循環器トライアルデータベース

RACE 4
Rate Control vs. Electrical Cardioversion Trial 4――Nurse-led Care vs. Usual-care

目的 心房細動患者の心血管(CV)転帰の改善には,患者自身が主体的に治療に取り組むような働きかけや治療についての意思決定の共有など,多面的なアプローチが求められる。
看護師主導による統合的なケアは,医療資源の負担を増やすことなくこのようなニーズを満たす有望な方法の一つと考えられるが,これまでその効果は十分に検証されてこなかった。
RACE 4試験では,あらたに心房細動の診断を受け管理が必要となった患者を対象に,看護師主導による統合的ケアが心臓専門医による標準治療と比べ,CV死およびCVイベントによる入院を減少させるか否かを検討した。

一次エンドポイントは,CV死およびCVイベントによる入院(不整脈,心不全,血栓塞栓イベント,大出血,急性冠症候群,薬剤による致死的な副作用など)の複合。
コメント 医師による通常の標準的な管理に比べ, 看護師主導の統合的ケアが心房細動例の心血管イベント発生抑制に有用であることが期待されたが, 残念ながら否定的な結果に終わってしまった。しかし, 統合的ケアの経験が深い施設においては, 標準的な管理に比べてイベント発生率が有意に低く, 経験が浅い施設ではその優位性が示されなかったことは, 統合的ケアの意義を示唆する結果といえよう。統合的ケア群では, ガイドラインの推奨に従った例が多く, 心房細動の併存症や基礎疾患の診断が実施される例の割合が高く, 本ケアの意義が見て取れる。しかしながら, 経口抗凝固薬の実施率, 投与基準からの逸脱例の割合は両群で差がなく, 本試験の結果が否定的なものとなった一因と考えられる。経口抗凝固薬の投与状況に関しては, 患者の好みや看護師・医師間の意思決定の共有(医師が抗凝固療法に否定的)などが関係していると考えられる。わが国においては, 看護師主導の統合的ケアは広く実施されているとは言い難い。本研究において, とくに経験の深い施設では標準的ケアに比べて有効性が示唆されているので, 心房細動患者の管理・診療の向上に参考になることが期待される。(井上
デザイン 無作為割付け,多施設(オランダの8施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間中央値37カ月。
登録期間は2012年12月~2017年11月。
対象患者 1375例(解析対象は1354例)。≧18歳,初めて心房細動の診断を受け,循環器専門の外来クリニックに紹介された,状態が安定している者。
主な除外基準:登録前の3カ月間に心不全または急性冠症候群のエピソードがあり,状態の安定しない者。最近心臓手術を受けたか,今後手術を予定している者。
■患者背景:平均年齢64歳,男性66%。
  • 心房細動の平均持続日数:14日。
  • 発作性心房細動の割合:62%。
  • 登録時の主な併存症:高血圧48%,糖尿病10%など。
  • 登録時のCHA2DS2-VAScスコア≧2点の割合:766例(57%)。
  • 登録時のHAS-BLEDスコア≧3点の割合:106例(8%)。
治療法 看護師主導によるケア群686例または循環器専門医による標準治療群689例に1:1の比でランダム化。
  • 看護師主導ケア:現行ガイドラインに準じたCV危険因子の管理,抗血栓治療,レートコントロールおよびリズムコントロール等の包括的な心房細動治療を盛り込んだ意思決定支援ツールを活用した専門看護師によるケア。個別の患者教育のほか,アドヒアランス向上のため,専門看護師による心理サポートも実施。フォローアップ受診は,登録後3カ月,6カ月,12カ月,以後は1年おきに実施。
  • 標準治療:循環器専門医による通常の外来管理。クリニカルパスは作成せず。
結果 [一次エンドポイント:CV死およびCVイベントによる入院の複合]
看護師主導ケア群164例(9.7%/年) vs. 標準治療群192例(11.6%/年)[ハザード比(HR)0.85; 95%信頼区間(CI)0.70~1.05, P =0.12]。
[一次エンドポイントの項目ごとの結果]
  • CV死:看護師主導ケア群7例(0.4%/ 年)vs. 標準治療群3例(0.1%/年)。
  • CVイベントによる入院:不整脈:看護師主導ケア群124例(7.0%/年) vs. 標準治療群161例(9.4%/年),心不全:14例(0.7%/年)vs. 22例(1.1%/年)。
[その他]
  • CV以外の要因による死亡は,両群で同等[14例(2%)]。
  • 心血管要因による救急外来受診は,看護師主導ケア群86例(13%)vs. 標準治療群72例(11%)。
  • ガイドラインに準じた7つの推奨項目に対するアドヒアランスは,看護師主導ケア群61% vs. 標準治療群26%。
  • 経口抗凝固療法およびリズムコントロールの薬物療法実施に群間差は認められず(抗凝固薬実施の割合:看護師主導ケア群81% vs. 標準治療群82%),投与基準からの逸脱例にも差は認められなかった(過少投与例の割合14.6% vs. 13.6%)。
[サブグループ解析:施設の経験と一次エンドポイントの関連]
  • 専門看護師によるケアの経験が豊富な施設においては,看護師主導ケア群は標準ケア群に比べ,一次エンドポイント発生率が低かった(HR 0.52; 95%CI 0.37~0.71)。一方,専門看護師によるケアの経験が浅い施設においては,有効性は示されなかった(HR 1.24; 95%CI 0.94~1.63; 交互作用のP <0.001)。

★結論★心房細動患者の管理において,看護師主導による統合的なケアは,医師による標準治療にくらべ優位性を示さなかったが,経験豊富な施設で実施されれば臨床的に有益である可能性が示唆された。
ClinicalTrials. gov No: NCT01740037
文献
  • [main]
  • Wijtvliet EPJP, et al for the RACE 4 Investigators: Nurse-led vs. usual-care for atrial fibrillation. Eur Heart J. 2020; 41: 634-41. PubMed

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収載年月2020.02