循環器トライアルデータベース

VLDL
Very Large Database of Lipids

目的 米国でvertical auto profile(VAP)法*を用いて測定された脂質値の膨大なデータを登録しているVLDL研究から,下記を検討する。
* 垂直スピンの密度勾配超遠心分離によりLDL-C, VLDL-C, IDL-C, HDL-C,リポ蛋白(a)とそのサブクラスを直接測定する方法。
(1)VLDL-2A
脂質ガイドラインではLDL-Cの目標値が達成された場合はnon-HDL-Cを次の治療標的としており,そのカットオフ値を目標LDL-C値+30mg/dLに設定している。しかし,+30mg/dLではなく,LDL-Cのパーセンタイルに一致するnon-HDL-C値を使用すべきとの報告もある。
患者レベルでのnon-HDL-CとLDL-Cのパーセンタイルの不一致度を検証する。
(2)VLDL-2B
総コレステロール(TC)/HDL-C比の使用は現行ガイドラインでは推奨されていないが,心血管イベントリスクとの関連性を示唆する報告もある。
患者レベルでのTC/HDL-CとLDL-C,non–HDL-Cのパーセンタイルの不一致度を検証する。
(3)VLDL-10B
女性は中年期(50~60歳)まではアテローム動脈硬化性の心血管疾患(CVD)リスクが男性より低いが,閉経後は男女間の差は縮小していく。
女性は男性にくらべ中年期以降にリポ蛋白サブクラスの分布が好ましくない方向へ変化するという仮説を検証するため,主なリポ蛋白とそのサブクラスの特徴を男女別,年齢別に検討する。
コメント LDL-C以外の心血管病予測因子として,non HDL-CやTC/HDL-C比などが注目されている。これらが,確立されたLDL-Cという危険因子に対して補充的な指標となるかを130万人以上という大規模なサンプルを用いて,超遠心法という精緻な分析で検証した貴重なデータである。
解析は3つのパートに分けてなされている。第一に,LDL-Cとnon HDL-Cの比較である。通常,わが国のガイドラインでも,アメリカのNCEPガイドラインでも治療の際にLDL-Cが第一の治療目標であり,その次の治療目標としてnon HDL-Cが提案されている。また,non HDL-Cの目標値はLDL-C +30mg/dLとされているが,本研究によれば,LDL-Cが低い症例やTGが高い症例(400mg/dL以上は除く)では必ずしも+30mg/dLではなく,少し低めであることが認められたという。したがって,LDL-Cが治療目標に達した症例でも,non HDL-Cが治療目標に到達していない場合は,他の動脈硬化惹起性のリポたんぱくの存在を示唆するものであり,第二の目標値を達成するように指導することがリスク低減のためには意義があると期待される。第二にTC/HDL-C比について検討しており,TC/HDL-C比はLDL-Cやnon-HDL-Cとは明確に乖離することが示され,LDL-C以外の独立した危険因子としても評価できるのではないかとしている。第三に,これらリポたんぱくについて,性差,特に閉経後の女性の変化が著しいことも検証された。閉経後女性ではリポたんぱくプロファイルが動脈硬化惹起性(LDL-C・non HDL-Cの上昇,LDLの低比重化など)に変化し,男性のリポたんぱくプロファイルに近づくという結果は,これまでの説を裏付けるものである。その意味では閉経後の女性の治療については十分な配慮が必要であるとともに,閉経前女性については,リポたんぱく上もリスクが低いものと考えられ,わが国のガイドラインの主張と一致するものと思われる。
今後,LDL-C以外の管理すべき指標としてnon HDL-CやTC/HDL-Cなどが注目を集める中で,重要な情報源であり,ガイドラインでもどのように扱うか今後の課題となろう。(寺本
デザイン 横断研究。
期間 登録期間は2009~’11年。
参加者 (1)131万440人;(2)131万432人;(3)135万908人中,VAP法で脂質を測定した男性64万5,268人,女性69万7,815人。
