循環器トライアルデータベース

GARFIELD-AF
Global Anticoagulant Registry in the FIELD-Atrial Fibrillation

目的 心房細動(AF)に加え脳卒中のリスクを1つ以上保有する患者には,ビタミンK拮抗薬(VKA)や新規の非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)による抗凝固療法が推奨されている一方,特定の患者は抗血小板薬単剤または抗凝固薬との併用投与が適応となっている。非弁膜症性心房細動(NVAF)の新規診断からの時間と転帰,特に1年後以降の関係については明らかになっていない。
GARFIELD-AFは,新規にNVAFと診断された患者52,000例の登録を目標にし,患者背景や脳卒中/全身性塞栓症(SE),抗血栓療法の観点から解析する現在進行中の世界的な登録研究である。本報は,この研究における診断から2年後の全死亡,脳卒中/SE,大出血の発生率と,発生要因となった患者背景および治療の報告。
コメント 心房細動患者の治療は,従来抗凝固療法により重大な出血を防ぎつつ,血栓塞栓症を予防することに焦点がしぼられていた。しかしながら,本研究でも示されたようにこれらのエンドポイントに比べると,死亡のほうが発生率が高く,血栓塞栓症/抗凝固療法関連の出血が原因による死亡は,全死亡の中のわずか10%程度である。死亡の中には,診断されていない血栓塞栓症や重大な出血が原因となっているものの存在,死亡してしまったため将来起きたであろう血栓塞栓症が過小評価されている可能性など,心房細動患者の管理において死亡を軽視することには問題が多い。死因の中には抗凝固療法が関与できないものもあり,心房細動患者の管理は従来に比べて,より総合的なアプローチを取ることが求められる時代になったといえよう。(井上
デザイン 前向き観察研究,多施設(35か国からの連続5コホート)。
期間 本報の追跡期間は24か月。
本解析コホートの登録期間は2010年3月~’13年6月。
参加者 17,162例(30か国858施設)。18歳以上,NVAFの診断後6週以内で,AF以外の脳卒中リスク因子を1つ以上有するもの。
除外基準:一過性の可逆的な原因によるNVAF,追跡不能例。
■患者背景:平均年齢69.8歳(≧75歳:38.1%),女性43.8%,白人64.5%。AFのタイプ:新規46.1%;発作性25.2%;持続性15.6%;永続性13.1%,診断施設:循環器科61.9%,内科19.7%,プライマリケア・一般医15.8%。
既往:うっ血性心不全(CHF)20.6%,冠動脈疾患(CAD)19.9%,急性冠症候群(ACS)9.4%,脳卒中/一過性脳虚血発作12.7%,高血圧78.1%,高コレステロール血症40.1%,糖尿病21.9%,喫煙35.0%。抗血栓療法:抗凝固療法60.8%(VKA 50.0%,NOAC 10.8%),Xa阻害薬5.5%,直接トロンビン阻害薬5.3%,抗血小板薬単剤投与27.4%,不使用11.8%。平均CHA2DS2-VAScスコア3.3,平均HAS-BLEDスコア1.5。
抗凝固療法(抗血小板薬併用を問わず)はHAS-BLEDスコアが高い例で少なく(スコア0:76.5%,≧4:49.8%),CHA2DS2-VAScスコア≧2例の36.9%でなし。
調査方法 2015年8月3日時点のデータを解析した。
登録施設は参加国(35か国)の異なる医療環境(開業医,病院[神経科,循環器科,老年科,内科,救急診療科,抗凝固療法クリニック,家庭医])からランダムに選択し,連続5ホートの連続登録例を解析した。本報では,最初の2コホートを解析。
血管疾患は末梢動脈疾患,ACS既往のCAD,高血圧は高血圧歴,安静時血圧>140/90mmHgと定義した。
ベースライン時のデータ,4か月ごとの追跡データを収集し,臨床イベント(脳卒中/SE,肺塞栓症,ACS,入院,死亡[心血管(CV)死,非CV死],心不全[発症,増悪],出血[重症度,出血部位])を記録。
結果 2年追跡例は97%。
全死亡は1,181例。
2年間のイベント発生率(100人・年)は全死亡3.83(95%信頼区間3.62~4.05),CV死1.55(1.42~1.70),非CV死1.37(1.25~1.51),脳卒中/SE 1.25(1.13~1.38),大出血0.70(0.62~0.81),CHF 2.41(2.24~2.59)。
最初の4か月間のイベント発生率は全追跡期間にくらべ有意に高かった(全死亡:+29%,脳卒中/SE:+35%,大出血:+56%)。4か月以降は低下し,経時的に漸減した。最初の高い死亡率はAFのタイプを問わなかったが,新規診断AF例がより高かった。大出血も同様であった。
死亡は,CV性が40.5%で,最も多かったのがCHF 10.8%,次いで突然死・目撃者のいない死亡7.5%,ACS 5.9%,非CV性が35.8%(悪性腫瘍10.3%,呼吸不全8.0%,感染症/敗血症6.7%)で,脳卒中(虚血性60例,出血性5例)は10%未満であった。
脳卒中例で追跡中に死亡したのは89例。もっとも多かった出血部位は消化管出血で1.47%。死亡・脳卒中/SE・大出血は,CHA2DS2-VAScおよびHAS-BLEDスコア上昇に伴い増加した。ACSの発症は0.63(0.55~0.73),CHFは2.41/100人・年(2.24~2.59)。
多変量解析で,高齢,糖尿病,CHF,血管疾患,脳卒中/SE歴,出血歴,慢性腎疾患,喫煙,非発作性AFは,死亡リスク上昇と有意に関連した。抗凝固療法は死亡リスクを有意に低下(調整ハザード比0.65;95%信頼区間0.58~0.73)。
★結論★NVAF患者において,2年間で最も頻度が高かった有害転帰は死亡。死亡,脳卒中/SE,大出血の発生率が高かったのは最初の4か月で,その後漸減した。脳卒中関連死は<10%で最多ではなく,NVAF患者の予後を改善するには,今以上に総合的な管理が必要である。

[主な結果]
  • Bassand JP et al for the GARFIELD-AF investigators: Two-year outcomes of patients with newly diagnosed atrial fibrillation: results from GARFIELD-AF. Eur Heart J. 2016; 37: 2882-9. PubMed

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収載年月2017.02