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DANISH
Danish Study to Assess the Efficacy of ICDs in Patients with Non-ischemic Systolic Heart Failure on Mortality

目的 収縮機能が低下した心不全患者における植込み型除細動器(ICD)の有効性は,虚血性心疾患患者では十分に立証されているが,非虚血性心疾患患者でのエビデンスはきわめて少ない。また,臨床試験でICDの有効性が立証された当時にくらべ,心不全の内科治療は変化しており,いまや多くの患者が心臓再同期治療(CRT)を受けている。
状態が安定している非虚血性で,収縮機能が低下した慢性の症候性心不全患者において,CRTの必要性を問わず,ICD植込みの有効性と安全性を通常ケアと比較する。

一次エンドポイントは,全死亡。
コメント N Engl J Med. 2016; 375:1221-30. へのコメント
過去に,非虚血性心不全患者でICDの有効性を示した研究はSCD-HeFTのみであり,この研究は1997~2001年に患者登録が行われている。心不全治療が大きく進歩した時代には,SCD-HeFTの成績をそのまま当てはめることは適切ではない。本研究では,心不全に対する薬物治療が十分に行われ,CRTが58%の例で用いられている。このような患者群では,ICDをさらに上乗せしても死亡率を改善することは難しい。
ことに高齢者では,心不全の経過とともに心不全やその他の心血管系疾患による死亡リスクは増大し,また心血管系疾患以外の死亡リスクが増大することも,今回の結果の一因といえる。若年者ではICD群で死亡率が有意に低く,また心臓突然死についてもICD群の有効性が示されており,ICDの効果が期待される患者群をいかに抽出するかが今後の課題である。(井上
デザイン 無作為割付け,オープン,多施設(デンマークの5施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は67.6か月(中央値)。
登録期間は2008年2月7日~’14年6月30日。
対象患者 1,116例。症候性(NYHA心機能分類II~III度,CRT植込み予定はIV度),非虚血性の収縮機能が低下した(EF≦35%)心不全患者で,NTpro-BNP>200pg/mLのもの。冠動脈1~2枝の狭窄程度が収縮機能を低下させるほどではない患者と,ペースメーカー・CRTペースメーカーを既に植込んでいるがデバイスの変更・アップグレードの意志がある患者も登録可とした。
除外基準:安静時心拍数>100bpmの永続性心房細動または透析を受けている腎不全など。
■患者背景:年齢*(ICD群64歳,通常ケア群63歳),女性(27%, 28%),血圧*(123/74, 124/74mmHg),BMI*(両群とも26.8kg/m²),NT-proBNP*(1,244, 1,110pg/mL),QRS間隔*(146ms, 145ms),EF*(両群とも25%),推算糸球体濾過量*(74, 73mL/分/1.73m²),NYHA II度:53%, 54%;III度:両群とも45%,心不全罹病期間*(20か月,18か月),高血圧(33%, 30%),糖尿病(18%, 20%),永続性心房細動(24%, 20%),心不全の原因(特発性:両群とも76%,弁膜症:両群とも4%,高血圧:11%, 10%),服用薬(ACE阻害薬/ARB:96%, 97%,β遮断薬:両群とも92%,鉱質コルチコイド受容体拮抗薬:59%, 57%,amiodarone:両群とも6%),CRT植込み(両群とも58%),既存のペースメーカー・CRTペースメーカー(10%, 8%)。* 中央値
治療法 CRT適応例+既存のCRT植込み例(626+19例)と非適応例(471例)に層別後,ランダム化。
ICD群(556例),通常ケア群(560例)。
ICD(またはCRT)植込みはランダム化後4週間以内を予定。
結果 ランダム化からICD植込みまでの時間は31日(中央値)。
クロスオーバーはICD群14例,通常ケア群27例。
ICD群の85例(15.3%)が試験中にバッテリーを交換,30例が感染または患者の要望によりデバイスを除去または永久的動作停止とした。
[一次エンドポイント]
