循環器トライアルデータベース

WHA
Women’s Heart Alliance

目的 米国において心血管疾患(CVD)は女性の最も多い死因(2016年:40万人死亡)で,男性と違い女性ではCVD死が減少していないどころか,<55歳の若年層では増加している。しかし,1997年にAHAが実施した調査ではその事実を知っていた女性は3人に1人だった。その後の調査で認知率が2倍になり,一般市民に向けた教育キャンペーンも行われたが,若年,特に少数民族で2006年以降実質的な改善はみられていない。また,女性におけるCVDに関する医師の認識の低さ,女性に対する予防ケアも不十分であることも示されている。
本報は女性のCVDについての啓発を目指して,2014年11月に開始された全国キャンペーンであるWHA(Women’s Heart Alliance)が先行して実施した調査での女性のCVDに対する女性および医師の現状報告。
コメント 米国では女性の心血管死が社会的課題となっているが,一般の認識は充分でない。本意識調査は,25~60歳の女性,プライマリケア医,心臓専門医を対象になされたものである。心血管疾患が女性の最大の死因であることが一般に認知されておらず,女性にとっての心配は,体重,乳がんについで心血管疾患は3位となっている。心臓専門医の認識は比較的高いが,プライマリケア医の認識は低いことも問題であり,運動や食事を中心にもっとライフスタイルの教育活動が必要であると結論されている。
わが国の虚血性心疾患の罹患率は男女とも欧米諸国に比し1/10~15と低いが,女性では比較的高齢の発症となり冠危険因子の合併も多く予後不良の傾向がある。また症状が非典型的で治療開始までの時間が遅れることも多い(日本性差医学・医療学会声明文2016参照 http://www.jagsm.org/topics.html)。わが国では欧米のように社会問題化はしていないが,常にモニタリングする必要はあろう。(
デザイン コホート研究。
期間 コホート調査期間は2014年9月18~26日,医師の調査実施は同年5月6~12日。
参加者 女性1,011人(25~60歳),プライマリケア医(PCP)200人(内科医31人,家庭医112人,一般開業医10人,産・婦人科医50人),心臓専門医100人。
医師の年齢(35~44歳:PCP 29%,心臓専門医33%,45~54歳:いずれも28%,55~64歳:36%, 22%),女性(35%, 15%),全員が実務経験≧3年,女医:PCP 35%,心臓全問医15%,PCPの女性患者は≧33%,心臓専門医では≧21%。
調査方法 女性のCVDに対する認識,行動(受診,相談),支持(アドボカシー)について,GfK(Gesellschaft für Konsumforschung)のKAB(knowledge, attitudes, beliefs)調査法でインタビューを実施した。調査は米国家庭の97%をカバーしているGfKのKnowledgePanelを利用しオンラインで実施。回答者はアドレスベースでrandom probabilityサンプルを用いて選んだ。最終データは年齢,地域,人種/民族,教育,2014年3月実施の国勢調査による収入で重み付けした。回答率は43%。医師の調査はPhysician and Healthcare Professional Panelを用いオンライン実施。医師には女性の心臓の健康改善のキャンペーンに関する情報をレビューしてから回答するように依頼した。
結果 [女性での結果]
CVDが女性におけるもっとも多い死因であることを知らなかった女性は45%(25~29歳:58%,30~39歳:50%,40~49歳:46%,50~60歳:35%;ヒスパニック73%,アフリカ系アメリカ人55%,白人34%),CVDで死亡した女性を知っていると答えたのは11%。74%は1つ以上の心疾患の危険因子を有しながら医師に高リスクであると言われたもの16%。CVDは食事・運動が不適切と思われるから恥だと感じた女性は26%。 リスク評価などのルーチンケア実施例はわずか40%。
心臓に問題があることを知り何らかの行動をとったもの38%,誰かに話したもの45%(友人7%,配偶者あるいは大切な人34%,家族16%),医療アクセスを求めた32%(救急要請5%,医者に連絡27%,aspirinを服用12%),何もせず,どうなるのか様子をみただけのもの32%。
自分の心臓の健康問題について質問しない理由(71%):深刻であればかかりつけ医が知らせてくれる49%,心配するべき年齢だとは思わない23%,健康だから心臓にリスクはない23%,もっと大事な話すべきことがある18%など。
心疾患の危険因子について知らされたこと:減量の指導34%,運動奨励の指導32%,心疾患家族歴31%,コレステロール・血圧高値:いずれも17%,生理不順15%,禁煙指導14%など。減量できるまで医師の予約をキャンセル,延期したものは45%。
心疾患,心筋梗塞の症状を知っている割合:胸痛82%,片腕,両腕の痛み72%,息切れ72%,その他の身体部分の痛み60%,動悸あるいは頻脈57%,ふらつき,めまい55%など。
[医師での結果]
CVDが懸念のトップ(exterme concern scaleの最大懸念;5)と答えたPCPは39%,4と答えたのは37%で,体重(5:48%, 4:41%),breast health(48%, 38%)に次いだ。女性のCVDリスクを評価する準備は万端だと答えたものは,PCP 22%,心臓専門医42%(p=0.0477)。女性患者のCVDリスク評価に関する教育が整っていると回答したのは49%, 59%。ガイドラインを包括的に使用していた医師は少なかった(AHAの8つのガイドラインすべてを使用している:それぞれ16%, 22%)。
デジタル伝達手段(email, Facebook, Twitter)を使用している医師のほうが非使用医師よりアテローム性動脈硬化(ASCVD)リスク評価計算式のことを知っていた(現在使用中:54% vs 43%,以前は使用していた:23% vs 30%,一度も使用したことがない:21% vs 26%)。
★結論★女性におけるCVDは,女性にとっても医師にとっても健康上の最優先疾患ではなかった。体重が社会的恥であることが障壁になっていると思われる。リスク評価の研修やガイドラインの使用は限られているが,医師の大半が女性の健康改善のためのキャンペーン,教育を支持している。

[主な結果]
  • Bairey Merz CN, et al. Knowledge, attitudes, and beliefs regarding cardiovascular disease in women: the women's heart alliance. J Am Coll Cardiol. 2017; 70: 123-32. PubMed
    Robinson JG: What women (and clinicians) don't know hurts them. J Am Coll Cardiol. 2017; 70: 133-5. PubMed

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収載年月2017.11