循環器トライアルデータベース

HeadPoST
Head Positioning in Acute Stroke Trial

目的 脳卒中急性期後の仰臥位は脳の血流を改善する一方で誤嚥性肺炎のリスクがあるため,日常臨床では,様々な頭位が取られている。
幅広い急性脳卒中患者において,発症早期から24時間の完全な仰臥位(背部水平,顔上向き)による脳灌流増加が転帰を改善するかを座位治療と比較する実用的試験を実施した。
主要評価項目は,modified Rankin scale(範囲:0~6,6は死亡)で評価した90日後の後遺障害度。
コメント 急性期脳卒中患者の至適頭位については介入試験のエビデンスがなく,ケースバイケースのコンセンサスしかなかった。脳血流の改善と誤嚥性肺炎のリスクという相反する課題を検討する目的で,仰臥位と座位(頭部を30度以上拳上)の90日後の転帰に及ぼす影響を評価している。結果は,脳卒中発症後急性期の24時間の仰臥位と座位の両頭位群の間には90日後の転帰(改変ランキン尺度スコアの分布)に差はなかった。すなわち本研究結果からは,仰臥位と座位のどちらがいいか結論できないということになる。
対象となった患者の重症度はNIH脳卒中尺度スコアが0~42と幅広かったが,平均は両群とも4.0であり,軽症例が多かったことが結果に影響を及ぼしている可能性がある。軽症例では,24時間以内の座位でも神経症状を悪化させるほどの血流低下が起こらなかったことが示唆される。また,大多数の症例は血栓溶解療法や血管内治療が施行されておらず,より早期に頭位を開始していれば結果は異なっていたかもしれない。重症例や超早期例ほど可逆的血流低下部位(ぺナンブラ)の領域が広いと考えられるからである。一方,誤嚥性肺炎の合併頻度が両群間で低かったことも転帰に差がつかなかった要因の一つと考えられる。軽症例が多かったことに加え,脳卒中急性期のケアに精通した参加施設が多かったことが推測される。(内山
デザイン クラスターランダム化クロスオーバー比較試験,オープン(評価者は盲検),多施設(9か国114施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は90日。
ランダム化期間は2015年3月2日~’16年11月29日。
対象患者 11,093例。18歳以上,急性脳卒中の診断を受けた救急外来あるいは参加施設入院患者。脳出血(非くも膜下出血)を含んだ。
除外基準:頭位が保てないと医師が判断したもの,一過性脳虚血発作診断例,いずれかの頭位の適応あるいは禁忌など。
■患者背景:平均年齢(仰臥位群67.8歳,座位群68.1歳),≧80歳 23%,女性(40.4%, 39.5%),オーストラリア,英国(41.8%, 43.9%);中国,台湾(41.8%, 42.1%),高血圧(51.2%, 50.1%),全脳卒中(23.4%, 24.0%),冠動脈疾患(13.0%, 14.6%),心房細動(10.5%, 10.7%),糖尿病(20.1%, 19.9%),喫煙(18.6%, 19.6%)。
発症前のmodified Rankin scale 0(両群とも60.8%),aspirin,その他の抗血小板薬(63.3%, 63.0%),抗凝固療法(8.1%, 9.0%),NIHSSスコア(範囲0~42:両群とも4.0*),発症から割付けられた頭位開始までの時間(両群とも14時間*),入院から頭位開始までの時間(両群とも7時間*)。
退院時の最終診断(脳画像診断およびその他の検査に基づき医師が報告):急性虚血性脳卒中(85.6%, 85.4%);大血管アテローム硬化(30.7%, 31.5%);小血管あるいは穿通動脈ラクナ梗塞(29.8%, 30.6%);心原性塞栓症(13.1%, 13.0%);その他あるいは原因不明(26.4%, 25.3%),原発性脳出血(7.9%, 8.8%)。 * 中央値
治療法 救急外来あるいはその他の検査室で可及的速やかにランダム化し,割付けられた頭位を支障のない限り,入院病棟移動中から24時間(食事,飲水,排泄時を含む)持続した。医師,患者,介護士が有害と判断した場合のみ30分以内の頭位中断を3回可とした。
仰臥位群(5,295例):経鼻経管栄養法実施例は連続的注入よりボーラス注入を推奨し,24時間以内にトイレに行くことは不可。その後,座位にクロスオーバー。
座位群(5,798例):頭部を≧30度挙上し上半身を起こして治療し,トイレに行くことは可。その後,仰臥位にクロスオーバー。
その他の管理は各国のガイドライン推奨に基づくこととし担当医師の判断に委ねた。
結果 [頭位の維持]
維持時間は仰臥位群のほうが座位群より有意に短く(中央値23.3時間 vs 24.0時間),24時間以内に頭位の維持をやめるものが多く(13.0% vs 4.2%),頭位維持率が有意に低かった(87% vs 95%);全p<0.001。
しかし,血液酸素飽和度,血圧などには有意な両群間差はなかった。
[一次エンドポイント]
参加拒否や追跡不能などでmodified Rankin scaleの評価ができなかったのは,仰臥位群619例(11.7%),座位群726例(12.5%)。
比例オッズモデルによる90日後のmodified Rankin scaleで評価した後遺障害の分布に,有意な両群間差はみられなかった(調整前オッズ比[OR]1.01;95%信頼区間0.92~1.10, p=0.84)。調整後も有意差は認められなかった。さらに,虚血性脳卒中,脳出血別に解析しても両群は同等だった。
[その他]
二次エンドポイント:90日後の死亡,modified Rankin scale 3~6(38.9% vs 39.7%),発症後90日以内の死亡(7.3% vs 7.4%),7日後のmodified Rankin scale,7日後のNIHSS,死亡にも両群間に有意差はなかった。視覚尺度によるEQ-5D(European Quality of Life Group
5-Dimension Self-Report Questionnaire)のみが仰臥位群のほうで良好だった(p=0.009)。
安全性も両群同等だった(重篤な有害イベント:14.3% vs 13.5%,肺炎:3.1% vs 3.4%)。
異質性のみられたサブグループはなく,post hoc解析におけるベースライン時のNIHSSスコア,発症から頭位開始までの時間による効果の異質性もみられなかった。
★結論★急性期脳卒中後の後遺障害度は24時間にわたる頭位(仰臥位,座位)による違いは認められなかった。
ClinicalTrials.gov No: NCT02162017
文献
  • [main]
  • Anderson CS et al for the HeadPoST investigators and coordinators: Cluster-randomized, crossover trial of head positioning in acute stroke. N Engl J Med. 2017; 376: 2437-47. PubMed

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収載年月2017.08