循環器トライアルデータベース

PARTNER 2A
Placement of Aortic Transcatheter Valves 2A

目的 施行数の増加やデバイス(経カテーテル弁システム)の進歩により,経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)は世界的に低度~中等度リスク患者に施行される傾向にある。
症候性重症大動脈弁狭窄(AS)患者において,第2世代デバイスを使用したTAVRと外科的大動脈弁置換術(AVR)を比較する。本報は手術リスク中等度のTAVR・AVR適応患者(PARTNER 2コホートA)の報告。

一次エンドポイントは,2年後の全死亡あるいは介助が必要な脳卒中(modified Rankin スコア≧2)。
コメント N Engl J Med. 2016; 374: 1609-20. へのコメント
PARTNER 2 Cohort A試験では,中等度リスク (STS Score 4.0%-8.0%) の重症大動脈弁狭窄症患者において,術後2年の総死亡/障害を伴う脳卒中のエンドポイントについて,経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)の外科的大動脈弁置換術(SAVR)に対する非劣性が示された。
大動脈弁狭窄症治療変革の足音がますます大きくなって来ている。本試験では特に大腿動脈アプローチが可能と判断されたグループでは,一次エンドポイントについてSAVRに対するTAVRの優越性が示唆されている。本試験では第2世代のBalloon Expandable TAVR Device が使用されているが,今後のデバイスの進歩によりTAVR治療成績はさらに向上し,大腿動脈アプローチが可能な症例の比率も増加すると予想される。実際に第3世代のBalloon Expandable TAVR Device (SAPIEN 3) を用いたTAVR症例と,今回のPARTNER 2 SAVR群のpropensity score analysis では,1年の総死亡/脳卒中/中等度以上の大動脈弁逆流のエンドポイントについて両群間の発生率の差は(-9.2%, 95%CI:-13.0--15.4,P<0.0001),SAVRに対するTAVRの明らかな優越性が示されている(Lancet. E-pub 2016 Apr 1. PubMed)。TAVR弁の10年の耐久性が示され,低リスク患者における試験でSAVRに対するTAVRの非劣性/優越性が示されれば,大腿動脈アプローチが可能な症例ではTAVRが重症大動脈弁狭窄症患者の第一選択の治療法と位置づけられる日も遠くないと思われる。
一方,TAVRの普及は重症大動脈弁狭窄症患者における大動脈弁置換術の適応,治療時期にも大きなインパクトを与えると考えられる。現在のガイドラインでは,無症状の重症大動脈弁狭窄症患者においては,超重症症例(最高大動脈弁通過血流速度>5m/s)あるいは心機能低下症例以外は自覚症状が出現するまで慎重に経過観察してAVRを待つ,いわゆる ”Watchful Waiting Strategy” が推奨されている。我々は京都大学関連施設における重症大動脈弁狭窄症患者の登録研究(CURRENT AS Registry)において,無症状の重症大動脈弁狭窄症患者で保存的に経過観察された症例はAVR施行された患者にくらべ極めて予後不良であることを報告し(Taniguchi T, et al. J Am Coll Cardiol. 2015; 66: 2827-38. PubMed),無症状の重症大動脈弁狭窄症患者におけるAVR適応を再考すべきという議論が盛り上がっている。ただ実地臨床においては無症状の重症大動脈弁狭窄症患者にSAVRを勧めても,手術侵襲の大きさのため,通常,患者の受け入れは極めて困難である。しかしながらTAVRが局所麻酔,穿刺,経食道エコーなしのPCI-like procedure となったあかつきには,TAVRは多くの無症状重症大動脈弁狭窄症患者に受け入れられる可能性が高いと考えている。(木村
デザイン 無作為割付け,多施設(米国,カナダの57施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は2年。
登録期間は2011年12月~’13年11月。
