循環器トライアルデータベース

SAFEHEART
Spanish Familial Hypercholesterolemia Cohort Study

目的 家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合体は,早発性アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)に関連するもっとも一般的な遺伝疾患で,ASCVD高リスクと考えられており,世界的なガイドラインでは至適LDL-Cを<100mg/dL(CVD既往例は<70mg/dLあるいはLDL-C≧50%の低下)としている。脂質低下治療(LLT)はここ数年で進歩したが,多くの患者は至適LDL-C値を達成できておらず,早発性ASCVDのリスクは高いままである。しかし,実地臨床での目標LDL-C達成率とLLTの関係についての長期研究に基づいた情報はほとんどない。
FH患者の予後因子,治療,ASCVD発症メカニズムの解明を目的として開始されたスペインの登録研究SAFEHERATにおいて,FH患者の目標LDL-C達成率とLLTとの関連性,さらに目標達成の予測因子を検証した。
コメント J Am Coll Cardiol. 2016; 67: 1278-85.へのコメント
スペインにおける大規模な家族性高コレステロール血症(FH)の登録型の調査である。FHの診断は,遺伝子的に診断されているという意味で大変示唆に富む報告である。内容的には,当然のことながらスタチン大量投与とエゼチミブの併用療法が最も有効でありながら,目標LDL-C<100mg/dLに到達しているのは22.2%と極めて低く,到達値も137mg/dLとほぼ我が国と同等のコントロール状況である。これは,オランダの21%,フランスの10.4%と比較しても大同小異ということができよう。一方で,Stein EらのFHのランダム比較試験でアトルバスタチン40mg+エゼチミブとアトルバスタチン40mgの単独療法を行った群で,それぞれLDL-Cの目標値達成率は17%対4%と報告しており(Am Heart J 2004; 148: 447-55. PubMed),アメリカでも同様の傾向がみられる。昨年報告されたIMPROVE-ITでも併用療法が有意に心血管病の予防効果があることが示され,欧米のFH治療のガイドラインにスタチン大量療法の次に,エゼチミブの併用療法が勧められている。昨年から(我が国では今年から)PCSK9阻害薬の併用療法が認められることから,目標値の達成率の飛躍的向上は望めるものの,費用対効果で考えていく必要のある治療法ということができよう。(寺本
デザイン 登録研究,多施設。
期間 平均追跡期間は5.1年。
登録期間は2004年1月~’13年11月。
参加者 2,170例。≧18歳,遺伝子的に定義されたFHヘテロ接合体患者と遺伝子的に診断された親族。
■患者背景:年齢*45.0歳,男性45.5%,2型糖尿病4.5%,高血圧14.4%,現喫煙25.8%,ASCVD既往12.8%,BMI* 26.0kg/m²,総コレステロール(TC)* 234.0mg/dL,LDL-C* 163.0mg/dL,HDL-C* 49.0mg/dL,トリグリセライド(TG)* 83.0mg/dL,non–HDL-C* 183.0mg/dL,リポ蛋白(a)(Lp(a))* 23.5mg/dL,LDL-CLp(a)* 149.1mg/dL,目標LDL-C達成率3.5%,目標LDL-CLp(a)達成率10.1%,LDL受容体の機能喪失型変異47.3%,プライマリケア受診38.7%。* 中央値
調査方法 スタチン最大用量はatorvastatin 40~80mg/日またはrosuvastatin 20~40mg/日,最大併用療法はスタチン最大用量+ezetimibe。その他のスタチンはこれらと同等の効力を持つ用量とし,最大LLTはsimvastatin 20・40・80mg/日+ezetimibe, pravastatin 40mg/日+ezetimibe, fluvastatin 80mg/日+ezetimibe, atorvastatin 40・80mg/日±ezetimibe, atorvastatin 10・20mg/日+ezetimibe, rosuvastatin 20・40mg/日±ezetimibe, rosuvastatin 10mg/日+ezetimibe, pitavastatin 4mg/日+ezetimibeと定義(ezetimibeはすべて10mg/日)。
結果 [LLTと脂質値の変化]
スタチン,スタチン最大用量,ezetimibe,最大併用療法,最大LLTの使用率は有意に増加した。
もっとも処方率が高かったスタチンはatorvastatin(登録時46.6%→追跡時38.5%)で,rosuvastatinは増加(12.5%→ 35.4%),フィブラート系・胆汁酸吸着薬の処方は少なく(6.08%→ 4.88%),ezetimibe単剤療法は1.34%→ 0.83%であった。
血漿TC(登録時:234.0→追跡時:210.0mg/dL), LDL-C(163.0→ 137.0mg/dL), non–HDL-C(183.0→ 154.0mg/dL)は低下し,HDL-Cは増加した(49.0→ 53.0mg/dL)(すべてp<0.001)。
[目標達成率]
目標LDL-C値達成率は,ASCVD既往例では10%未満だったものの有意に増加(<70mg/dL:登録時1.1%→追跡時4.7%, <100mg/dL:11.2%→ 22.4%),ASCVD非既往例でも増加した(<100mg/dL:3.8%→ 9.6%, <115mg/dL:8.6%→ 22.2%)。
[目標達成の予測因子]
多変量解析で目標LDL-C達成と有意に関連した因子は,2型糖尿病(オッズ比3.70;95%信頼区間1.90~7.24),ASCVD既往(0.32;0.15~0.68),LDL受容体のdefective mutations(2.01;1.38~2.93), ezetimibe使用(1.91;1.27~2.87)であった。
★結論★強力な脂質低下治療にもかかわらず,多くのFH患者の血漿LDL-C値は高いままであり,目標達成率も低かった。目標LDL-C達成の予測因子は,LDL受容体の変異の種類,ezetimibeの使用,糖尿病合併,ASCVDの既往であった。

