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LEADER
Liraglutide Effect and Action in Diabetes: Evaluation of Cardiovascular Outcome Results

目的 血糖降下の有効性が確立され,軽度の降圧および体重減少作用と脈拍増加作用が示されているグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬リラグルチド(liraglutide)は,2型糖尿病治療薬として承認されている。血糖降下薬については心血管(CV)安全性の懸念から,規制当局が新薬のCV安全性評価を義務付けている。
心血管疾患(CVD)高リスクの2型糖尿病患者において,liraglutideの標準治療への追加治療の長期心血管転帰を検証する(非劣性試験)。

一次エンドポイントは,初発のCV死,無症候性を含む非致死的心筋梗塞(MI),非致死的脳卒中の複合エンドポイント。
コメント 新規糖尿病薬に対するお馴染みの安全性検証試験である。昨年SGLT2阻害薬のエンパグリフロジンを使用したEMPA-REG OUTCOME試験で,この薬剤の一次エンドポイント抑制における優越性が証明され,さらに総死亡が大きく抑制されたことから,GLP-1受容体作動薬のリラグルチドを使用したLEADER試験の結果が発表された2016年6月,ニューオーリンズのアメリカ糖尿病学会(ADA)会場は異様な緊張感に包まれていた。
結果は,一次エンドポイントである3つのエンドポイント複合のMACEでハザード比が小さいものの優位性が示された。しかし,なによりの驚きは,EMPA-REG OUTCOMEにおいて糖尿病治療薬で初めて証明された総死亡率の有意な抑制が,再び,このリラグルチドでも(抑制率は,エンパグリフロジンの32%にくらべると15%ではあったが)証明されたことだと思う。他のGLP-1受容体作動薬であるリキシセナチドを用いた同様のELIXA試験も少し以前に発表されたが,この薬剤の一次エンドポイントや総死亡などはいずれも非劣性までしか証明されなかった。この結果の違いについての解釈はADA会場でも大きな話題となったが,第一に考えるべきは対象患者の背景の違いである。ELIXAでは急性冠症候群が対象であり,LEADERの対象患者より重篤な心血管疾患を背後に抱えていた。作用時間の違いが結果に結びついたのかは判断が難しい。
一点残念なのは,LEADERで使用されたリラグルチドの使用量が1.8mgであることである。これは我が国の承認用量の倍であり,一刻も早くこの用量が承認されることを切望する。(弘世
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(32か国410施設)。
期間 追跡期間は3.8年(中央値)。
試験期間は2010年9月~’12年4月。
対象患者 9,340例。HbA1c≧7%,薬物治療歴なし,または経口血糖降下薬・インスリン1剤以上による治療歴のある2型糖尿病患者。≧50歳でCVD(冠動脈疾患[CAD],脳血管疾患,末梢動脈疾患,ステージ≧3の慢性腎臓病[CKD],NYHA心機能分類II~III度の心不全)を≧1つ合併しているもの,あるいは≧60歳でCV危険因子(微量アルブミン尿・蛋白尿,高血圧・左室肥大,左室収縮・拡張不全,足関節上腕血圧比[ABI]<0.9)を≧1つ保有していると試験責任医師が判断したもの。
除外基準:GLP-1受容体作動薬・DPP-4阻害薬・pramlintide・速効型インスリンの使用,多発性内分泌腫瘍症2型・甲状腺髄様癌の家族歴・既往,急性冠・脳血管イベント発症後14日以内など。
■患者背景:平均年齢(liraglutide群64.2歳,プラセボ群64.4歳),男性(64.5%, 64.0%),糖尿病罹病期間(12.8年,12.9年),HbA1c(両群とも8.7%),BMI(両群とも32.5kg/m²),血圧(135.9/77.2, 135.9/77.0mmHg),心不全(17.9%, 17.8%),推算糸球体濾過量(eGFR)(≧90mL/分/1.73m²:34.7%, 35.4%;60~89 mL/分/1.73m²:41.4%, 42.3%;30~59 mL/分/1.73m²:21.4%, 20.0%),CVD・CKD合併例は15.8%。
≧50歳のCVD合併例(82.1%, 80.6%):MI(31.4%, 30.0%),脳卒中・一過性脳虚血発作(15.6%, 16.6%),血行再建術(39.3%, 38.6%),冠・頸・下肢動脈の>50%狭窄(25.4%, 25.5%),症候性CAD(8.8%, 8.7%),無症候性心虚血(26.6%, 26.3%),NYHA II~III度(両群とも14.0%),CKD(25.4%, 24.0%)。
