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Treat Stroke to Target
Evaluation of two secondary care strategies after stroke or transient ischemic attack (TIA): Achieved target LDL-C to 100 mg/dL or less than 70 mg/dL

目的 粥状動脈硬化による一過性脳虚血発作(TIA)や脳卒中後の心血管(CV)イベント二次予防には,強化脂質低下療法が推奨されているが,具体的なLDL-Cの管理目標値は定まっていない。
Treat Stroke to Target試験では,TIAまたは虚血性脳卒中後の粥状動脈硬化性疾患患者におけるLDL-C管理目標値を厳格に設定した場合(LDL-C<70 mg/dL),標準的な管理目標値(LDL-C 90~110 mg/dL)にくらべ,CVイベントを減少させるか否かを検討した。

一次エンドポイントは,複合MACE[虚血性脳卒中,心筋梗塞(MI),冠動脈または頸動脈緊急血行再建を要する症状の発現,心血管(CV)死]。
コメント これまで,脳卒中(脳梗塞)に対するコレステロール低下療法に関する直接的なエビデンスは少なく,SPARCL試験のみが,脳卒中患者を対象にスタチン高用量療法が有効か否かについて結果を示しているが,高用量スタチン群で脳出血が有意に多かったということで問題視されていた。またこれまで,スタチンの用量に応じた心血管(CV)イベント抑制試験は多数行われているが,LDL-Cの低下度に応じた効果をみた試験はなかった。このため,2015年のACC-AHAガイドラインでは,CVリスクの高い患者にはLDL-Cの値にかかわりなくスタチンの高用量治療を勧奨していたのである。本試験の特徴は3点ある。一つは対象者が脳卒中(脳梗塞+TIA)患者であること,二つ目はLDL-Cの目標値を設定して(70 mg/dL未満vs. 90~110 mg/dL)治療効果をみている点,三つ目がフランスと韓国で行われた試験である点である。結果として,脳卒中患者でも,より強力なLDL-C低下療法を行うことが,その後のCVイベントをより抑制することは,再度有意差をもって示されたことになる。今回は,脳出血についてはLDL-Cを70 mg/dL未満にしても有意には増加しないが,増加する傾向は示したことで,今後再評価が必要となろう。これは,SPARCL試験に比較すると規模が小さく(2860名 vs. 4730名),観察期間(3.5年 vs. 4.9年)も若干短い(途中で資金の都合で中止になったことによる)ため,検出力の問題が出てくるからである。
しかしながら,明確にLDL-Cの目標値を設定し,70 mg/dL未満にすることがCVイベント抑制にはより有効であることを示したことは,今後のガイドラインに用いるエビデンスとしては重要な知見になるものと思われる。特に,本試験は韓国人とフランス人の試験であることから,サブ解析で日本人に近い韓国人のデータが示された場合は,わが国でもそのデータは利用できるものと期待される。(寺本
デザイン 無作為割付け,非盲検,並行群間,多施設(フランスおよび韓国の77施設),intention-to-treat解析。
期間 登録期間は2010年3月~2018年12月。
対象患者 2860例。≧18歳(韓国は>20歳),虚血性脳卒中発症3カ月以内(modified Rankinスケール0~3)またはTIA発症15日以内の粥状動脈硬化性疾患患者で,スタチン投与の適応がある者**
主な除外基準:CTまたはMRIで頭蓋内動脈硬化性狭窄か閉塞,または経食道心エコーまたはCTで大動脈硬化所見のある者。
** 患者は,登録時にスタチンを服用している場合はLDL-C ≧70 mg/dL,スタチン服用歴がない場合は≧100 mg/dLであることが求められた。
■患者背景:平均年齢67歳,女性32%。
  • TIAまたは虚血性脳卒中発症からランダム化までの日数中央値:6.0日。
  • 登録時の平均LDL-C値:135 mg/dL。
  • 登録時の既往歴:高血圧66%,脂質異常症61%,糖尿病23%,脳卒中またはTIA 11%。
治療法 LDL-C管理目標値を厳格に設定した群(<70 mg/dL)1430例または標準的な目標値とした群(90~110 mg/dL)1430例に1:1の比でランダム化。投与する薬剤は,スタチン単独か必要に応じてezetimibeを追加。スタチンの種類は不問,投与量にも制限は設けなかった。
結果 [早期終了試験]
追跡期間中央値3.5年*(四分位範囲2.0~6.7年)。
* 韓国の追跡期間中央値は2.0年(登録が遅れたことによる)。

複合エンドポイント症例が385例までと予定していたが,資金不足により2019年5月に早期終了(本試験の解析対象:2019年5月の時点でイベントを発生していた277例)。
[追跡期間中の平均LDL-C値]
厳格群65 mg/dL vs. 標準群96 mg/dL。スタチン単独投与の割合は,厳格群65.9% vs. 標準群94.0%。厳格群では33.8%がスタチンにezetimibeを併用(標準群は5.8%)。追跡期間中央値2.7年時点での投与中止は,厳格群30.3% vs. 標準群28.5%。

[一次エンドポイント:複合MACE(虚血性脳卒中,MI,冠動脈または頸動脈緊急血行再建を要する症状の発現,CV死)]
  • 厳格群121例(2.27/100人・年)vs. 標準群156例(2.98/100人・年)。
  • 補正後ハザード比(HR)0.78; 95%CI 0.61~0.98; P =0.04で,相対リスクは22%低下。

[有害事象の発生]
  • 頭蓋内出血:厳格群18例(1.3%)vs. 標準群13例(0.9%)。HR 1.38; 95%CI 0.68~2.82。
  • 糖尿病の新規発症: 103例(7.2%)vs. 82例(5.7%)。HR 1.27; 95%CI 0.95~1.70。

★結論★虚血性脳卒中またはTIA後の粥状動脈硬化性疾患患者に対するLDL-C管理目標値の検討において,<70 mg/dLの厳格な管理は,標準的な90~110 mg/dLにくらべ,CVイベントリスクを減少させた。
ClinicalTrials. gov No: NCT01252875
文献
  • [main]
  • Amarenco P, et al. for the Treat Stroke to Target Investigators: A Comparison of Two LDL Cholesterol Targets after Ischemic Stroke. N Engl J Med. 2020; 382: 9-19. PubMed

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収載年月2020.04