循環器トライアルデータベース

DEBUT
Drug-Eluting Balloon in stable and Unstable angina: a randomized controlled non-inferiority Trial

目的 PCI治療が進歩する中においてもなお,出血リスクの高い患者にとっての最適なPCI手技はわかっていない。
一方,冠動脈新規病変に対する薬剤コーティングバルーン(DCB)による標的血管再血行再建(TLR)や急性冠閉塞抑制効果を報告した大規模登録研究は存在するが,ランダム化試験はこれまでのところ小径冠動脈病変に対し薬剤溶出ステント(DES)を対照として検証したBASKET-SMALL 2試験のみである。
DEBUT試験では,参照血管径2.5~4.0 mmの冠動脈新規病変を生じた出血リスクの高い患者に対するDCB治療はベアメタルステント(BMS)治療に劣らないという仮説を検証した。

一次エンドポイントは,術後9ヵ月のMACE[心血管死,非致死性心筋梗塞(MI),虚血によるTLRの複合]。
コメント 日常臨床では冠動脈新規病変に対するDCBの効果を日々実感しているが,これを裏付けるランダム化試験は驚くほど少ない。また,長期follow-up dataも数えるほどである。DEBUT trialは,小径冠動脈新規病変に対するDCB vs. DESを検討したBASKET-SMALL 2から約1年,DCBに関する久しぶりのランダム化試験である。非劣性試験だが優位性も検討された。
本試験の特徴は,高出血リスク症例を対象としたことと3.0~4.0mmの大血管径の病変もエントリーしたことだが,残念ながら内容にインパクトは少ない。その要因は,2つある。第一に症例数が少ないこと,第二に対照がBMSだったことである。本試験の登録が始まった2013年には新規病変へのランダム化試験が皆無で相当意気込んでいたと想像するが,5施設で3年半かけて220例,症例数が整わず途中で登録中止となった(ちなみに,EU 14施設からのMASKET-SMALL 2も5年で758例だった)。欧州では「ステントを入れないPCI」の文化は受け入れにくいということか。一方,BMSを対象にしたのは高出血リスクによりDAPT期間を1ヵ月で設定したためかもしれないが,BMSのマーケットが縮小し,ステントの種類によらずDAPT期間短縮が推奨されている現行のガイドライン下では,色あせて見えてしまうのは仕方ない。さらに,DAPT期間が同一だったため両者の出血性イベントにも差がなく,DCBのメリットを浮き彫りにできなかった。
結果は,9ヵ月のITT解析,12ヵ月のad-hoc解析ともにDCB群でMACEが有意に少なく,その効果は36ヵ月まで持続した。しかし,論者が注目したのは,TLRの推移である。9ヵ月後には0% vs. 6%だったTLRは,36ヵ月後には有意差が消失し,Kaplan-Meier曲線では両者がほぼ並んでいる。DCBのTLR抑制作用が期間限定だとしたら,そのインパクトは非常に大きい。これまで報告されているsmall vesselを対象にしたPEPCAD IやBELLO試験では1年後の結果が3年後まで維持されていた。大血管では異なる結果となるのだろうか?
やはり,大規模なDESとの長期比較試験が必要である。(中野
デザイン 無作為割付け,単盲検非劣性試験,多施設(5施設,フィンランド),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間平均値36ヵ月(DCB),33ヵ月(BMS)。
登録期間は2013年5月~2017年1月。
対象患者 220例(解析対象208例)。
≧18歳,冠動脈またはバイパスグラフト内にDCBで治療しうる新規病変(参照血管径2.5~4.0 mm)があり,以下の出血リスクを1つ以上保有する症例:経口抗凝固薬服用,≧80歳,貧血(ヘモグロビンが女性 <11.7 g/dl,男性 <13.4 g/dl),6ヵ月以内の血小板減少(<10万/ml),進行性の悪性腫瘍,虚血性脳卒中または頭蓋内出血の既往,高度腎障害,肝不全,12ヵ月以内の非心臓手術,出血性疾患の既往など。
除外基準:ST上昇型MI,心原性ショックまたは心原性ショックからの蘇生例,2つ以上のステントが必要な分岐病変,ステント内再狭窄,余命1年以下,左主幹部病変,CTO,前拡張後の標的血管血流を制限するような解離または >30%のリコイルなど。
■患者背景:平均年齢77歳,男性63%。
  • 登録時の併存疾患:高血圧(DCB群87% vs. BMS群91%),高コレステロール血症(78% vs. 84%),糖尿病(26% vs. 49%),MI既往(23% vs. 19%),急性冠症候群(46% vs. 46%)。
  • 出血リスク:80歳以上(53% vs. 50%),抗凝固薬の使用( 57% vs. 62%),貧血・血小板減少(29% vs. 34%),虚血性脳卒中・頭蓋内出血既往(11% vs. 11%),高度腎機能障害(3% vs. 8%),など。
治療法 高度解離・リコイルのない良好な前拡張が得られた患者をDCB群*(102例):またはBMS群(106例)に1:1の比でランダム化。
PCI後の抗血栓療法(DAPT)は急性冠症候群にかかわらず両群とも1ヵ月間継続:clopidogrel 75 mg/日+aspirin 100 mg/日。
* paclitaxel+造影剤iopromideコーティングバルーン。
結果 [一次エンドポイント:術後9ヵ月のMACE]
  • DCB群1例(1%)vs. BMS群15例(14%)。絶対リスク差:-13.2パーセンテージポイント(95%CI -6.2~-21.1%);リスク比0.07(95%CI 0.01~0.52); 非劣性のP <0.0001,優越性のP =0.00034で,ともに基準(絶対リスク差 3%以下)を満たしたことから,DCB群のBMS群に対する非劣性,優越性が認められた(この結果は,36ヵ月後も維持された)。
[MACEの各項目]
  • 心血管死亡:1% vs. 6%(リスク比0.17 [95%CI 0.02~1.41]; 非劣性のP =0.00085,優越性のP =0.061)
  • 非致死性MI:0% vs. 6%[リスク比0.08(95%CI 0.01~0.40); 非劣性のP <0.0001,優越性のP =0.015]
[二次エンドポイント:術後9ヵ月のTLR]
  • DCB群0例 vs. BMS群6例(6%)。絶対リスク差:-5.7パーセンテージポイント(-0.9~-11.8);リスク比0.08(95%CI 0.01~1.40)。
[definiteステント血栓症]
  • DCB群0例 vs. BMS群2例。DCB群に急性冠閉塞は認められなかった。
[12ヵ月後のpost-hoc解析の結果]
  • MACE:DCB群4例(4%)vs. BMS群15例(14%)。P =0.015。
  • TLR:DCB群2例(2%)vs. BMS群6例(6%)。P =0.28。
  • 出血イベント:DCB群13例(13%)vs. BMS群11例(10%)。P =0.59。
[その他の二次エンドポイント]
  • 36ヵ月後のMACE:DCB vs. BMSはHR 0.45 (95% CI 0.23~0.86); log-rank P =0.013
  • 36ヵ月後のTLR:HR 0.58 (95% CI 0.19~1.77); log-rank P =0.33

★結論★出血高リスク症例に対するDCB治療は,9ヵ月後の主要有害心イベント発生において,BMS治療より優れる。
ClinicalTrials. gov No: NCT01781546
文献
  • [main]
  • Rissanen TT, et al on behalf of the DEBUT trial investigators: Drug-coated balloon for treatment of de-novo coronary artery lesions in patients with high bleeding risk (DEBUT): a single-blind, randomised, non-inferiority trial. Lancet. 2019; 394: 230-39. PubMed

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収載年月2019.09