対象患者 2,032例。重症AS(平均大動脈弁圧較差>40mmHgあるいは最高大動脈弁通過血流速度>4.0m/秒,大動脈弁弁口面積[aortic-valve area: AVA]≦0.8cm²,または有効弁口面積インデックス<0.5cm²/m²),症候性(NYHA心機能分類≧II度),ハートチームの判断による中等度リスク(STS[Society of Thoracic Surgeons]スコア≧4%,または<4%でSTSスコアのアルゴリズムに含まれない重要な併存疾患のため中等度リスクと判断されたもの)のTAVR・AVR適応患者。
除外基準:1か月以内の急性心筋梗塞,先天性一尖弁・二尖弁または非石灰化弁,複雑性冠動脈疾患(CAD)(非保護左主幹部病変,SYNTAXスコア>32)など。
■患者背景:平均年齢(TAVR群81.5歳,AVR群81.7歳),男性(54.2%, 54.8%),BMI(28.6, 28.3kg/m²),STSリスクスコア(両群とも5.8%;<4.0%;6.7%, 4.0~8.0%;81.3%, >8.0%;12.0%),NYHA心機能分類III~IV度(77.3%, 76.1%),CAD(69.2%, 66.5%),既往:心筋梗塞(18.3%, 17.5%);CABG(23.6%, 25.6%);PCI(27.1%, 27.6%);バルーン大動脈弁形成術(5.0%, 4.9%),脳血管疾患(32.1%, 31.0%),末梢血管疾患(27.9%, 32.9%[p=0.02]),糖尿病(37.7%, 34.2%),慢性閉塞性肺疾患(31.8%, 30.0%),クレアチニン>2mg/dL(5.0%, 5.2%),心房細動(AF)(31.0%, 35.2%[p=0.05]),永久ペースメーカー植込み(11.7%, 12.0%),フレイル:5m歩行時間>7秒(44.4%, 46.4%);血清アルブミン<3.5g/dL(15.2%, 14.7%),EF(56.2%, 55.3%),AVA(両群とも0.7cm²),大動脈弁圧較差(44.9, 44.6mmHg),中等度~高度の僧帽弁逆流(16.8%, 19.1%)。
治療法 画像診断により,経大腿動脈アクセスコホート(1,550例)と経胸的(経心尖・経大動脈)アクセスコホート(482例)に層別後,ランダム化。
TAVR群(1,011例):SAPIEN XT生体弁システム*(Edwards Lifesciences社)を使用。
経胸的アクセスコホートは236例(経心尖;174例,経大動脈;62例),経大腿動脈アクセスコホートは775例。
* 第1世代システムにくらべると,より薄いストラットのコバルトクロム合金フレームで,弁サイズ29mmが加わり,ロープロファイルのデリバリーシステムを使用。
AVR群(1,021例):経胸的アクセスコホートは246例,経大腿動脈アクセスコホートは775例。
全例にaspirin 81mg,clopidogrel(≧300mg)を前投与,周術期にheparinを投与した。aspirinは無期限,clopidogrelは≧1か月継続投与。
結果 ランダム化された治療を施行しなかったものは94例(4.6%)で,TAVR群17例,AVR群77例。ランダム化後のAVRを受けない決断による脱落が主な理由。
[手技関連]
手技中,あるいは手技後3日以内に18例が死亡(TAVR群10例,AVR群8例)。
手技を開始したものの弁を植込まなかったものは28例(20例,8例)で,経食道心エコー図検査による不適合,大動脈石灰化などの理由によるものであった。
TAVR群の10/994例(0.1%)が弁塞栓,2度目の弁植込みが4例,手技不成功が2例,AVRへの変更が3例,死亡1例。中等度~重度の大動脈逆流のため,valve in valveを22例(2.2%)に施行。周術期のPCI施行は39例(3.9%)。
AVR群の86/944例(9.1%)が周術期に予定・予定外の手技が必要となった。137例(14.5%)がCABGを施行。
[一次エンドポイント]
両群間に有意差はなく,TAVR群のAVR群に対する非劣性が認められた(カプランマイヤー推定発症率はTAVR群192例[19.3%] vs AVR群202例[21.1%]:ハザード比0.89;95%信頼区間0.73~1.09, p=0.25)。
TAVR群のAVR群とくらべた2年後のリスク比は0.92(0.77~1.09);両側95%信頼区間上限<1.20,非劣性のp=0.001で非劣性が認められた。as-treated解析でも同群の非劣性が示された。
as-treated解析の結果も同様であった(18.9% vs 21.0%:0.87;0.71~1.07, p=0.18)。
経大腿動脈アクセスコホートでは,TAVR群のほうがイベントが少ない傾向がみられたが(16.8% vs 20.4%:0.79;0.62~1.00, p=0.05),経胸的アクセスコホートでは両群間差はなかった。