[主な結果]
  • Perez de Isla L et al for the SAFEHEART investigators: Attainment of LDL-cholesterol treatment goals in patients with familial hypercholesterolemia: 5-year SAFEHEART registry follow-up. J Am Coll Cardiol. 2016; 67: 1278-85. PubMed
  • 家族性高コレステロール血症患者におけるASCVD発症リスクを予測するSAFEHEART risk equation(年齢,男性,ASCVD既往,血圧高値,高BMI,現喫煙,LDL-C,LP(a))。
    アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の既往を問わず,家族性高コレステロール血症患者におけるASCVD発症予測因子を検討した結果。
    2004年1月~’15年10月に登録し,平均5.5年追跡した2,404例(平均年齢45.5歳,男性45.2%,プライマリケア施設での追跡46.6%)。脂質低下治療(LLT)例84.2%で,スタチン最大用量投与例(39.2%)は追跡期間に55.2%に増加し,ezetimibe投与例(37.5%→59.0%),ezetimibe最大用量併用例(22.8%→40.5%),最大用量LLT例(51.9%→71.9%)も増加。LDL-Cは19.1%有意に低下(177.8→143.9mg/dL)し,ASCVD既往例(12.8%)の目標(LDL-C<70mg/dL)達成例(3.3%→8.1%),非既往例(<100mg/dL)の達成例(4.6%→10.5%)が増加した。
    ASCVD発症は,致死例12例(0.5%),非致死例が122例(5.1%)。ASCVDの独立した予測因子は,年齢,男性,ASCVD既往,血圧高値,高BMI,現喫煙,LDL-C値,LP(a)値(Harrell’s c-index 0.85)。これらの因子を使用したSAFEHEART risk equationの10年ASCVD予測能のHarrell’s c統計量は0.81(10年リスク推定7.53%),bootstrap法による内的妥当性はoveroptimism 0.003。個々のリスク推定は登録前の各ASCVD非既往をSAFEHEART risk equation,modified Framingham risk equation, ACC/ AHA ASCVD Pooled Cohort Risk Equationsを使用して推定したが,Harrell’s c統計量はそれぞれ0.78(7.17%, p=0.023), 0.8(6.0%, p=0.045)で,SAFEHEART risk equationと有意差がみられた(Pérez de Isla L et al: Predicting cardiovascular events in familial hypercholesterolemia: the SAFEHEART registry (Spanish familial hypercholesterolemia cohort study). Circulation. 2017; 135: 2133-44.)。 PubMed

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収載年月2016.06
更新年月2017.08