循環器トライアルデータベース

ODYSSEY MONO

目的 PCSK9阻害薬は他の脂質低下薬との併用でLDL-Cを著明に低下させる。alirocumabの第II相試験はスタチン投与例で実施されたが,スタチンはPCSK9レベルを増加させるため,PCSK9の薬物動態を明確にするためには,alirocumab単剤療法の検討も必要である。
スタチンまたは他の脂質低下薬を投与していない心血管(CV)リスク中等度(10年致死的CVイベントリスク1%~<5%)の高コレステロール血症患者において,PCSK9阻害薬alirocumab単剤療法の有効性と安全性をezetimibeと比較する。

一次エンドポイントは,第24週の算出LDL-C値のベースラインからの変化率。
コメント 現在わが国では,PCSK9抗体薬はスタチンの最大投与量に追加して用いることが承認されている。しかし,スタチン投与により何らかの筋肉症状を訴える患者は意外に多く,わが国でも10%弱に認められている。家族性高コレステロール血症では,心血管疾患予防のためにはLDL-Cを50%以上低下させることが必須と考えられている。しかし,筋肉症状のためスタチンの最大投与ができない患者がいることも事実である。本試験は,そのような患者に対しスタチンを用いないでPCSK9抗体薬(alirocumab)を用いた時の有効性をみた試験であり,このような患者の福音になるものと思われる。
興味深いことは,通常スタチンにより血中PCSK9濃度が上昇することから併用がより効果的と考えられていたが,実際にはLDL-Cの低下度にはほとんど差が認められなかったことである。また,PCSK9抗体薬ではLp(a)の有意な低下をもたらすことも特徴としてあげられていたが,本試験では有意な低下が認められていない点も興味深い。Discussionでは,これまでの試験のvariationの範囲内としているが,もしかするとスタチンとの併用でLp(a)が低下することも考えられ,今後Lp(a)低下を説明する糸口が見つかるかもしれない。より,大規模な試験が行われることを望む。(寺本
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(米国,ベルギー,フィンランド,オランダの8施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は32週。
試験期間は2012年7月~’13年7月。
対象患者 103例。≧18歳,LDL-C 100~190mg/dL,European Systematic Coronary Risk Estimationによる10年致死的CVリスク1%~<5%(LDL-C低下薬による治療を検討してよいレベル)の患者で,スクリーニング前≧4週間にスタチン・他の脂質低下薬を投与されていないもの。
■患者背景:平均年齢(alirocumab群60.8歳,ezetimibe群59.6歳),男性(53.8%, 52.9%),白人(88.5%, 92.2%),BMI(30.1kg/m², 28.4kg/m²),糖尿病(5.8%, 2.0%),10年致死的CVDリスク(2.97%, 2.68%),LDL-C(141.1mg/dL, 138.3mg/dL),アポリポ蛋白(Apo)B(両群とも104.3mg/dL),総コレステロール(221.7mg/dL, 223.9mg/dL),non-HDL-C(167.4mg/dL, 164.0mg/dL),リポ蛋白(Lp)(a)中央値(13.0, 16.0mg/dL),トリグリセライド(TG)中央値(119.0mg/dL, 117.0mg/dL), HDL-C(54.3mg/dL, 59.9mg/dL), Apo A-1(153.1mg/dL, 163.8mg/dL)。
治療法 alirocumab Q2W群(52例):75mg 1回/2週(Q2W)皮下投与+ezetimibeプラセボ錠経口投与。プロトコル上は,第8週にLDL-C≧100mg/dLの場合は第12週に150mg Q2Wへ増量(実際は≧70mg/dLで増量が行われていたことが解析時に判明)。
ezetimibe群(51例):10mg/日経口投与+alirocumabプラセボ注射液Q2W皮下投与。
全例にガイドラインに準じた食事療法を実施。治療期間は24週,その後8週間追跡。
結果 [治療の内訳]
すべての投与を自己投与した患者はalirocumab群92%,ezetimibe群94%,その他の患者は一部の投与を他の人に依頼した。24週間の治療終了はそれぞれ85%, 86%。
alirocumab群の150mg Q2Wへの増量は14例(うち13例がLDL-C 70~<100mg/dLでの増量)。
[一次エンドポイント]
第24週のLDL-Cの低下率(最小二乗平均値)はalirocumab群が有意に大きかった(-47.2% vs ezetimibe群-15.6%:群間差-31.6%, p<0.0001)。
on-treatment解析の結果も同様であった(-54.1% vs -17.2%:-36.9%, p<0.0001)。
LDL-Cは第4週までに急速に低下し,その後低下を維持した。
alirocumab群でLDL-C<100mg/dLにもかかわらず増量した13例の増量後のLDL-C値を除外して解析した結果も,変わらなかった。
[その他]
第12週にLDL-Cが≧50%低下した患者の割合は58% vs 3%。
Apo B(群間差-25.8%),総コレステロール(-18.7%),non-HDL-C(-25.5%)もalirocumab群でezetimibe群にくらべ有意に低下したが(p<0.0001),Lp(a),TGの低下とHDL-Cの増加には有意な両群間差はみられなかった。
[有害事象]
有害事象発現率は69.2% vs 78.4%,重篤な有害事象は両群とも1例(1.9% vs 2.0%),有害事象による投与中止は9.6% vs 7.8%,死亡例はなかった。
主な有害事象は鼻咽頭炎(23.1% vs 15.7%),下痢(11.5% vs 3.9%),インフルエンザ(11.5% vs 5.9%)などで,筋肉関連事象は3.8% vs 3.9%,注射部位反応は2% vs 4%。
alirocumab群の3例でLDL-C値が<25mg/dLに低下したが,安全性の問題はなかった。
抗薬物抗体の発現はalirocumab群の6例(12%)に認められた。
★結論★脂質低下治療を受けていない心血管リスク中等度の高コレステロール血症患者において,alirocumab 75mg Q2W群ではezetimibe群よりもLDL-Cが有意に低下し,大半の患者で≧50%低下した。有害事象は両群で同等であった。
ClinicalTrials gov No: NCT01644474
文献
  • [main]
  • Roth EM et al: Monotherapy with the PCSK9 inhibitor alirocumab versus ezetimibe in patients with hypercholesterolemia: results of a 24 week, double-blind, randomized Phase 3 trial. Int J Cardiol. 2014; 176: 55-61. PubMed

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収載年月2016.07