循環器トライアルデータベース

GAUSS-3
Goal Achievement after Utilizing an Anti-PCSK9 Antibody in Statin Intolerant Subjects-3

目的 筋肉関連の有害事象によるスタチン不忍容の患者は多く,スタチンの低用量投与や間欠的投与あるいはezetimibeで治療されるが,目標LDL-C達成率は低い。LDL-Cを著明に低下させるPCSK9阻害薬は筋肉症状が少ない可能性が示されている。
スタチン不忍容の患者において,プラセボ対照のスタチン再投与試験により筋肉症状を発現する患者を特定し(フェーズA),それらの患者において最近承認されたPCSK9阻害薬のevolocumabとezetimibeのLDL-C低下効果を比較する(フェーズB)。

一次エンドポイントは,LDL-C値のベースラインから第22週と第24週の平均値までの平均変化率と,第24週までの平均変化率の2つ。
コメント PCSK9に対する単クローン抗体製剤(PCSK9Mab)が,高コレステロール血症治療薬として我が国でも承認され,発売されている。そのコンセプトはLDL受容体を分解に導くPCSK9を阻害することにより,LDL受容体の寿命を長くし,LDLの低下を導くというもので,その効果は強力で,スタチン治療下でさらに約70%のLDL-C低下をもたらすことがわかっている。一方で,スタチンは安全で効果も強力であることからリスクの高い患者では必須の薬剤でありながら,5~29%の患者で,何らかの筋肉障害をもたらすことが報告されている。このため,このようなスタチン不耐性患者におけるPCSK9Mab使用の可能性とその効果については,極めて切実な問題として医療サイドでも大きな期待を持っているところである。
もう一点,興味のあるところとして,スタチン不耐性の証明の問題がある。筋肉症状を訴えた患者のどの程度が本当にスタチンに由来するのかという医療サイドからの疑問もあり,この研究はその点にも迫るものである。結果としてはスタチン不耐性患者の42.6%はスタチン由来であることがクロスオーバー試験で示された。一方,26.5%のスタチン不耐性患者はプラセボで筋肉症状を呈し,スタチンでは呈しないことが示され,スタチン不耐性と診断する際には更に慎重に対応するべきであると思われる,さて,スタチンを服薬していない状態でのPCSK9Mabの効果であるが,約50%のLDL-Cの低下が認められ,欧米でいう高強度スタチンの有効性とくらべて同様以上であることが示され,忍容性にも問題のないことが認められており,高リスクでスタチン不耐性の患者の福音になるものと思われる。(寺本
デザイン フェーズA:無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設。
フェーズB:無作為割付け,二重盲検,多施設。
期間 追跡期間は24週。
登録期間は2013年12月10日~’14年11月28日。
対象患者 491例。フェーズA非実施例は除き,うち218例がフェーズBに移行。18~80歳,atorvastatin 10mg・その他のスタチン(用量は問わない),あるいはスタチン≧3剤(1剤は最少初回1日量*,2剤は用量を問わない)に不忍容,冠動脈疾患(CAD)と診断されたLDL-C≧100mg/dLの患者,または非CADでLDL-C≧130mg/dL・危険因子≧2つ,≧160mg/dL・≧1つ,または≧190mg/dL・危険因子非保有例。
* rosuvastatin 5mg, simvastatin10mg, pravastatin 40mg, lovastatin 20mg, fluvastatin 40mg, pitavastatin 2mg。
除外基準:3か月以内の心筋梗塞(MI),不安定狭心症,冠動脈血行再建術,脳卒中。
■患者背景:平均年齢(フェーズAの全例:60.7歳;フェーズB:evolocumab群59.0歳,ezetimibe群58.5歳),女性(50.1%;46.2%, 53.4%),白人(94.7%;95.2%, 94.5%),BMI(28.5kg/m²;27.8, 28.5kg/m²),CAD(34.6%;33.1%, 28.8%),脳血管疾患・末梢動脈疾患(23.0%;18.6%, 23.3%),危険因子(現喫煙:10.4%;11.0%, 17.8%,2型糖尿病:12.8%;11.0%, 13.7%,高血圧:57.4%;47.6%, 58.9%,早発性CAD家族歴:38.7%;37.2%, 43.8%,HDL-C低値:36.5%;33.1%, 45.2%,NCEPリスク分類*(高:62.5%;57.9%, 52.1%,中~高:11.0%;14.5%, 11.0%,中:14.9%;15.2%, 21.9%)。*全米コレステロール教育プログラム(NCEP)リスク分類:
高リスク=CADまたは10年Framinghamリスク>20%,中等度リスク=CVD危険因子≧2つ(Framinghamリスク10~20%),低リスク=CVD危険因子0~1つ。
スタチン不忍容(2剤:18.5%;14.5%, 16.4%,≧3剤:81.5%;82.1%, 82.2%),最も重度の筋肉症状(筋肉痛:83.5%;77.2%, 83.6%,筋炎:16.1%;16.6%, 9.6%,横紋筋融解症:0.4%;6.2%, 6.8%), LDL-C(212.3mg/dL;218.8, 221.9mg/dL), HDL-C(50.9mg/dL;49.7, 50.2mg/dL), non-HDL-C(249.6mg/dL;256.9, 257.8mg/dL),リポ蛋白(a)**(32.0nmol/L;29.0, 38.0nmol/L),高感度CRP*+(1.6;両群とも1.7mg/L)。*+ 中央値
治療法 4週間のウォッシュアウト(スタチン,ezetimibe,他の脂質低下薬を中止)後にランダム化。
フェーズA:atorvastatin20mg/日群(245例),プラセボ群(246例)。
10週間投与し,2週間のウォッシュアウト後にクロスオーバーし10週間投与。
フェーズAでatorvastatin投与中のみに筋肉症状を認めた患者を2:1にランダム化。
フェーズB:evolocumab 420mg 1回/月皮下投与群(145例),ezetimibe10mg/日群(73例)。
治療期間は24週。
結果 ・フェーズA
atorvastatin投与中に筋肉症状を発現したのは209/491例(42.6%)。このうち199例と,以前のスタチン治療中にクレアチンキナーゼ(CK)の正常上限値の10倍の増加が認められたためフェーズAを行わなかった19例の計218例がフェーズBへ移行した。
atorvastatin群がプラセボ群にくらべ筋肉症状を発現するハザード比は,最初の10週が1.34(95%信頼区間1.05~1.71,p=0.02),次の10週が1.96(1.44~2.66,p<0.001)。
・フェーズB
[一次エンドポイント]
LDL-Cの第22週と第24週の平均値は,evolocumab群103.6mg/dL,ezetimibe群183.0mg/dL。平均変化率はevolocumab群のほうがezetimibe群より有意に大きかった(-54.5% vs -16.7%;平均差-37.8%[95%信頼区間-42.3~−33.3%], p<0.001)。
第24週の平均LDL-C値(それぞれ104.1mg/dL, 181.5mg/dL)についても同様の結果が得られた(平均変化率:-52.8% vs -16.7%;平均差−36.1%[−41.1~−31.1%], p<0.001)。
[その他]
LDL-Cの絶対変化量もevolocumab群のほうが有意に大きかった(第22週と第24週の平均値:-106.8 vs -31.0mg/dL;群間差-75.8mg/dL,p<0.001,第24週:-102.9 vs -31.2mg/dL;群間差-71.7mg/dL, p<0.001)。
TC, non-HDL-C, ApoB, TC/HDL-C比,ApoB/ApoA1比の変化率も同様の結果であった。
LDL-C<70mg/dL 達成率はevolocumab群が有意に高かった(第22週と第24週の平均値:29.9% vs 1.4%,第24週:27.4% vs 0%;ともにp<0.001)。
[安全性]
筋肉症状に有意差はみられず(20.7% vs 28.8%),多くは筋肉痛であった(13.8% vs 21.9%)。
筋肉症状による投与中止はそれぞれ1/145例(0.7%),5/73例(6.8%)で,CK増加は4例(2.8%),1例(1.4%)に認められた。
心血管イベントはMIが両群1例で,死亡例はなかった。
evolocumab結合抗体の発現は1例で,中和抗体は認められなかった。
★結論★筋肉関連の副作用のためスタチン不忍容の患者において,evolocumabはezetimibeにくらべ24週後のLDL-Cの低下が有意に大きかった。
ClinicalTrials.gov No.:NCT01984424
文献
  • [main]
  • Nissen SE et al for the GAUSS-3 investigators: Efficacy and tolerability of evolocumab vs ezetimibe in patients with muscle-related statin intolerance: the GAUSS-3 randomized clinical trial. JAMA. 2016; 315: 1580-90. PubMed

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収載年月2016.04