循環器トライアルデータベース

QResearch

目的 2型糖尿病の治療薬と心血管イベントの関連に関する報告は一貫していない。とくに新しい薬剤のグリタゾン系,グリプチン系薬剤の長期リスクに違いがあるかは明らかではない。
英国の大規模プライマリケアデータベースQResearchを用いて,2型糖尿病患者における糖尿病治療薬6クラス(グリタゾン系[チアゾリジンジオン],グリプチン系[DPP-4阻害薬],metformin,スルホニル尿素[SU]薬,インスリン,その他)の単剤・併用療法と心血管イベントの関連を検証した。
評価項目は,心不全,心血管疾患(CVD)(冠動脈疾患,脳卒中,一過性脳虚血発作),全死亡。
コメント BMJ. 2016; 354: i3477. へのコメント
大規模データベースを用いた2型糖尿病の治療薬と心血管イベントの関連に関するコホート研究。結果に見る通り,グリタゾン(チアゾリジン系),グリプチン(DPP-4阻害薬),メトホルミンではイベント減少,インスリン,SU薬では逆にイベント増加となっているが,それぞれの治療薬が使用される患者の病期,合併症の状況等は当然異なっており,解釈には注意を要する。例えば,心血管リスクがある患者にインスリン治療は避ける必要があるのだろうか? なぜならばインスリンを使用しようという患者は他の薬剤に比して罹病歴が長く,合併症頻度は高いわけであるから他の薬剤に比してイベントも多い,当然の結果である。(弘世
デザイン コホート研究,多施設(英国の一般開業医1,243施設)。
期間 登録期間は2007年4月1日~'15年1月31日。
参加者 46万9,688例。25~84歳の2型糖尿病診断例。
除外基準:35歳までに1型糖尿病と診断されたインスリン処方例,剥奪スコア(Townsend score)の記録のないもの,過去12か月以内のグリタゾン系・グリプチン系・インスリンの投与,エンドポイントの疾患診断歴。
■患者背景:平均年齢(グリタゾン投与例63.0歳,グリプチン投与例63.3歳,metformin投与例64.6歳,SU薬投与例66.2歳,インスリン投与例64.5歳,その他の糖尿病治療薬投与例60.0歳),男性(59.4%, 58.0%, 57.3%, 58.9%, 58.1%, 54.0%),白人・記録なし(80.3%, 80.2%, 80.0%, 79.9%, 85.9%, 84.0%),非喫煙(53.4%, 52.6%, 51.8%, 51.9%, 47.5%, 50.8%),CVD(13.9%, 16.4%, 18.8%, 21.5%, 23.2%, 16.5%),高血圧(58.8%, 59.3%, 58.7%, 60.0%, 56.2%, 60.6%),ACE阻害薬(43.7%, 39.8%, 32.7%, 36.4%, 39.2%, 44.5%),ARB(16.0%, 15.0%, 11.2%, 12.6%, 13.3%, 17.3%),Ca拮抗薬(26.3%, 24.9%, 21.7%, 23.9%, 25.4%, 27.6%),スタチン(72.8%, 65.7%, 53.7%, 57.9%, 63.9%, 70.1%),aspirin(37.0%, 29.8%, 26.6%, 30.9%, 35.7%, 34.0%)。
調査方法 糖尿病治療薬6クラス(グリタゾン系,グリプチン系,metformin,SU薬,インスリン,その他)の単剤療法,2剤併用,3剤併用療法を20カテゴリーに分類。
治療の開始・中止・変更を考慮して,糖尿病治療薬の使用を時間変動曝露要因として解析。
結果 追跡期間中の処方症例数は,グリタゾン系 21,308例(4.5%),グリプチン系32,533例(6.9%),metformin 25万6,024例(54.5%),SU薬 13万4,570例(28.7%),インスリン19,791例(4.2%),その他 12,062例(2.6%)。
[投与例 (単剤・併用含む)vs 非投与例]
全死亡のリスクは,非投与例にくらべ,グリタゾン(調整ハザード比0.77;95%信頼区間0.71~0.84),グリプチン(0.82;0.77~0.88),metformin(0.59;0.58~0.60),その他の薬剤(0.82;0.73~0.91)投与例で有意に低下したが,SU薬(1.10;1.07~1.12),インスリン(1.47;1.41~1.53)投与例では増加した。
心不全リスクは,グリタゾン(0.74;0.66~0.83),グリプチン(0.86;0.78~0.95),metformin(0.70;0.68~0.73)投与例で低下,インスリン投与例で増加した(1.32;1.22~1.43)。
CVDリスクは,グリタゾン(0.75;0.69~0.81),metformin(0.76;0.74~0.78)投与例で低下し,インスリン投与例(1.23;1.15~1.31)で増加した。
[薬剤別リスク]
・非投与期間を対照とした場合
グリタゾン単剤で心不全(0.50;0.26~0.97),グリタゾン+metforminで心不全(0.50;0.40~0.63),CVD(0.46;0.39~0.54),全死亡(0.55;0.47~0.64),グリタゾン+SU薬で心不全(0.65;0.47~0.89),CVD(0.75;0.58~0.98),グリタゾン+metformin+SU薬で心不全(0.54;0.45~0.64),CVD(0.59;0.53~0.66),全死亡(0.44;0.38~0.50)が低下した。
グリプチン系薬剤単剤ではいずれのイベントについても有意差を認めなかったが,グリプチン+metforminで心不全(0.62;0.52~0.75),CVD(0.67;0.59~0.75),全死亡(0.52;0.46~0.59),グリプチン+metformin+SU薬で心不全(0.60;0.52~0.70),CVD(0.70;0.63~0.78),全死亡(0.49;0.44~0.55)が低下した。
・metforminを対照とした場合
グリタゾン単剤では有意差を認めなかったが,グリタゾン+metforminで心不全(0.74;0.58~0.93),CVD(0.60;0.51~0.70)が低下,グリタゾン+SU薬で全死亡が増加(1.50;1.24~1.80),グリタゾン+metformin+SU薬で心不全(0.79;0.66~0.93),CVD(0.78;0.70~0.87),全死亡(0.68;0.59~0.78)が低下した。
グリプチン単剤でCVD(1.50;1.11~2.02),全死亡(1.86;1.55~2.25)が増加,グリプチン+metforminでCVD(0.87;0.77~0.99)と全死亡(0.80;0.71~0.91)が低下,グリプチン+SU薬で全死亡が増加(1.44;1.23~1.68),グリプチン+metformin+SU薬で全死亡が低下した(0.76;0.69~0.85)。
★結論★糖尿病治療薬の単剤・併用療法は,その種類により心不全,心血管疾患,全死亡リスクとの関連に臨床的に重要な差があった。グリタゾン系,グリプチン系薬剤の投与では非投与にくらべこれらのリスクが有意に低下した。