≧60歳の危険因子保有例(17.9%, 19.4%):微量アルブミン尿・蛋白尿(10.7%, 11.9%),高血圧・左室肥大(5.3%, 5.4%),左室収縮・拡張不全(4.3%, 4.1%),ABI<0.9(2.4%, 2.5%)。
治療法 2週間のプラセボrun-in期間後,ランダム化。
liraglutide群(4,668例):1.8mg/日(または最大忍容量)皮下注+標準治療。
プラセボ群(4,672例):プラセボ+標準治療。
推奨目標血糖コントロール(HbA1c≦7%または個別化目標値)に達しない場合は,他の血糖降下薬(GLP-1受容体作動薬,DPP-4阻害薬,pramlintideを除く)を追加。治療期間は3.5~5年とし,その後安全性評価のため30日間追跡。
結果 治療期間中央値は3.5年,liraglutideの投与量中央値(非投与期間を含む)は1.78mg(四分位範囲1.54~1.79mg)。
[血糖コントロール]
liraglutide群のほうが併用血糖降下薬は少なかったが,HbA1cの低下は大きかった(36か月後の平均両群間差-0.4ポイント)。
[一次エンドポイント]
liraglutide群のプラセボ群に対する非劣性および優越性が認められた(608例[13.0%;3.4/100人・年] vs 694例[14.9%;3.9/100人・年]:ハザード比0.87;95%信頼区間0.78~0.97;非劣性マージン<1.3, p<0.001;優越性p=0.01])。
サブグループ解析では,liraglutide群の有効性はeGFR≧60mL/分/1.73m²の症例よりそれ以下の腎機能低下例のほうが大きく(交互作用p=0.01),≧60歳の危険因子保有例より≧50歳のCVD併発例のほうが大きかった(p=0.04)。
[その他]
一次エンドポイント+冠動脈血行再建術+不安定狭心症・心不全による入院(20.3% vs 22.7%, p=0.005),全死亡(8.2% vs 9.6%, p=0.02),CV死(4.7% vs 6.0%, p=0.007),MI(6.3% vs 7.3%, p=0.046),細小血管イベント(7.6% vs 8.9%, p=0.02),糖尿病性腎症(5.7% vs 7.2%, p=0.003)もliraglutide群のほうが少なかったが,非致死的MI(6.0% vs 6.8%),脳卒中(3.7% vs 4.3%)は両群同等であった。
liraglutide群はプラセボ群にくらべ36か月後の体重減少が2.3kg大きく,収縮期血圧が1.2mmHg低く,拡張期血圧が0.6mmHg高かった。心拍数は3.0拍/分増加した。
[有害事象]
有害事象(liraglutide群62.3% vs プラセボ群60.8%),重篤な有害事象(49.7% vs 50.4%)に有意な両群間差はなく,liraglutide群での低血糖(血漿グルコース<56mg/dL:43.7% vs 45.6%),重症(介助を要する)低血糖(2.4% vs 3.3%)の増加もみられなかった。
急性膵炎(0.4% vs 0.5%),良性腫瘍(3.6% vs 3.1%),悪性腫瘍(6.3% vs 6.0%),膵臓癌(0.3% vs 0.1%),前立腺癌,白血病に有意な群間差はなかったが,急性胆石(3.1% vs 1.9%, p<0.001),注射部位反応(0.7% vs 0.3%, p=0.002)はliraglutide群で有意に多かった。
有害事象による投与中止はliraglutide群のほうが有意に多く(9.5% vs 7.3%*),これは同群で悪心(1.6% vs 0.4%*),嘔吐(0.7% vs <0.1%*),下痢(0.6% vs 0.1%*),腹部不快感(0.2% vs 0%, p=0.002)などの消化器系事象が多かったためと考えられた。* p<0.001
★結論★CVリスクの高い2型糖尿病患者において,標準治療へのliraglutideの追加はプラセボの追加より初発のCV死,非致死的MI,脳卒中の複合エンドポイントが少なかった。
ClinicalTrials.gov No: NCT01179048
文献
  • [main]
  • Marso SP et al for the LEADER steering committee on behalf of the LEADER trial investigators: Liraglutide and cardiovascular outcomes in type 2 diabetes. N Engl J Med. 2016; 375: 311-22. PubMed

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収載年月2016.07