循環器トライアルデータベース

AIDA
Amsterdam Investigator-Initiated Absorb Strategy All-Comers

目的 日常臨床のPCI施行患者において,everolimus溶出生体吸収性スキャフォールド(BVS;Absorb)の金属製everolimus溶出ステント(Xience)に対する非劣性検証を目的とした。

一次エンドポイントは,標的血管不全(心臓死,標的血管心筋梗塞[MI],標的血管再血行再建術の複合エンドポイント)。
本報は,安全性の懸念からデータ安全性モニタリング委員会が勧告した早期報告で,エンドポイントに関する記述的情報。
コメント AIDA trialは実地臨床の冠動脈インターベンション(PCI)における完全生体吸収型スキャフォールド(BVS)とエベロリムス溶出性コバルトクロムステント(EES)を比較する試験で,2年追跡時点のtarget-vessel failure(TVF)についてEESに対するBVSの非劣性を検証する試験であるが,安全性懸念からのデータ安全性モニタリング委員会勧告に基づく早期報告である。全症例が2年追跡を完了していない段階での結果ではあるが,Kaplan-Meier法で算出した2年のTVF発生率はBVS: 11.7%/ EES: 10.7%, P=0.43と両群間に差を認めなかった。しかしながらdefinite/ probable device thrombosisはBVS: 3.5%/ EES: 0.9%, P<0.001とBVS群で高率であった。発生時期別に見ても1年以内,1年以降ともにdevice thrombosisの発生数は BVS群で多かった。
従来報告されてきたABSORB 2, ABSORB Japan,ABSORB China,ABSORB 3などのランダム化比較試験との相違は本試験が企業主導ではなく研究者主導であること及び実地臨床で行われたという点である。本試験でのtotal device lengthはABSORB Japanに比べ10 mm程度長く,ABSORB seriesの試験に比べやや複雑な患者・病変が登録されたことが伺える。結果としてはABSORB seriesの試験のPooled analysisと同様の結果で,BVSのdevice thrombosisのリスクについての懸念を増幅するものとなっている。本試験はABSORB seriesの試験よりやや遅れて患者登録が行われ,試験の途中から全症例でBVS留置後の後拡張が推奨された。ABSORB seriesの試験で至適な留置手技が行われた症例ではdevice thrombosis発生率が低かったというpost-hoc の小さなサブグループの結果が企業により強調されているが,本試験では後拡張がしっかり行われた症例でもdevice thrombosis発生率の低下は見られなかったと述べられている。BVSの高いdevice thrombosis発生率は手技に起因する部分よりもBVSのデバイス特性に基づく部分が大きいと考えられる。BVSにおいては手技時間が長く,手技成功率は低く,複雑病変では適用困難な症例も多い。metallic DESに比較してBVSの長期的な優越性は未だ理論的な議論に留まっており,現時点で実地臨床においてBVSを使用する理由はないと考える。(木村
デザイン 無作為割付け,単盲検,多施設(オランダのPCI施行実績の多い5施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は中央値707日。5年追跡の予定。
登録期間は2013年8月28日-’15年12月27日。
対象患者 1,845例・2,446病変。PCIを施行する冠動脈疾患患者で,薬剤溶出性ステント(DES)留置が適切と思われる標的病変を≧1つ有するもの。
除外基準:病変長>70mm,参照血管径<2.5mm,>4.0mm(目測),2本のステントあるいはスキャフォールドの留置が予定されている分岐部病変,ステント再狭窄。
■患者背景:平均年齢(BVS群64.3歳,DES群64.0歳),男性(72.5%, 76.0%),急性冠症候群(ACS)54%,ST上昇型MI(STEMI;26.0%, 24.4%),非STEMI(20.0%, 20.8%),安定狭心症/虚血の記録(39.1%, 40.2%),冠動脈造影所見によるPCI適応(5.5%, 3.9%)SYNTAXスコア(13.2, 12.6;中央値11),危険因子:糖尿病(18.5%, 16.6%;経口糖尿病薬治療[55.6%, 63.4%];インスリン治療[38.0%, 29.4%]),高血圧(50.9%, 50.5%),高脂血症(37.6%, 38.3%),冠動脈疾患家族歴(50.9%, 52.9%),現喫煙(28.6%, 31.7%),既往:PCI(21.9%, 20.0%),MI(18.0%, 18.7%),慢性腎不全(7.6%, 9.9%),脳卒中あるいは一過性脳虚血発作(5.0%, 6.3%),末梢血管疾患(7.0%, 6.1%)。
