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After Eighty

目的 80歳以上の非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)または不安定狭心症患者において,早期侵襲的治療と保存的治療を比較する。

一次エンドポイントは,初発の心筋梗塞(MI),緊急血行再建術の必要性,脳卒中,死亡の複合エンドポイント。
コメント After Eightyは80歳以上の非ST上昇型心筋梗塞または不安定狭心症患者において,早期侵襲的治療と保存的治療を比較するオープンラベルの無作為比較試験で,一次エンドポイントである心筋梗塞/緊急血行再建/脳卒中/死亡の複合エンドポイントについて,侵襲的治療は保存的治療よりも予後良好であった。
FRISK II,ICTUS,RITA-3など,過去の非ST上昇型心筋梗塞または不安定狭心症患者において早期侵襲的治療と保存的治療を比較する無作為比較試験では80歳以上の患者は除外されており,今回の結果はこれまでのエビデンスギャップを埋めるものと言える。日本の実地臨床においては80歳以上の急性冠症候群患者の診療にあたる機会は著増しており,多くの患者において早期侵襲的治療が選択されていると推定されるが,After Eightyの結果は我々の診療プラクティスを肯定してくれる心強い結果となっている。
さらにクレアチニンと年齢90歳超の交絡が認められたことから,クレアチニンで調整して年齢の影響を検討したところ,早期侵襲的治療の有効性は年齢の上昇に伴い有意に減弱し,年齢90歳超と90歳以下の2群に分けるとハザード比はそれぞれ0.47,1.21で,効果量の大きさも方向性も異なるという結果が示されている。ただし本研究の総症例数は457例と少なく,年齢90歳超の患者は34例と極めて少ないために,この種のサブグループ解析を行うことは妥当ではないと考える。本研究の結果は,年齢90歳超の患者も含めた80歳以上の患者において早期侵襲的治療の優越性が示されたと捉えるべきである。実地臨床における年齢90歳超の患者のマネージメントについては,急性冠症候群発症前の生活の質,合併症の有無,予想される余命,患者および家族の希望などを総合的に勘案して常識的に決定されるべきであろう。(木村
デザイン 無作為割付け,オープン,多施設(ノルウェー南東地域のPCI設備のない16施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間中央値1.53年。
登録期間は2010年12月10日~’14年2月21日。
対象患者 457例。80歳以上,NSTEMIあるいは不安定狭心症(ST低下は問わない)で入院した臨床的に安定している連続症例で,トロポニンT,I正常あるいは上昇例。
除外基準:胸痛その他の虚血症状または徴候が持続している不安定症例,心原性ショック,出血性の問題が継続している例など。
■患者背景:平均年齢(侵襲的治療群84.7歳,保存的治療群84.9歳),男性(55%, 44%),喫煙歴(41%, 39%);現喫煙(8%, 9%),血圧(152/78, 153/78mmHg),EF:30~50%(28%, 31%);>50%(45%, 56%),心拍数(78, 77拍/分),Killip分類I(両群とも74%),トロポニン上昇(>正常者の99パーセンタイル)(94%, 92%),クレアチニン(1.15, 1.19mg/dL),糸球体濾過量(52, 54mL/分/1.73m²);<30mL/分/1.73m²(14例,10例),GRACEスコア(両群とも138)。既往:MI(47%, 39%),狭心症(54%, 50%),PCI(24%, 20%),CABG(19%, 14%),高血圧(57%, 61%),2型糖尿病(20%, 14%),慢性閉塞性肺疾患(10%, 8%),脳卒中(17%, 13%),末梢血管疾患(8%, 13%),心房細動(AF)(21%, 23%)。
・ECG背景:AF(21%, 18%),Q波(15%, 18%),ST低下(19%, 18%),陰性T波(15%, 21%),右脚ブロック(9%, 7%),左脚ブロック(10%, 11%)。
