循環器トライアルデータベース

ACT I
Asymptomatic Carotid Trial I

目的 無症候性の頸動脈狭窄に対する血行再建術については議論がわかれている。頸動脈分岐部狭窄患者を対象としたCREST試験では頸動脈内膜剥離術とステント留置術の有意差は示されなかったが,同試験には症候性,無症候性の両者が含まれており,無症候性患者で両治療が同等かを識別する統計学的検出力はなかった。
手術による合併症リスクが標準的な無症候性の高度頸動脈狭窄患者において,遠位塞栓防止デバイスを用いた頸動脈ステント留置術の頸動脈内膜剥離術に対する非劣性を検証する。

一次エンドポイントは,30日以内の死亡,脳卒中,心筋梗塞(MI)の複合エンドポイント,または1年以内の同側脳卒中。
コメント 本試験では頸動脈ステント留置術(CAS)が頸動脈内膜剥離術(CEA)に劣らないことが証明された。CASとCEAの効果が同等であれば,侵襲度の少ない血管内治療であるCASを選ぶ患者が現状よりさらに多くなることであろう。しかし,この試験結果を手放しで喜ぶわけにはいかない。脳卒中の発症率は危険因子の管理や抗血栓療法の進歩により年々低下している。頸動脈狭窄患者の脳卒中発症率も例外ではない。ところが,本試験では内科的治療群が存在しない。本試験の対象患者は内科的治療抵抗性の症候性頸動脈狭窄患者ではなく,無症候性頸動脈狭窄患者である。このような患者にCASやCEAが正当化されるのは最良の内科的治療のみよりも明らかに脳卒中予防効果が大きい場合に限定される。たとえば,経頭蓋ドップラーで微小塞栓信号を認める場合や,潰瘍病変,あるいは可動性プラークや不安定プラークを認める場合が考えられるが,これらの所見を認める症例でもCASやCEAが内科的治療のみより優れていることが無作為化比較試験で証明されているわけではない。最近では,著しいプラーク退縮効果が期待されるPCSK9のような生物学的製剤も登場しており,内科的治療の進歩はとどまるところを知らない。CASは内科的治療に上乗せして行われる高額な治療であり,医療経済的観点からも乱用されるべきではなく,血管内治療医は患者に内科的治療も含めて正確に情報を知らせる必要がある。(内山
デザイン 無作為割付け,多施設,intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は5年。
登録期間は2005年3月30日~’13年1月18日。
対象患者 1,453例。18~79歳,頸動脈ステント留置術・内膜剥離術適応,手術の合併症リスクが高くないと考えられる無症候性(180日以内に同側の脳卒中・一過性脳虚血発作・一過性黒内障を発症していない)の患者で,頸動脈分岐部に70~99%の狭窄を有し,対側頸動脈に>60%の狭窄のないもの。試験施設と医師は,American Board of Medical Specialtiesの認定・訓練,医師の手技実績(ステント留置・内膜剥離術>25例)と最新の成績に基づいて選出。
■患者背景:平均年齢(ステント群67.7歳,頸動脈内膜剥術群67.9歳),≧65歳(70.2%, 71.7%),男性(61.2%, 56.9%),白人(90.4%, 89.8%),高血圧(90.6%, 89.6%),薬物治療を要する高脂血症(90.0%, 87.9%),喫煙歴(73.7%, 71.2%),現喫煙(24.4%, 19.5%),糖尿病(35.6%, 32.4%),冠動脈疾患(53.4%, 51.1%),>30日前のMI(19.2%, 17.6%),心不整脈(10.6%, 9.1%),弁膜症(8.7%, 8.2%),他の末梢血管疾患(35.9%, 34.1%),対側頸動脈疾患(40.5%, 44.5%)。
病変背景:狭窄率(73.7%, 73.9%),病変長(19.0mm, 18.0mm),潰瘍形成(16.2%, 14.5%)。
治療法 各施設,少なくとも2例の患者で試験デバイスの習熟度を証明(lead-in期間)後,ステント群3,剥離術群1の割合でランダム化し,2週間以内に試験治療を実施。
ステント群(1,089例):遠位塞栓防止デバイス(Emboshield, Emboshield Pro, Emboshield NAV6, Abbott Vascular社)+closed-cell nitinolステント(Xact, Abbott Vascular社)留置。
頸動脈内膜剥離術群(364例):麻酔の種類,パッチ・シャントの使用,術中のモニタリングは医師に一任。
全例にheparin,bivalirudinによる抗凝固療法を実施(ステント群では目標活性化凝固時間>250秒)。aspirin 325mg/日を手技3日前より開始し,手技後は無期限投与。ステント群ではclopidogrelを手技3日前より開始し,30日間継続投与した。
結果 [早期終了試験]
予定症例数は1,658例だったが,登録の遅れにより2013年2月に早期終了。
追跡終了は30日後1,391例,1年後1,206例,5年後328例。
[一次エンドポイント]
Kaplan-Meier推定による1年後のエンドポイント発生率において,頸動脈ステント群の頸動脈内膜剥離術群に対する非劣性が認められた(3.8% vs 3.4%:群間差0.4ポイント;95%信頼区間上限2.27ポイント;非劣性マージン3ポイント[非劣性p=0.01])。
手技後30日の死亡,脳卒中,MI(3.3% vs 2.6%),死亡,脳卒中(2.9% vs 1.7%),死亡,重大な脳卒中(0.6% vs 0.6%)に両群間差はみられなかった。
[二次エンドポイント]
手技後30日の合併症(頭蓋内神経障害,末梢神経障害,血管障害,脳出血以外の出血,頸部切開部/大腿穿刺部位の出血,その他)は2.8% vs 4.7%(p=0.13),脳神経障害は0.1% vs 1.1%(p=0.02)。
臨床症状による標的病変再血行再建術の回避率は,6か月後が99.8% vs 99.7%(p=0.72),1年後が99.4% vs 97.4%(p=0.005)。
5年後の推定生存率(87.1% vs 89.4%),手技に関連しない同側脳卒中回避率(97.8% vs 97.3%),脳卒中回避率(93.1% vs 94.7%)はいずれも両群同等であった。
★結論★手術による合併症リスクが高くない高度無症候性頸動脈狭窄患者において,1年後の複合エンドポイントでの頸動脈ステント留置術の頸動脈内膜剥離術に対する非劣性が示された。5年後の手技に関連しない脳卒中,全脳卒中,生存率にも有意差は認められなかった。
ClinicalTrials.Gov No:NCT00106938
文献
  • [main]
  • Rosenfield K et al fpr the ACT I Investigators: Randomized trial of stent versus surgery for asymptomatic carotid stenosis. N Engl J Med. 2016; 374: 1011-20. PubMed
    Spence JD and Naylor AR: Endarterectomy, stenting, or neither for asymptomatic carotid-artery stenosis. N Engl J Med. 2016; 374: 1087-8. PubMed

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収載年月2016.08