有意な両群間差は認められなかった(ICD群120例[21.6%] vs 通常ケア群131例[23.4%]:ハザード比0.87;95%信頼区間0.68~1.12, p=0.28)。
サブグループ解析では年齢による違いが認められ,死亡リスクは<68歳ではICD群のほうが低かったが(0.64;0.45~0.90, p=0.01),≧68歳では差を認めなかった(交互作用p=0.009)。CRT植込みの影響はみられなかった(交互作用p=0.73)。
[二次エンドポイント]
心臓突然死のリスクはICD群のほうが低かったが(4.3% vs 8.2%:0.50;0.31~0.82, p=0.005),心血管死には有意差を認めなかった(13.8% vs 17.0%:0.77;0.57~1.05, p=0.10)。
[その他]
蘇生できた心停止・持続性心室頻拍(4.7% vs 4.5%),心停止(2.0% vs 2.5%)は両群同等。
ICD群での抗頻拍ペーシングによる心室頻拍の停止は17.4%,心室細動・著明な心室頻拍に対する適切なショックは11.5%。
[安全性]
デバイス感染症(4.9% vs 3.6%),重篤なデバイス感染症(2.7% vs 2.3%)に差はなかった。
ICD群における不適切なショックは5.9%。
★結論★症候性の収縮機能が低下した非虚血性心不全患者において,予防的ICD植込みによる長期の死亡抑制は認められなかった。
ClinicalTrials.gov No: NCT00542945
文献
  • [main]
  • Køber L et al for the DANISH investigators: Defibrillator implantation in patients with nonischemic systolic heart failure. N Engl J Med. 2016; 375:1221-30. Epub 2016 Aug 27. PubMed
    McMurray JJ: The ICD in heart failure - time for a rethink? N Engl J Med. 2016; 375: 1283-4. Epub 2016 Aug 27. PubMed
  • [substudy]
  • ICD植込み群の生存率は高齢になるほど低下。生命予後改善からみたICD植込みのカットオフ年齢は≦70歳。
    ICD植込みと全死亡,心臓突然死の関係に年齢による違いがあるかを検証した(post hoc解析)。
    1,116例(年齢63歳*)。年齢の第3三分位群(≧68歳[393例・73歳*])は第1群(<59歳[348例・53歳*])にくらべ,ペースメーカー,CRT歴(13%, 6%),ICD群ランダム化例(55%, 48%)が多く,心不全治療期間が長く,NT-proBNPが高値,推算糸球体濾過量が低値,ガイドライン推奨治療薬の目標用量達成例が少なかった。
    追跡期間67.6か月*のICD群における全死亡リスクは年齢と直線の関係がみられ,高齢者でリスクが高かった(薬物治療群とくらべたハザード比[HR]1.03;95%信頼区間1.003~1.06, p=0.03)。Kaplan-Meier 7年推定生存率は,全例にICDを植込まなかった場合は70%,植込んだ場合は72%(植込み例の絶対死亡率低下は8%[1.1%/年]),ICD植込みによる全死亡改善は>70歳例では認められず植込みの至適カットオフ年齢は≦70歳だった(≦70歳群:全死亡HR 0.70;0.51~0.96[p=0.03],>70歳群:1.05;0.68~1.62, p=0.84)。* 中央値
    心臓突然死のリスクは(≦70歳群:1.8/100患者・年;1.3~2.5 vs >70歳群:1.6/100患者・年;0.8~3.2),非心臓突然死(2.7/100患者・年;2.1~3.5 vs 5.4/100患者・年;3.7~7.8)で,年齢群間に有意差が認められた(p=0.01)。適切なショック作動は≦70歳群で46例,>70歳群で10例,7年間の累積率はそれぞれ0.72%,0.48%。カットオフ値を68歳とした場合も有意な違いはみられなかった:Circulation 2017; 136: 1772-80. PubMed

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収載年月2016.09
更新年月2018.01