循環器トライアルデータベース

EARLY-BAMI
Early-Beta blocker Administration before reperfusion primary PCI in patients with ST-elevation Myocardial Infarction

目的 primary PCI(pPCI)前のβ遮断薬の投与により臨床転帰が改善するか,あるいは梗塞サイズが減少するかは明らかでない。METOCAD-CNIC試験(Circulation. 2013; 128: 1495-503. PubMed)はpPCI前のβ遮断薬metoprolol静注により梗塞サイズが縮小し,心機能が保たれることを示したが,前壁梗塞患者のみでの検討であり,プラセボ対照の二重盲検試験ではなかった。
ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において,病院到着前およびpPCI前の2回のmetoprolol静注の梗塞サイズに対する効果を検討する。

一次エンドポイントは,30(±10)日後の心臓MRI(CMR)で評価*した心筋梗塞(MI)サイズ。
* 当初はクレアチンキナーゼ(CK)による評価であったが,164例登録後の2013年7月3日に変更。
コメント 急性心筋梗塞(STEMI)に対するprimary PCIの前にβ遮断薬を投与しておくと,梗塞サイズの縮小が得られるのではないかと期待させる報告もあるが,これまで二重盲検のランダム化比較試験はなされていなかった。本試験は,オランダとスペインにおける初めての多施設共同,無作為割付けの二重盲検試験である(n=683)。メトプロロール(5mg x 2)が,PCIの前に静注投与され,1ヵ月後の梗塞サイズ,心機能(EF)がMRI(CMR)で評価された。結果は,梗塞サイズにも心機能にも全く有効性は認められなかったが,心室性不整脈のみ有意に抑制された。サブ解析で前壁梗塞に限っても有効性がみられなかったことから,STEMIに対するβ遮断薬のPCI前投与は,梗塞サイズの縮小には有効でないと結論してよいものと考える。(
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(オランダの5 PCI施設・3救急サービス;スペインの9施設・1サービス)。
期間 追跡期間は2.1年(中央値)。
登録期間は2012年2月~’15年11月。
対象患者 683例。>18歳,急性STEMI症状が>30分~<12時間持続,連続2誘導ECGで>1mVのST上昇・新規左脚ブロックを認めた患者。STEMIは救急隊員が診断,ECG送信による医師の確認も許可。
除外基準:KillipクラスIII~IV,収縮期血圧(SBP)<100mmHg,心拍数<60拍/分,II~III度房室ブロック,心筋梗塞既往,気管支喘息,ペースメーカー・ICD植込みなど。
■患者背景:平均年齢62.4歳,女性25.2%,BMI 27.3kg/m²,糖尿病16.1%,高血圧39.5%,β遮断薬使用18.8%,前壁梗塞50.8%,最初の受診場所(救急車91.9%,紹介病院5.1%,PCI施設2.9%),発症~受診の時間141.7分,6時間以内の受診(metoprolol群93.8%,プラセボ群89.4%[p=0.046]),入院時の血圧137.6/82.5mmHg,心拍数(74.4拍/分,78.7拍/分[p<0.001],退院時処方(ACE阻害薬62.9%,β遮断薬73.0%),病変数(1枝:53.0%, 59.3%,2枝:30.3%, 20.9%,3枝:11.8%, 13.6%),pPCI施行96.1%,入院中のPCI再施行4.6%,入院中のCABG施行(3.6%, 7.0%[p=0.049])。
治療法 救急隊員が救急車内で患者を診断し,ガイドラインに準じた治療(aspirin 500mg静注,clopidogrel 600mg・ticagrelor 180mg経口投与,未分画heparin 5,000単位静注)を開始。登録基準を満たした患者から口頭で同意取得後,盲検化された試験薬を開封,投与した。
metoprolol群(336例),プラセボ群(347例)。
試験薬は2回のボーラス投与,救急車内で5mg×1回,カテーテル室到着後(pPCI直前)5mg×1回投与した。pPCIには第二世代薬剤溶出性ステント(DES)を使用。PCI後12時間以内に全例にmetoprololの経口投与を開始する計画とした(metoprolol群は24時間以内の投与開始)。退院時は全例に処方。
結果 2回目のボーラス投与実施例はmetoprolol群81.1%,プラセボ群86%。
PCI後24時間以内のmetoprolol経口投与開始は78%, 73%。
[一次エンドポイント]
CMR施行はmetoprolol群169例,プラセボ群173例(全例の54.8%;プロトコル変更後登録例の66%)。
梗塞サイズ(左室の遅延造影部位の割合)に有意な両群間差はみられなかった(metoprolol群15.29% vs プラセボ群14.91%, p=0.616)。
前壁梗塞患者(18.8% vs 19.3%)を含むサブグループ解析でも有意差は示されなかった。
[二次エンドポイント]
最高CK濃度(2,102 vs 2,072U/L),24時間のCK濃度曲線下面積,入院24時間後のトロポニンT値(3,711 vs 3,166ng/L)に有意な両群間差はなかった。
CMRで評価したEF(50.97% vs 51.65%),30日後のMACE(心臓死,非致死的再梗塞,標的血管再血行再建術:6.2% vs 6.9%)にも差はなかった。
[安全性]
症候性徐脈(4.2% vs 2.6%),重症低血圧(2.9% vs 5.5%)に有意差はみられなかったが,急性期の心室性不整脈はmetoprolol群のほうが少なかった(3.6% vs 6.9%, p=0.050)。
★結論★STEMI患者において,pPCI前のmetoprololボーラス静注によるプラセボと比較した30日後の梗塞サイズの減少は認められなかった。metoprolol群では急性期の心室性不整脈が少なく,有害事象の増加はみられなかった。
文献
  • [main]
  • Roolvink V et al on behalf of the EARLY-BAMI investigators: Early intravenous beta-blockers in patients with ST-segment elevation myocardial infarction before primary percutaneous coronary intervention. J Am Coll Cardiol. 2016; 67: 2705-15. PubMed

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収載年月2017.01