割付け前の3カ月の間に,入院はせず心不全治療のために利尿薬の経静脈投与を受けていた者。

主な除外基準:収縮期血圧<100 mmHgの者,長時間作用型硝酸薬/sGC刺激薬/PDE5阻害薬のいずれかの投与を予定している者,強心薬の静脈内投与中の者,植込み型LVAD(左室補助人工心臓)装着の者など。
■患者背景:平均年齢67歳,女性24%。
  • NT-proBNP中央値:2816 pg/mL。
  • 登録時3カ月以内に心不全により入院した割合:66.9%。
  • NYHA III度の割合:40%。
  • 登録時の平均LVEF:29%。
  • 登録時の治療状況:3剤併用(β遮断薬,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬,ACE阻害薬/ARB/sacubitril-valsartan)60%。
治療法 ガイドラインに基づく心不全の薬物治療に,vericiguatを追加投与 する群(2526例)またはプラセボを投与する群(2524例)に1:1の比でランダム化。
1日1回2.5 mgから開始し,最終的に目標の1日1回10 mgまで増量。
結果 追跡期間中央値10.8カ月。
[一次エンドポイント:CV死および心不全による初回入院の複合]
  • vericiguat群897例(35.5%) vs. プラセボ群972例(38.5%);ハザード比(HR)0.90; 95%信頼区間(CI)0.82~0.98; P =0.02。vericiguat群は,プラセボにくらべ,複合一次エンドポイントの発現リスクを10%低減。
  • vericiguatの一次エンドポイントに対する治療効果は.事前に設定されたサブ解析の大半(sacubitril-varsartan服用の有無も含む)で一貫して認められた。
[複合一次エンドポイントを構成する各イベント]
  • CV死:vericiguat群206例(8.2%)vs. プラセボ群225例(8.9%)。
  • 心不全による入院:vericiguat群691例(27.4%) vs. プラセボ群747例(29.6%)。
[二次エンドポイント:全死亡または心不全による初回入院の複合]
  • vericiguat群 957例(37.9%)vs. プラセボ群1032例(40.9%)。HR 0.90; 95% CI 0.83~0.98; P =0.02。
[安全性の検討]
  • 重篤な有害事象:vericiguat群32.8% vs. プラセボ群34.8%。
  • 症候性低血圧: 9.1% vs. 7.9%(P =0.12)。失神:4.0% vs. 3.5%(P =0.30)。
[その他]
  • 全入院(初回/再入院を含むすべての入院):vericiguat群1223例(38.3/100患者・年) vs. プラセボ群1336例(42.4/100 患者・年)[HR 0.91; 95%CI 0.84~0.99; P =0.02]。

★結論★心不全悪化が認められる,左室駆出率が低下した慢性心不全患者における新規心不全治療薬vericiguatの上乗せ投与は,プラセボにくらべ,CV死および心不全による入院リスクを有意に低減した。
ClinicalTrials. gov No: NCT02861534
文献
  • [main]
  • Armstrong PW, et al for the VICTORIA Study Group: Vericiguat in Patients with Heart Failure and Reduced Ejection Fraction. N Engl J Med. 2020; 382: 1883-93. PubMed

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収載年月2020.09