循環器トライアルデータベース

EBBINGHAUS
Evaluating PCSK9 Binding Antibody Influence on Cognitive Health in High Cardiovascular Risk Subjects

目的 心血管疾患患者において,スタチン,ezetimibe,PCSK9阻害薬evolocumabはLDL-C値を大幅に下げ心血管イベントリスクを低下させるが,市販後調査,観察研究,小規模ランダム化比較試験から発表されたスタチンのLDL-C低下による認知機能障害の可能性を受け,FDAは2012年に警告を発した。しかし,認知機能に対する有害な影響がLDL-C低下によるものなのか,スタチン特有なのかは明確ではない。さらにその後,有害な影響はないという発表もある中,PCSK9阻害薬の臨床試験結果から,本薬剤あるいはLDL-C低値により認知機能障害例が報告されたが,1%以下と少数であり統計的信頼範囲も幅があることから明確ではなかった。
FOURIER試験(evolocumab群 vs プラセボ群)のサブグループにおいて前向きに認知機能を評価し,evolocumab群のプラセボ群に対する非劣性を検証する。
一次エンドポイントはCANTAB*(Cambridge Neuropsychological Test Automated Battery[ケンブリッジ神経心理学的検査バッテリー]; www.cambridgecognition.com)による実行機能の空間的作業記憶戦略スコア(4~28,低スコアのほうが戦略,計画が効率的に使用されている)の平均変化量。
* 言語,文化に影響されない電子化された認知機能評価ツールで,160以上の試験で使用されている。また幅広い薬剤の開発全段階で使用され,認知機能に対する好ましい,好ましくない影響に対する感受性がある。
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検。多施設(29か国)。
期間 追跡期間は19か月(中央値)。
登録期間は2014年9月10日~’15年8月6日。
対象患者 1,204例(主要解析例。最大解析[full analysis]例は1,974例)。登録基準はFOURIER試験参照。
除外基準:認知症,軽度認知障害,その他の精神・神経学的障害を含む状態,状況,あるいはこれらの診断歴など。
■患者背景:平均年齢(evolocumab群62.6歳,プラセボ群62.8歳) ,男性(71.7%, 72.0%),LDL-C中央値(91mg/dL, 93mg/dL);LDL-C<25mg/dL
はevolocumab群の661例,白人(92.3%, 92.6%),教育期間(12.6年,12.8年),心血管疾患:心筋梗塞(75.8%, 75.7%);非出血性脳卒中(18.9%, 20.9%);症候性末梢動脈疾患(19.1%, 16.3%),CHA2DS2-VAScスコア≧4(55.3%, 50.0%),脳卒中以外の神経疾患(14.7%, 13.9%),高血圧(86.3%, 85.8%),糖尿病(37.2%, 34.3%),現喫煙(31.6%, 37.4%),心房細動(9.0%, 10.0%),うっ血性心不全(30.0%, 25.4%),スタチン治療:高強度(68.1%, 73.5%);中強度(31.9%, 26.5%),ezetimibe使用(5.5%, 4.9%),aspirin,P2Y12阻害薬または両方(89.6%, 90.0%),β遮断薬(74.2%, 74.3%),ACE阻害薬/ARB/アルドステロン受容体拮抗薬・それらの併用(78.7%, 76.4%)。
治療法 中強度~高強度のスタチン治療例をランダム化。
evolocumab群(13,784例):患者の嗜好性により,140mg 1回/2週皮下注あるいは420mg 1回/月皮下注,プラセボ群(13,780例)。
上記のFOURIER試験の対象を,evolocumab群(586例),プラセボ群(618例)にランダム化し,evolocumabの認知機能に及ぼす影響を前向きに評価した。認知機能の評価にはCANTAB*を使用し,スクリーニング時(トレーニング期間),ベースライン時,24週後,以降は年1回,試験終了時に実施した。
結果 [一次エンドポイント]
スコア(粗点)の平均変化量に両群間に有意差はみられず,evolocumab群のプラセボ群に対する非劣性が認められたが,優越性は示されなかった(ベースライン:両群とも17.8→ evolocumab群17.5;-0.21 vs プラセボ群17.6;-0.29;非劣性p<0.001,優越性p=0.85)。
[二次エンドポイント]
いずれも有意な両群間差はなかった。
作業記憶スコア(0~279,低値のほうがエラーが少ない)は,evolocumab群:20.9→ 20.3;-0.52 vs プラセボ群:21.0→ 20.1;-0.93(p=0.36)。
対連合学習(paired associates learning. 0~70,低値のほうがエラーが少ない)スコアは,26.5→ 24.9;-1.53 vs 25.2→ 23.6;-1.53(p=0.49)。
5-選択反応時間課題(5-choice serial reaction time)スコアは,356.7→ 361.8msec;5.2 msec vs 355.1→ 355.7msec;0.9 msec(p=0.06)。
[探索的解析]
一次および二次エンドポイントを複合した全体的zスコアは,evolocumab群(ベースライン:-0.015;0.031) vs プラセボ群(-0.002;0.061)だった(p=0.12)。
LDL-C値と認知機能の変化量に関係はみられなかった。
★結論★追跡期間19か月(中央値)の認知機能において,スタチン治療へのevolocumab追加によるプラセボ追加にくらべた有意な差はみられなかった。
ClinicalTrials.gov No: NCT02207634
文献
  • [main]
  • Giugliano RP et al for the EBBINGHAUS investigators: Cognitive function in a randomized trial of evolocumab. N Engl J Med. 2017; 377: 633-43. PubMed

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収載年月2017.10