循環器トライアルデータベース

YUKAWA-2
Study of LDL-Cholesterol Reduction Using a Monoclonal PCSK9 Antibody in Japanese Patients with Advanced Cardiovascular Risk

目的 心血管(CV)リスクが高い日本人の高脂血症または混合型脂質異常症患者において,完全ヒト抗PCSK9モノクローナル抗体製剤evolocumab* 1回/2週(Q2W)または1回/月(QM)投与とatorvastatinとの併用療法の有効性を評価する。

一次エンドポイントは,LDL-C値のベースラインから第12週までの平均変化率と,第10週と第12週の平均値までの平均変化率。
* PCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)はセリンプロテアーゼの一種で,肝臓で合成され血中に分泌される蛋白である。LDL受容体に結合し,LDL受容体の分解を促進する蛋白として知られており,PCSK9の機能獲得型変異をもった先天性疾患がまさに家族性高コレステロール血症と表現型が同一であることから発見された。 evolocumabはこの蛋白に対するモノクローナル抗体製剤で,第II相試験においてLDL-Cの有意な低下と良好な安全性が示されている。
コメント PCSK9阻害薬の一つであるevolocumab (Evo) はすでにわが国でも使用可能となっているが,その基礎となっているのがわが国で行われた本研究である。基本の2週間に1回140mgの皮下注で約75%のLDL-Cの低下が認められている。興味深いのは,ベースラインで使用しているアトルバスタチンの多少(5mg, 20mg)に関わらずLDL-Cの低下率に差がなかったという点である。2つの意味があると思う。一つは,欧米の研究に比較すると若干LDL-Cの低下度が高いという点(論文の中では欧米の試験の範囲内としているが),もう一つはスタチンの使用量に依存しないということである。基本はスタチンの最大投与量下にEvoを併用することになっているが,わが国ではスタチンの使用量を増やすことにより副作用を発現する患者が多いことも念頭に入れると,重要な情報ということができる。また,Lp(a)の低下度も欧米のデータと比較すると高い。Lp(a)の低下機序についてはまだ不明の点が多いが,最近LDL粒子との競合という説があり,本試験でもLDL-Cの低下度が高いことからLDL粒子数も減少しており,Lp(a)の競合を緩和しているためLp(a)の低下度が高いという可能性も考察されている。今後,本格的なイベント抑制試験(Fourier試験)が2017年のACCで発表されると推定されているが,その結果がこのような日本における欧米との差を説明する可能性(つまり,有意差はないにしても日本人のイベント抑制効果が高い傾向を示す可能性,Lp(a)低下のイベント抑制に対する効果が示せる可能性)を期待するものである。(寺本
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設。
期間 追跡期間は12週。
登録期間は2013年10月7日~’14年6月25日。
対象患者 404例。20~85歳,日本動脈硬化学会基準によるCV高リスク,スクリーニング前4週以上に安定用量のスタチンを投与しており,他の脂質低下薬の変更もなく,スクリーニング時の空腹時LDL-C≧100mg/dL,空腹時トリグリセライド(TG)≦400mg/dLの患者。
除外基準:NYHA心機能分類III~IV度の心不全あるいはEF<30%;6か月以内のコントロール不良の重篤な不整脈;6か月以内の心筋梗塞,不安定狭心症,PCI,CABG,脳卒中など。
■患者背景:平均年齢(evolocumab群62歳,プラセボ群61歳),女性(40%, 39%),冠動脈疾患(CAD)(15%, 11%),末梢動脈疾患・脳血管疾患(12%, 14%),高血圧(75%, 72%),腹囲高値(両群とも68%),現喫煙(23%, 26%),家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体(6%, 5%),2型糖尿病(47%, 51%),メタボリックシンドローム(27%, 28%),保有CV危険因子≧2(56%, 58%),LDL-C(109mg/dL, 103mg/dL),リポ蛋白(a)*(14.2, 12.9mg/dL),HDL-C(56mg/dL, 58mg/dL),TG*(118mg/dL, 127mg/dL),アポリポ蛋白B(ApoB)(96mg/dL, 92mg/dL),PCSK9(362ng/mL, 356ng/mL)。* 中央値
治療法 run-in(プラセボ3回皮下注)後,atorvastatin(Ator)5mg/日群と20mg/日群にランダム化。4週間の脂質安定化期間を終えた患者をさらに下記の併用8群にランダム化。
Ator 5mg群:evolocumab(Evo)140mg Q2W群(50例),Evo 420mg QM群(50例),プラセボ(Pbo)Q2W群(49例),Pbo QM群(50例)。
Ator 20mg群:Evo 140mg Q2W群(51例),Evo 420mg QM群(51例),Pbo Q2W群(52例),Pbo QM群(51例)。
結果 [一次エンドポイント]
Evo群のPbo群と比較した第12週の平均LDL-C変化率(最小二乗平均値)は,Ator 5mg+Evo Q2W群:-74.9%, +Evo QM群:-69.9%, Ator 20mg+Evo Q2W群:-75.9%, +Evo QM群:-66.9%であった(すべてp<0.001)。
第10週と第12週の平均値の低下率も同等であった。
Q2W投与とQM投与の差はなく,サブグループ解析(年齢,性別,BMI,2型糖尿病,メタボリックシンドローム)の結果も同等であった。
[その他]
達成LDL-C(中央値)はEvo群28mg/dL, Pbo群97mg/dL。
Atorの用量を問わず,Evo群は全例がLDL-C<100mg/dLを達成,<70mg/dL達成率も高かった(96~98% vs Pbo群0~20%)。
Evo群は他の脂質の変化率も有意に大きかった(* p<0.001, ** p<0.01,*** p<0.05)。
ApoB:Ator 5mg+Evo Q2W群;-65.6%*,+Evo QM群;-57.2%*,Ator 20mg+Evo Q2W群;-60.4%*,+Evo QM群;-56.2%*
リポ蛋白(a):-50.1%*,-48.8%*,-52.7%*,-40.0%*
HDL-C:13.5%*,15.2%*,16.9%*,10.2%*
TG:-27.6%**,-20.0%*,-17.2%**,-16.9%***
Apo A1:7.3%**,8.9%*,9.1%*,8.6%*
[有害事象]
有害事象は両群同等(46.5% vs 51.0%),重篤な有害事象は少なく,EvoQ2W投与とQM投与の差もみられなかった。
主な有害事象は鼻咽頭炎(16.8% vs 17.8%),胃腸炎(3.0% vs 1.0%),咽頭炎(両群とも2.5%)など。
達成LDL-C<15mg/dL, <25mg/dL, <40mg/dLの患者(すべてEvo群)と,≧40mg/dLの患者(Pbo群全例+Evo群11例)とで,有害事象および臨床検査値に差はみられなかった。
★結論★安定用量のスタチンを投与している心血管リスクが高い日本人高脂血症患者において,LDL-Cはevolocumab群で著明に低下し忍容性も良好であった。
ClinicalTrials.gov No.:NCT01953328
文献
  • [main]
  • Kiyosue A et al: A phase 3 study of evolocumab (AMG 145) in statin-treated Japanese patients at high cardiovascular risk. Am J Cardiol. 2016; 117: 40-7. PubMed

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収載年月2016.08