[全死亡と介助が必要な脳卒中]
全死亡(16.7% vs 18.0%),介助が必要な脳卒中(6.2% vs 6.4%)のいずれも両群同等であった。
30日後(6.1% vs 8.0%),1年後(14.5% vs 16.4%)でも,有意な両群間差はなかった。
多変量解析の結果,TAVR群における死亡の有意な予測因子はCABG・MI既往,STSリスクスコア,AF,非経大腿動脈アクセス,AVR群ではアルブミン<3.5g/dL,AF,STSリスクスコアで,TAVR,AVRでちがった。
介助が必要な脳卒中,生命にかかわる出血,急性腎障害,主要血管合併症は,両群で時間依存的に有意な死亡リスク上昇と関係がみられた。
[その他]
30日後の主要血管合併症はTAVR群のほうが多かった(7.9% vs 5.0%,p=0.008)。しかし,生命にかかわる出血(10.4% vs 43.4%, p<0.001),急性腎障害(1.3% vs 3.1%, p=0.006),新規発症AF(9.1% vs 26.4%, p<0.001)は同群が少なかった。再入院(19.6% vs 17.3%),永久ペースメーカー植込み(8.55 vs 6.9%)に有意な群間差はなかった。
30日後のNYHA I~II度への有意な症状の改善は両群でみられ,症状の改善は2年間持続した。TAVR群では30日後の心臓症状が有意に少なかったが,その後は頻度に両群間差はなかった。ICU入院期間(中央値:2日 vs 4日),全体の入院期間(中央値6日 vs 9日)は同群で有意に短かった。
[心エコー所見]
両群で30日後のAVA,EFが有意に増加し,大動脈弁圧較差が有意に減少し,これらの変化は2年間持続した。AVA,大動脈弁圧較差の改善はTAVR群のほうが大きかった。しかし,同群では中等度~重度の弁周囲逆流が多く(3.7%),中等度~重度の弁周囲逆流がみられた症例では逆流のなかった,あるいは軽度逆流合併症例にくらべ2年後の死亡リスクが上昇した。
★結論★中等度リスクの患者において,死亡,介助の必要な脳卒中についてTAVR群のAVR群に対する非劣性が示された。
ClinicalTrials gov No: NCT01314313
文献
  • [main]
  • Leon MB, et al for the PARTNER 2 Investigators: Transcatheter or Surgical Aortic-Valve Replacement in Intermediate-Risk Patients. N Engl J Med. 2016; 374: 1609-20. PubMed
    Moat NE: Will TAVR Become the Predominant Method for Treating Severe Aortic Stenosis? N Engl J Med. 2016; 374: 1682-3. PubMed
  • [substudy]
  • 中等度リスクの重症AS患者に対する手技5年後の生体弁評価において,SAVRに比べて第二世代の人工弁(SAPIEN-XT)は構造的劣化の発生率が高い一方,第三世代の人工弁(SAPIEN 3)では発生率は同等。
    対象は,PARTNER 2A試験参加者およびPARTNER 2 SAPIEN 3 Observational studyコホート。SAPIEN 3とSAVRの比較は,PARTNER 2A試験のSAVRと傾向スコアによるマッチングを行い解析。
    一次エンドポイントは,手技5年後の弁の構造的劣化(SVD)の発生率[心エコーによる経過観察中のSVDに関連する血行動態的劣化および/または弁の機能不全(BVF)の複合]。SVDのステージは,VARC-3基準によった。
    [一次エンドポイント:手技5年後のSVD発生率(心エコーによる経過観察中のSVDに関連する血行動態的劣化および/またはBVFの複合)]
    〈第二世代SAPIEN-XTとSAVRの比較〉
    • 5年後のSVD累積発生率は,SAPIEN-XTで有意に高かった(SAPIEN-XT 9.5% vs. SAVR 3.5%; P <0.001)。
    • 5年後の100人・年あたりのSVDおよびBVFの曝露調整発生率もSAVRに比べ,SAPIEN-XTで高かった(SVD: 1.61±0.24% vs. 0.63±0.16%,BVF: 0.58±0.14% vs. 0.12±0.07%; ともにP <0.01)。
    〈SAPIEN 3とSAPIEN-XTの比較〉
