循環器トライアルデータベース

FIRE AND ICE

目的 薬物治療抵抗性の発作性心房細動(PAF)の治療にはカテーテルアブレーションによる肺静脈隔離が推奨されている。最も一般的なのはポイントごとに熱で細胞を壊死させる高周波アブレーションであるが,バルーンを使用して1ステップで冷凍により細胞を壊死させるクライオバルーンアブレーションも使用されている。これまで両者の比較は小規模試験でしか行われていなかった。
薬物治療抵抗性のPAF患者において,クライオバルーンアブレーションと高周波アブレーションを比較する(非劣性試験)。

有効性の一次エンドポイントは,90日(ブランキング期間)後以降の初発の臨床的不成功(心房細動[AF]再発,心房粗動・頻拍,抗不整脈薬使用,アブレーション再施行)。
安全性の一次エンドポイントは,全死亡,脳卒中・一過性脳虚血発作(TIA),重篤な治療関連有害事象の複合エンドポイント。
コメント 新しいAFアブレーション手技であるクライオアブレーションの有効性と安全性について,標準的な高周波アブレーションと多施設無作為化試験で比較した。多くの症例を対象に,無作為割付けで検討した初めての研究である。高周波アブレーションはポイントごとに焼灼するという煩雑性があるが,クライオアブレーションは1回で1本の肺静脈隔離ができるという簡便性が優れている。ただし,肺静脈以外の不整脈基質へのアブレーションには,構造上限界がある。今後,クライオアブレーション器具の改良,術者の経験の増大によって,手技時間や透視時間のさらなる短縮が期待される。横隔神経への障害を減らす工夫,発症後の経過の解明が残された課題である。(井上
デザイン PROBE(prospective, randomized, open, blinded endpoints),多施設(8か国16施設),modified intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は1.5年。
登録期間は2012年1月19日~’15年1月27日。
対象患者 750例。18~75歳,≧1剤のクラスI・IIIの抗不整脈薬またはβ遮断薬治療に抵抗性の症候性PAF患者。
除外基準:人工弁患者,左房アブレーションあるいは手術歴,不安定狭心症,3か月以内の心筋梗塞,症候性頸動脈狭窄,6か月以内の脳卒中あるいはTIA,NYHA心機能分類III~IV度のうっ血性心不全など。
■患者背景:平均年齢(クライオバルーン群59.9歳,高周波群60.1歳),男性(59%, 63%),PAF診断後の期間(4.6年,4.7年),BMI(28.0, 27.8kg/m²),左房径(40.8, 40.6mm),血圧(133.6/78.8, 134.8/78.9mmHg),CHA2DS2-VAScスコア(1.9, 1.8),NYHA(心不全なし:70.3%, 73.9%;I度:12.6%, 10.7%,II度:17. 1%, 15.5%),直流カルディオバージョン(DCCV)既往(23.0%, 23.4%),冠動脈疾患(CAD)(8.3%, 8.5%),慢性腎臓病(3.5%, 1.1%, p<0.05),高血圧(57.5%, 58.8%),高脂血症(30.9%, 28.3%),2型糖尿病(9.9%, 5.9%, p<0.05),服用薬(抗不整脈薬:63.1%, 59.8%,ACE阻害薬:19.5%, 23.7%,β遮断薬:62.8%, 67.3%,抗凝固薬:75.4%, 72.9%)。
治療法 クライオバルーンアブレーション群(374例):第一,第二世代各1種を使用。
高周波アブレーション群(376例):第一世代2種,第二世代1種を使用。
手技後の受診時にECG,24時間ホルターECGを実施し,患者には電話伝送ECGを毎週1回と不整脈発生時に送信するよう指示。
結果 [有効性の一次エンドポイント]
クライオバルーン群の高周波アブレーション群に対する非劣性が示された(138例[Kaplan- Meierによる推定1年発症率34.6%] vs 143例[35.9%]:ハザード比0.96;95%信頼区間0.76~1.22;非劣性マージン1.43, p<0.001)。
心房性不整脈再発は80例 vs 87例,抗不整脈薬の使用は51例 vs 49例,アブレーション再施行は両群7例。
per-protocol解析の結果も同様で,優越性解析では有意な両群間差は認められなかった。
[安全性の一次エンドポイント]
有意差は認められなかった(40例[10.2%] vs 51例[12.8%]:0.78;0.52~1.18, p=0.24)。
全死亡はクライオバルーン群の2例(非心臓関連死と原因不明死)のみ,脳卒中・TIAは両群2例,心房性不整脈は8例 vs 13例(うち心房粗動・頻拍:3例 vs 10例)。
不整脈に関連しない重篤な有害事象は28例(7.5%)vs 36例(9.6%)で,最も多かったのは鼠径部合併症(7例[1.9%]vs 16例[4.3%])と横隔神経損傷(退院時:10例[2.7%]vs 0例,p=0.001)。心房食道瘻,肺静脈狭窄は認められなかった。
[その他]
クライオバルーン群は総手技時間(124分 vs 141分),手技中のカテーテル左房滞留時間(92分 vs 109分)が短く,総X線透視時間(22分 vs 17分)が長かった(すべてp<0.001)。
[サブグループ]
有意な交互作用が認められたサブグループはなく,使用カテーテル4種による結果の違いもみられなかった。
★結論★薬物治療抵抗性の発作性心房細動患者に対する治療の有効性において,クライオバルーンアブレーションの高周波アブレーションに対する非劣性が示され,安全性についても有意な両群間差は認められなかった。
ClinicalTrials.gov No.: NCT01490814

関連トライアル:FreezeAF
文献
  • [main]
  • Kuck KH et al for the FIRE AND ICE investigators: Cryoballoon or radiofrequency ablation for paroxysmal atrial fibrillation. N Engl J Med. 2016; 374: 2235-45. Epub 2016 Apr 4. PubMed

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収載年月2016.04