循環器トライアルデータベース

Apple Heart Study
Assessment of Wristwatch-Based Photoplethysmography to identify Cardiac Arrhythmias

目的 近年,インターネットに接続されたウェアラブルデバイスの利用が広がり,医療分野への応用も急速に進んでいる。以前から,ウェアラブルデバイスにより不整脈が検出可能なことは示されてきたが,心房細動検出能については不明であった。
心房細動は,高齢人口の増加により罹患者数が増えている疾患の一つであるが,しばしば無症候性であることに加え,発作性の場合は心電図(ECG)検査では診断されない症例も少なくない。
Apple Heart Studyでは,米国Apple社の腕時計型ウェアラブル端末Apple Watchに搭載のアプリケーション(不整脈通知アルゴリズム)により,時間的な制約なく,かつ非侵襲的に心房細動を検出可能かどうか,一般ユーザーを対象として検討した。

本研究の主な目的は,デバイスにより不整脈を通知された参加者のうちその後のECGにより心房細動が認められた者の割合および脈の不整タコグラムの陽性適中率の推定。
コメント 自覚症状のない心房細動(AF)の診断は喫緊の課題である。最近のIT技術の発展が,この課題の解決に如何に寄与できるかということを本研究は明らかにした。同様の研究は中国でも行われており(Huawei Heart Study, J Am Coll Cardiol. 2019; 74: 2365-75. ),似たような結果が報告されている。
本研究では参加者の0.5%にAFが診断されており,使用した機器の診断アルゴリズムは陽性適中率0.71と比較的高かった。しかし,頻発する期外収縮(ことに心房性)では不整なタコグラムを呈し,陽性適中率を下げる原因となっており,課題が残されている。
本研究の結果を臨床の現場に応用するには注意すべき問題点がある。AF診断率が1%未満であり,コスト・パフォーマンスの観点から,本法をどの程度広範な対象に適用できるのか? このようにして捕まった持続が短いAFをどう治療するのか? 抗凝固療法の要否についてはデータが欠如している。AF以外の,たまたま捕まった不整脈に対する過剰な診療も危惧される。(井上
デザイン 前向き,単一群,非盲検,全米50州+ワシントンDCで実施。
期間 モニタリング期間中央値117日。
登録期間は2017年11月~2018年8月。
対象患者 419,297例。≧22歳,米国Apple社製の互換性のあるiPhoneおよびApple Watchを保有し,英語の読み・書きともに堪能な米国在住者。
主な除外基準:心房細動既往,経口抗凝固薬使用中(いずれも自己申告による)。
■患者背景:平均年齢41歳(分布22~39歳52%,40~54歳32%,55~64歳10%,≧65歳5.9%),女性42%。
・登録時の主な併存症:肥満38%,高血圧21%など。
・登録時のCHA2DS2-VAScスコア≧2の割合:13%。
治療法 本試験に興味をもち, 上記登録基準を満たした参加者にApple Watchのアプリケーション*を各自ダウンロードしてもらい,不整脈検出通知アルゴリズムによる脈拍記録を開始。
不整脈検出の初回通知後は遠隔診療が開始されたが,緊急度が高い症状**を呈する場合は救急外来での受診を指示,そうでない参加者にはECGパッチ(ePatch)を郵送してモニタリングを開始。 最長7日間のECGパッチ装着と終了後のデータ返信を依頼。また,初回通知後,心拍の経時的変化を追ったタコグラムと以後の不整脈通知回数も記録。
不整脈通知を受けた参加者に対しては,モニタリング開始90日後および終了時にアンケート調査を実施。
* Apple Watchの装着箇所である手首の血流変化をLEDライトと感光性フォトダイオードにより信号化,この脈波信号を解析して不整脈を検出。
結果 [Apple Watchアプリケーションによる初回の不整脈検出通知]
  • 通知を受けた2161例(0.52%)の年齢層別分布は,≧65歳3.14%,22~39歳0.16%。
  • 通知を受けた者では,年齢が高く,男性,白人,CHA2DS2-VAScスコア≧2が多い傾向にあった。
[Apple Watchアプリケーションによる心房細動診断率]
  • 不整脈検出通知後ECGパッチ装着までの平均日数は13日,装着期間は平均6.3日間。
  • 初回通知後にモニタリングしたECGパッチのうち,データが返却された450例で検討。
  • ECGパッチにより心房細動が同定されたのは153例[診断率34%; 97.5%信頼区間(CI)29~39]。このうち,心房細動が持続していたものは20%。一方,その他大半は心房細動の持続がモニタリング時間の半分に満たず,そのうちの89%は心房細動持続が1時間未満であった。
[陽性適中率]
  • 初回の不整脈通知を受けた参加者でECGパッチ記録中に不整脈通知があった場合,心房細動同定の陽性適中率は,0.84(95%CI 0.76~0.92)。≧65歳では陽性適中率は0.78(95%CI 0.64~0.92)。
  • 初回の不整脈通知以降のタコグラムにおける不整とECGパッチによる同時記録では,タコグラムの陽性適中率は,0.71(97.5%CI 0.69~0.74)。
[調査結果]
<90日後調査>
  • 不整脈通知を受けた参加者の回答率は64%(1376例/2161例)。
  • うち787例(57%)が外部の医療機関に連絡をとり,28%は新たに薬物治療を開始,33%が専門医への紹介,36%が追加の検査を勧められた。
<終了後調査>
  • 不整脈通知を受けた参加者の回答率は43%(929例/2161例)。
  • このうち心房細動の新規診断は,404例(44%)。不整脈通知を受けた者の脳卒中,心不全,心筋梗塞の新規発症率はいずれも通知を受けなかった参加者より高かった。
[有害事象の報告]
  • 入院や緊急治療を要する有害事象の報告はなかった。

★結論★本研究はApple Watchの一般ユーザーを対象としているため,不整脈の検出率は低かったものの,不整脈通知を受けた者の34%でECGで心房細動が認められ,陽性適中率は84%であった。
施設を必要としない実践的な研究デザインは,参加者所有のデバイスを活用してアウトカムやアドヒアランスを確実に評価できる大規模実践的研究の基盤を提供するものである。
ClinicalTrials. gov No: NCT03335800
文献
  • [main]
  • Perez MV, et al for the Apple Heart Study Investigators: Large-Scale Assessment of a Smartwatch to Identify Atrial Fibrillation. N Engl J Med. 2019; 381: 1909-17. PubMed

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収載年月2020.01