循環器トライアルデータベース

ABSORB II

目的 冠動脈疾患(CAD)患者におけるeverolimus溶出生体吸収性スキャフォールド(BVS;Absorb)の金属製everolimus溶出ステント(Xience)に対する中期(3年)の優越性・非劣性を検証する。

一次エンドポイントは,3年後のセグメント内血管運動反応性*におけるAbsorb群のXience群に対する優越性,3年間の遠隔期内腔損失径**における非劣性の二つ。
* 硝酸薬の冠動脈内注入前後の内腔径の変化を定量的冠動脈造影で評価。
** 冠動脈造影で評価。硝酸薬注入後の最小内腔径の手技後~3年後までの変化。
コメント everolimus生体吸収性スキャフォールド(BVS)と金属性everolimus溶出ステント(EES)との初のRCTであるABSORB IIでは,すでに1年後のcomposite clinical outcomeに差がないことが報告されている(Lancet. 2015; 385; 43-54. PubMed)が,今回は本来の一次エンドポイントである3年後の血管運動性に関する優越性と晩期損失径の非劣性が検討された。血管支持力と引き換えに得られるはずのBVSの神髄が試される試験と言える。
PCIの大御所Patrick W Serruys自らが記しているように,務めを終えたら消え去るBVSは冠動脈インターベンション医の“夢”である。しかし現実はそれほど甘くないようだ。文字通り“金縛り”にあわずに済む血管達は,その運動性を回復し,さらに陽性リモデリング・プラーク退縮をも期待されていたが,今回いずれもが否定される結果となった。そればかりか,パワー不足により従来なら有意差がつきにくいはずのdevice-oriented composite endpoint(心臓死・対象血管由来の MI・TLR)は,一年時の結果が覆り,血栓症を主体とする MIに引っ張られてBVSが劣る結果となった。また支持力不足により急性獲得径が小さいために再狭窄率,再治療率も有意に多かった。期待が大きかっただけに,その落胆ぶりは釈明と将来への期待に終始した「Discussion」の論調からも伝わってくる。
擁護すべき点もある。
ABSORB IIはBVS導入初期の試験であり,それまでに培われていたDESの留置法が外挿されていた。多くの経験を重ね現在では BVSの特性に合わせた留置術;PPSP(“PPAP”ではありません)が推奨されている。すなわち,
Planning;特に石灰化病変や分岐部は要注意
Prepare the lesion;事前にnon-compliant balloonでしっかり広げる
Size appropriately;just-sizingに心がける
Post-dilate;0.5mm大きいnon-compliant balloonで高圧拡張,残存狭窄<10%
これにより再狭窄率の低下や血栓症の回避に繋がる可能性は高い。さりとてBVSの本質である今回のエンドポイントをどの程度挽回できるのかは未知数である。
このままBVSの神話は崩れてしまうのだろうか?そして第三世代に突入した最強のDES達を前にして,BVSはどこに向かって行くのだろう?(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,単盲検,多施設(欧州,ニュージーランドの46施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は3年。
登録期間は2011年11月28日~’13年6月4日。
対象患者 501例。18~85歳,心筋虚血の証拠があり,冠動脈1~2枝に新規固有病変がある患者。
■患者背景:平均年齢(Absorb群61.5歳,Xience群60.9歳),女性(24%, 20%),BMI(27.9, 28.1kg/m²),現喫煙(24%, 22%),高血圧(69%, 72%),脂質異常症(75%, 80%),LDL-C<80mg/dL(34.9%, 31.9%),糖尿病(両群とも24%;インスリン治療例:28%, 35%),早発性CAD家族歴(37%, 41%),心筋梗塞(MI)既往(28%, 29%),安定狭心症(両群とも64%;CCS III~IV:両群とも14%),不安定狭心症(20%, 22%;Braunwald class III:24%, 27%),無症候性虚血(13%, 11%),1枝病変(83%, 85%),標的血管(左前下行枝:45%, 46%,左回旋枝:29%, 23%,右冠動脈:26%, 31%),治療病変数≧2(9%, 10%),石灰化病変(13%, 15.5%),AHA病変分類(B1:53%, 50%, B2:44%, 48%)。  既往,要治療,またはその両方