    • SVDの曝露調整発生率は,SAPIEN-XTに比べ,SAPIEN 3で低かった(SAPIEN-XT 1.76±0.27% vs. SAPIEN 3 0.63±0.16%)。
    • BVFの曝露調整発生率も,SAPIEN-XTに比べ,SAPIEN 3で低かった(SAPIEN-XT 0.65±0.16% vs. SAPIEN 3 0.21±0.09%)。
    〈SAPIEN 3とSAVRの比較〉
    • SVDの曝露調整発生率は,同等(SAPIEN 3 0.68±0.18% vs. SAVR 0.60±0.17%; P =0.71)。
    • BVFの発生率は,数値上はSAPIEN 3のほうがSAVRより大きいものの,統計学的には有意差は示されなかった(SAPIEN 3 0.29±0.12% vs. SAVR 0.14±0.08%; P =0.25)。
    [その他]
    BVFのおもな要因は,SAPIEN-XT,SAPIEN 3,SAVRでそれぞれ異なっていた。
      SAPIEN-XT: ①SVD(64%),②弁周囲逆流(20%)
      SAPIEN 3:①弁周囲逆流(58%),②SVD(32%)
      SAVR:①心内膜炎(50%),②SVD(37.5%)
    Pibarot P, et al for the PARTNER 2 Investigators: Structural Deterioration of Transcatheter Versus Surgical Aortic Valve Bioprostheses in the PARTNER-2 Trial. J AM Coll CArdiol. 2020; 76: 1830-43. PubMed
  • AVR後の右室機能の低下は,ベースライン時に右室拡大,軽度以上の三尖弁逆流が認められた患者や,SAVRを受けた患者でより多くみられ,この右室機能の低下とその程度は重要な予後規定因子であることが示された。
    PARTNER 2A試験においてベースラインおよび30日後に心エコーを実施した1,376例を対象とし,SAVRとAVR後の右室機能低下* との関連および右室機能低下と死亡との関連を検討。ベースライン時の高度右室機能低下例は除外。主要評価項目は,AVR後の右室機能低下例における30日後~2年までの全死亡。
    AVR後の右室機能の低下:TAVR群62例/744例;8.3% vs. SAVR群156例/632例;24.7%[オッズ比(OR)3.61; 95%信頼区間 2.63~4.95]。多変量解析においても,AVR後の右室機能低下は,TAVR群にくらべSAVR群で多くみられた(OR 4.05; 2.55~6.44, P <0.0001)。TAVR群では,ベースラインの軽度以上の三尖弁逆流はAVR後の右室機能低下と関連していた(OR 5.33; 1.46~19.39)。一方,SAVR群においては,ベースラインの右室拡大が右室機能低下と関連していたが(OR 2.77; 1.35~5.68),ベースラインの軽度以上の三尖弁逆流との有意な関連はみられなかった(OR 1.78; 0.71~4.49)。右室機能低下とデバイスおよび処置関連の合併症による再入院に有意な関連は示されなかった[ハザード比(HR)1.56; 0.67~3.61]。
    死亡:30日後~2年までに169例。SAVR群およびTAVR群ともに右室機能低下患者で多かった[HR 1.98; 1.40~2.79]。心血管死も同様に右室機能低下例で多かった(HR 2.11; 1.22~3.66)。
    右室機能低下の程度と死亡との関連:ベースライン時に右室機能正常であったものが中等度~高度の右室機能低下となった場合にもっとも全死亡が多かった(HR 2.87; 1.40~5.89)。
    * 心エコー所見でベースラインから30日後までに1段階以上。
    Cremer PC, et al: The incidence and prognostic implications of worsening right ventricular function after surgical or transcatheter aortic valve replacement: insights from PARTNER IIA. Eur Heart J. 2018; 39: 2659-67. PubMed

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収載年月2016.05
更新年月2020.11