・薬物治療(ベースライン時→退院時):aspirin(99→ 95%, 97→ 93%), clopidogrel(85→ 72%, 82→ 73%), warfarin(17→ 22%, 9→ 14%),β遮断薬(84→ 86%, 86→ 85%),スタチン(90→ 91%, 85→ 84%),ACE/ARB(43→ 52%, 51→ 54%),Ca拮抗薬(20→ 24%, 21→ 23%),硝酸薬(46→ 34%, 55→ 48%)。
<侵襲的治療群の背景>冠動脈造影実施220例:3枝病変48%,2枝病変18%,1枝病変16%,石灰化・非有意狭窄17%。手技:PCI 47%,CABG 3%,橈骨アクセス90%。
治療法 侵襲的治療群(229例):ランダム化の翌日にオスロ大学病院へ搬送(搬送時間中央値95分),早期に冠動脈造影を実施し,直ちにPCI,CABG,至適薬物治療の適応を評価。PCI施行例は治療セグメントと搬送距離により6~18時間後に,冠動脈造影のみの患者は4~6時間後に地域病院に戻った。
保存的治療群(228例):地域病院で至適薬物治療。再梗塞,治療抵抗性狭心症,悪性心室性不整脈,心不全増悪の場合は緊急冠動脈造影を検討した。
両群ともガイドラインに沿った治療を実施した。
結果 入院期間は侵襲的治療群6日,保守的治療群5日。
保守的治療群では登録数日後,2例に再梗塞,8例に治療抵抗性狭心症を認め,うち8例にPCIを施行したが,2例は血行再建術不適応だった。
[一次エンドポイント]
侵襲的治療群が保守的治療群より有意に少なかった(93例[41%] vs 140例[61%]:ハザード比[HR]0.53;95%信頼区間0.41~0.69, p=0.0001;NNT 4.8)。
<各エンドポイント>MI(39例[17%]vs 69例[30%]:0.52;0.35~0.76),緊急血行再建(5例[2%] vs 24例[11%]:0.19;0.07~0.52)は侵襲的治療群のほうが有意に低かったが,脳卒中(8例[3%] vs 13例[6%]:0.60;0.25~1.46),全死亡(57例[25%] vs 62例[27%]:0.89;0.62~1.28)には有意差は認められなかった。侵襲群のMIのうち,11例(28%)はPCI関連であった。
[二次エンドポイント]
TIMI基準による出血性合併症は,大出血が4例(2%) vs 4例(2%),小出血が23例(10%) vs 16例(7%)で,大半は消化管出血であった。侵襲群の大出血の1例はPCI関連であったが治癒した。また小出血の2例はアクセス部位関連であった。
[交絡因子と年齢の影響]
性別,2型糖尿病,クレアチニン>103μmol/L,warfarin使用,>90歳で層別した一次・二次エンドポイントの結果も一貫していた。ただし,クレアチニンと年齢>90歳の交絡が認められたことから,HRをクレアチニンで調整し,年齢の影響を検討した結果,侵襲的治療の有効性は年齢の上昇に伴い有意に減弱した(交互作用p=0.009)。≦90歳と>90歳にわけると,HRはそれぞれ0.47,1.21で,効果量の大きさも方向性も異なる可能性が示された。ただし,>90歳は34例のみであったため明確な結論には至らなかった。
[有害事象]
入院中のクレアチニン>25%の上昇は侵襲群7例,保守群4例,うち侵襲群の2例が尿路感染で,残りの5例は造影剤腎症の可能性を除外できなかった。
★結論★80歳以上の非ST上昇型心筋梗塞あるいは不安定狭心症患者において,侵襲的治療戦略は複合エンドポイント低下で保存的治療戦略よりも優っていたが,有効性は年齢の上昇とともに減弱した。出血合併症には両治療戦略の差はなかった。
ClinicalTrials gov No: NCT01255540
文献
  • [main]
  • Tegn N et al for the after eighty study investigators: Invasive versus conservative strategy in patients aged 80 years or older with non-ST-elevation myocardial infarction or unstable angina pectoris (After Eighty study): an open-label randomised controlled trial. Lancet. 2016; 387: 1057-65. PubMed

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収載年月2016.06