治療法 2:1にランダム化。
Absorb群(335例・364病変):everolimus溶出BVS(Absorb)を留置。
Xience群(166例・182病変):everolimus溶出ステント(Xience)を留置。
結果 [一次エンドポイント]
3年後の血管運動反応性テスト(258病変,130病変)において,Abosorb群のXience群に対する優越性は認められなかった(硝酸薬注入後の平均内腔径の増加:0.047mm vs 0.056mm,優越性p=0.49)。
3年後の冠動脈造影(298病変,151病変)において,損失内腔径はAbosorb群のほうが大きく,非劣性は認められなかった(0.37mm vs 0.25mm;群間差0.12mm,非劣性マージン0.14mm,非劣性p=0.78)。
[その他の冠動脈造影解析]
Xience群のほうが3年後の最小内腔径が大きく(1.86mm vs 2.25mm, p<0.0001),狭窄率の改善が大きかった(手技前:58.90% vs 59.15%→手技後:15.61% vs 10.06%→追跡時:25.84% vs 15.72%;手技後,追跡時p<0.0001)。デバイス内binary再狭窄率は7.0% vs 0.7%(p=0.0031),セグメント内binary再狭窄率は8.4% vs 3.3%(p=0.0418)。
[IVUS二次エンドポイント]
3年後のIVUS評価(247病変,136病変)で,Abosorb群は最小内腔面積(MLA)が小さかった(4.32mm² vs 5.38mm², p<0.0001)。また,同群はMLAにおける急性期獲得面積(2.89mm² vs 3.64mm², p<0.0001)が小さく,遠隔期損失面積(-0.56mm2 vs -0.33mm², p=0.0401)が大きかった。一方,平均内腔面積の変化は,むしろAbsorb群で有意に大であった(0.07mm² vs -0.15mm², p=0.019)。
[臨床二次エンドポイント]
3年追跡率は両群とも93%。
患者関連エンドポイント(全死亡,全MI,全再血行再建術の複合)に有意な両群間差はみられなかった(21% vs 24%)。
デバイス関連エンドポイント(心臓死,標的血管MI,臨床適応による標的病変再血行再建術の複合)はAbsorb群のほうが多く(10% vs 5%, p=0.0425),これはおもに周術期MI(4% vs 1%, p=0.16)を含む標的血管MIの差によった(6% vs 1%, p=0.0108)。
Seattle Angina Questionnaire scoreおよび運動負荷試験にも差はみられなかった。
[その他]
血栓症の発生はAbsorb群のみ。definiteスキャフォールド血栓症は8例で(急性・亜急性期各1例,超遠隔期[>365日]6例),遠隔期のprobable血栓症1例を加えた9例すべてがST上昇型MIと関連,発生から13日後に1例が死亡した。
1,095日後のDAPT施行例(31% vs 30%),1,095日以内のDAPT施行期間(565.5日 vs 561.0日)に両群間差はなかった。
★考察★BVS Absorb群の薬剤溶出性ステントXience群に対する血管運動反応性における優越性,遠隔期損失内腔径における非劣性のいずれも示されなかった。Absorb群では周術期心筋梗塞を含む標的血管による心筋梗塞が多かったためデバイス関連エンドポイントが多かった。患者関連エンドポイント,狭心症症状,運動負荷試験の結果は両群同等であった。
ClinicalTrials.gov No: NCT01425281
文献
  • [main]
  • Serruys PW et al: Comparison of an everolimus-eluting bioresorbable scaffold with an everolimus-eluting metallic stent for the treatment of coronary artery stenosis (ABSORB II): a 3 year, randomised, controlled, single-blind, multicentre clinical trial. Lancet. 2016; 388: 2479-91. PubMed

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収載年月2016.12