・手技背景:試験デバイス≧1本の留置成功例(96.9%, 99.8%[p<0.001]),試験デバイスのみの使用(93.0%, 98.8%[p<0.001]),患者ごとの治療病変数(1.34, 1.31);留置数(1.54, 1.45[p=0.01]);デバイス長(31.1mm, 29.7mm);最小デバイス径(2.73mm, 2.88mm)。
治療法 最初の病変を前拡張後にランダム化した。
BVS群(924例・1,237病変):登録の最初の年は後拡張が必須ではなかったため,後拡張実施病変は63%。運営委員会の推奨を受け,2014年10月1日以降はルーチンで後拡張を行った。
DES群(921例・1,209病変):金属製everolimus溶出ステントを留置。
2剤併用抗血小板療法(DAPT)およびその他の内科的治療はESCガイドライン,メーカーの使用説明書に従って手技前から行った。DAPTは,ACSの場合P2Y12受容体拮抗薬はticagrelorあるいはprasugrelが望ましいとし,手技後≧12か月の実施を推奨した。
結果 [中間報告速報]
[手技関連]
BVS群はDES群より手技時間が5分長く(49分,44分*),造影剤の使用が9mL多く(160mL, 151mL[p=0.02]),最初の病変に対する前拡張(98.6%, 96.9%[p=0.01]),前拡張病変(96.9%, 91.2%*),後拡張病変(74.0%, 49.1%*)が有意に多かった。
手技成功(残存狭窄率目視<20%,治療血管のTIMI grade 3,入院中の臨床イベント非発症)率はBVS群のほうが有意に低く(90.2%, 96.3%*),BVS群の残存狭窄率は17%,>30%狭窄は9%だった。 * p<0.001
DAPT 1年実施例はBVS群789/882例(89.5%),DES群785/881例(89.1%)。
[一次エンドポイント]
両群間に有意差はなかった(BVS群105例[2年後のKaplan–Meier推定による累積イベント率11.7%] vs DES群94例[10.7%]:ハザード比[HR]1.12;95%信頼区間0.85-1.48, P=0.43)。
複合エンドポイント構成各イベントは,心臓死:18例(2.0%)vs 23例(2.7%),標的血管MI:48例(5.5%) vs 30例(3.2%),標的血管再血行再建術:76例(8.7%)vs 65例(7.5%)。
[その他]
definiteあるいはprobableデバイスステント血栓症はBVS群で有意に多かった(31例[2年累積発生率3.5%]vs 8例[0.9%]:3.87;1.78-8.42, p<0.001)。発生時期別は,≦24時間(3例 vs 3例),>24時間~30日(10例 vs 2例),31日~1年(8例 vs 1例),>1~2年(9例 vs 2例),>2~3年(1例 vs 0例)。全デバイス血栓症も同群のほうが有意に多かった(37例[4.1%] vs 20例[2.5%]:1.85;1.08~3.19, p=0.02)。
BVS群のdefinite・probableステント血栓症発生例で残存狭窄率≧30%のものが19%,非発生例では9%(p=0.05)。
★結論★本速報では,PCI施行例での標的血管不全においてBVS群と金属製ステント群間に有意差はなかった。しかし,BVS群は2年間のデバイス血栓症の高発生率と関連した。
ClinicalTrials gov No: NCT01858077
文献
  • [main]
  • Wykrzykowska JJ et al; AIDA Investigators. Bioresorbable scaffolds versus metallic stents in routine PCI. N Engl J Med. 2017; 376: 2319-28. Epub 2017 Mar 29. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2017.06