[主な結果]
  • SBP変動,偏頭痛,SLE,非定型抗精神病薬使用など新規危険因子を追加した英国の改訂10年CVDリスク予測モデルQRISK3は,CVD,脳卒中の高リスク者同定に有用。
    QRISKは英国で25~84歳の10年心血管疾患(CVD)リスクの推定に幅広く使用されているリスク予測アルゴリズムである。CVD絶対リスクを低下させるために,2017年最新QRISK2*リスク予測モデルに新規の危険因子になり得る変数**も含めて改訂したQRISK3を作成し,その有用性を検証した。
    * 年齢,人種,deprivation(剥奪[貧困]),収縮期血圧(SBP),BMI,総コレステロール(TC),HDL-C,喫煙,一親等に<60歳発症の冠動脈疾患家族歴,1型・2型糖尿病,高血圧治療,関節リウマチ,心房細動,慢性腎臓病(CKD ステージ4~5)。
    ** CKD ステージ3,偏頭痛,コルチコステロイドの使用,全身性エリテマトーデス(SLE),非定型抗精神病薬使用,重度精神疾患,勃起不全,HIV/AIDS,SBP変動(≧2回測定値の標準偏差)。
    Cox比例ハザードモデルで男女別に各危険因子の関連を推定し,HIV/AIDSはリスクの上昇が有意ではなかったため,QRISK3に追加しなかった。プライマリーケア1,309施設を,抽出コホート(981施設),検証コホート(328施設)にランダム化し,1998年1月~2015年12月の登録者のうちCVD発症例,スタチン投与例などを除外して解析した(抽出コホート788万9,803例[女性401万9,956例・平均43.3歳,男性386万9,847例・42.6歳],検証コホート267万1,298例[136万457例,131万841例])。
    抽出コホートのCVD(冠動脈疾患,虚血性脳卒中,一過性脳虚血発作の複合)発症は追跡期間中央値4.4年;5,080万人・年の観察で363,565例。
    QRISK3の較正は良好(女性:10年CVD推定リス4.7%;観察CVDは5.8%,男性は6.4%;7.5%)で, 女性では血圧変動を除外したモデルでCVD診断までの時間の変動を示すR2値(高値ほどばらつきが大)は59.6%,識別能を測定するD統計量は2.48,C統計量は0.88(いずれも高値ほど識別能が高い)。男性ではそれぞれ54.8%, 2.26, 0.86。全体的なQRISK3の性能はQRISK2と同等であった。
    <例>44歳白人男性で,ヘビースモーカー,TC/ HDL-C比が2,SBP 132mmHg,SBP標準偏差なし,BMI 31.22kg/m²,偏頭痛あり,ステロイド使用の場合,QRISK3による10年CVDリスクは7.5%。これにSBP標準偏差 10mmHg,心房細動,勃起不全が加わると22.5%(Hippisley-Cox J et al: Development and validation of QRISK3 risk prediction algorithms to estimate future risk of cardiovascular disease: prospective cohort study. BMJ. 2017; 357: j2099.)。 PubMed
  • Hippisley-Cox J and Coupland C: Diabetes treatments and risk of heart failure, cardiovascular disease, and all cause mortality: cohort study in primary care. BMJ. 2016; 354: i3477. PubMed

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収載年月2016.12
更新年月2017.07