循環器トライアルデータベース

COLCOT
Colchicine Cardiovascular Outcomes Trial

目的 炎症が動脈硬化性疾患の発症に強く関与している可能性は,以前から示唆されてきた。抗炎症薬による心血管(CV)イベント抑制の仮説を検証すべく,これまでモノクローナル抗体canakinumab投与によるCANTOS試験,低用量methotrexate投与によるCIRT試験などが行われてきたが,いずれも結果の一致はみておらず,検討の余地が残されている。
COLCOT試験では,発症後間もない心筋梗塞(MI)患者を対象に,痛風,家族性地中海熱などに適応のある,廉価かつ強力な抗炎症作用をもつcolchicine(コルヒチン)投与によるCVイベント抑制効果を安全性とともに検討した。

有効性の一次エンドポイントは,CV死,心停止蘇生,MI,脳卒中,冠血行再建を要する狭心症による緊急入院の複合。
コメント 1999年にN Engl J Med誌にRoss Rが“Atherosclerosis-an inflammatory disease”という総説を発表して以来,そのメカニズムをめぐって多くの基礎研究が行われ,動脈硬化やイベント発症に炎症が関与していることはほぼ解明されてきた。しかし,臨床的に重要なことは,臨床エビデンスとして示されることである。これまで,エビデンス構築のため多くの臨床研究が行われてきたが,COX2阻害薬をはじめ,多くの研究はnegative であった。しかし,2017年にcanakinumabを用いたCANTOS試験がpositiveな結果を示したことで,炎症を抑制することでイベント抑制効果があるという臨床エビデンスを示しえたように思われていた。しかしその後も,methotrexateを用いた試験ではnegative dataが示され,十分な検証ができているわけではない。また,positiveにでたCANTOS試験では試験薬剤が高価であり,費用対効果という観点から必ずしも実用的とはいえない。本研究の意義は,炎症を抑制することでイベントの再発抑制効果が示されたことと,安価な薬剤で行われたことであると思われる。また,現状では多くのイベント抑制効果が実証されてきた薬剤に上乗せした形で,HR: 0.77と有意な有効性が示されたことも意義があるものと思われる。つまり,これまでスタチンやPCSK9阻害薬で厳格なコレステロール管理がなされることによりほぼ50%のイベント抑制効果が示されているが,これに加えて23%の抑制効果であるから,総じて60~70%のイベント抑制が達成できるものと思われる。さらに脳卒中に関しては,HR: 0.26と顕著な抑制効果を示していることから,ほぼ心筋梗塞後の脳卒中の合併は抑制できることになる。このようなことを念頭において,今後,本薬剤によるより長期の試験結果で追認されることが期待される。(寺本
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(167施設,12カ国),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間中央値22.6カ月。
登録期間は2015年12月~2018年8月。
対象患者 4745例。登録前の30日以内にMIを発症,予定されていた経皮的血行再建術を受け,強化スタチン療法を含め
現行ガイドラインに則った治療を受けているもの。
主な除外基準:重症心不全,LVEF < 35%,3カ月以内の脳卒中既往,Type 2 MIなど。
■患者背景:平均年齢60.6歳,女性19.2%,指標となるMIに対するPCI施行例93%。
  • MI発症から登録までの平均日数:13.5日。
  • 登録時の主な既往:高血圧51.0%,糖尿病20.2%。
  • 登録時の服薬状況:aspirin98.8%,その他の抗血小板薬97.9%,スタチン99%,β遮断薬88.9%。
治療法 colchicine群(0.5 mg/日)2366例またはプラセボ群2379例に1:1の比でランダム化。
結果 治療中止例は,colchicine群18.4%,プラセボ群18.7%。
[一次エンドポイント:CV死,心停止蘇生,MI,脳卒中,冠血行再建を要する狭心症による緊急入院の複合]
  • プラセボ群にくらべcolchicine群でリスクは有意に低下した。colchicine群131例(5.5%) vs. プラセボ群170例(7.1%)。ハザード比(HR)0.77; 95%CI 0.61~0.96, P =0.02。
  • 項目ごとのHRは,CV死:0.84/ 心停止蘇生:0.83/ MI:0.91/ 脳卒中:0.26/ 血行再建を要する狭心症による緊急入院:0.50。脳卒中および血行再建を要する狭心症による緊急入院について,colchicine群でリスクが有意に低下。
[二次エンドポイント:CV死,心停止蘇生,MI,脳卒中の複合]
  • colchicine群でプラセボ群より低下(4.7% vs. 5.5%)。HR 0.85; 95%CI 0.66~1.10。
[予備解析およびサブ解析]
  • 深部静脈血栓症または肺塞栓症の発生:colchicine群10例(0.4%)vs. プラセボ群7例(0.3%)。HR 1.43。
  • 心房細動の発生:36例(1.5%)vs. 40例(1.7%)。
  • 白血球数の変化(ベースライン~1年後):-18.8% vs. -19.0%。
  • 高感度CRPの変化(ベースライン~6カ月後):-70.0% vs. -66.6%
[安全性]
  • 有害事象の発生:colchicine群16.0% vs. プラセボ群15.8%。消化管イベントが主で,下痢(9.7% vs. 8.9%),悪心(1.8% vs. 1.0%, P =0.02)など。
  • 重篤な有害事象の発生:16.4% vs. 17.2%。感染(2.2% vs. 1.6%),肺炎(0.9% vs. 0.4%, P =0.03)など。

★結論★発症後間もない心筋梗塞後患者において,低用量のcolchicine投与はプラセボにくらべ虚血性心血管イベントリスクを有意に低下させた。
ClinicalTrials. gov No: NCT02551094
文献
  • [main]
  • Tardif JC, et al: Efficacy and Safety of Low-Dose Colchicine after Myocardial Infarction. 2019 Nov 16. [Epub ahead of print] PubMed

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収載年月2019.12