除外基準:(1)(2)<18歳,トリグリセライド(TG)≧400mg/dLの人。
■患者背景:(1)平均年齢59歳,女性52%。(3)年齢(男性58.2歳,女性59.1歳)。
調査方法 (1),(2)脂質値(non-HDL-C,Friedewald式による推定LDL-C, TC/HDL-C比)間のパーセンタイルベースでの不一致度を,全例のほか,TG<100, 100~149, 150~199, 200~399mg/dLの4群に層別して解析。さらに,ガイドライン推奨のLDL-C<70mg/dLでの不一致も解析。
(3)脂質とそのサブクラス8種を測定し(LDL-C[サブクラスLDL1-C~LDL4-C], HDL-C[HDL2-C, HDL3-C], VLDL-C[VLDL1+2-C, VLDL3-C];数字が大きいほど高比重),各脂質のサブクラスの比重比を算出(LLDR:LDL3+4-C/LDL1+2-C, LHDR:HDL3-C/HDL-C, LVDR:VLDL3-C/VLDL1+2-C;すべて対数変換)。この比が大きいほど脂質はdenser(比重が大きいサブクラスが多い),小さいほどbuoyant(比重が小さいサブクラスが多い)となる(例えば,LLDR高値はdenser LDL-C,低値はbuoyant LDL-C)。それぞれ年齢(0~>100歳の10歳ごと),男女で層別して中央値を算出した。
結果 (1)VLDL-2A
[不一致度]
ガイドラインで使用されているLDL-Cカットオフ値70, 100, 130, 160, 190mg/dLとパーセンタイルベースで一致するnon-HDL-C値は,それぞれ93, 125, 157, 190, 223mg/dL。
不一致度はLDL-C低値,TG高値ほど大きかった。
[non–HDL-Cによる治療カテゴリーの再分類]
ガイドラインのカットオフ値を使用した場合,non–HDL-C値によりLDL-C分類と同一またはより高いリスクの治療カテゴリーに再分類されたのは10.5%,より低いリスクの治療カテゴリーに再分類されたのは22.3%。一方,パーセンタイルに基づくカットオフ値を使用した場合はそれぞれ14.2%, 13.7%であった。同一またはより高いカテゴリーへの再分類は,LDL-C低値,TG高値ほど顕著であった。
LDL-C値<70mg/dLの患者のうち,15%がnon–HDL-C≧100mg/dL(ガイドラインのカットオフ値),25%が≧93mg/dL(パーセンタイルに基づくカットオフ値)であった。これにTG 150~199mg/dLを加えると,これらの値はそれぞれ21.9%,50.2%となった。
★結論★患者レベルでのnon–HDL-CとLDL-Cのパーセンタイルの有意な不一致が,とくにLDL-C低値,TG高値例で認められた。高リスク患者のnon–HDL-Cカットオフ値をLDL-Cカットオフ値のパーセンタイルに一致するレベルまで下げることで,多くの患者がより高い治療カテゴリーに再分類され,二次予防の転帰や残存リスクの評価および治療が改善する可能性が示された。

(2)VLDL-2B
[不一致度]
TC/HDL-C比とLDL-C, non–HDL-Cのパーセンタイルには有意な不一致が認められた。
これらの不一致は,TG<100mg/dLではTC/HDL-C比<LDL-C・non–HDL-C, TG≧150mg/dLではTC/HDL-C比>LDL-C・non–HDL-Cであった。
[不一致度≧25パーセンタイルの患者の割合]
TC/HDL-C比とLDL-Cの不一致度≧25パーセンタイルの患者の割合は34.4%,non–HDL-Cは24.8%,一方LDL-Cとnon-HDL-Cは3.1%とわずかであった。
不一致度≧25パーセンタイルでTC/HDL-C比>LDL-Cの患者の割合は,TGの増加(TG<100→ 200~399mg/dL)に伴い上昇した(3.3%→ 50.9%)。これは,TC/HDL-C比>non–HDL-Cでの上昇よりも大きかった(6.0%→ 21.4%)。
[LDL-C<70mg/dLでの不一致度]
パーセンタイルベースでLDL-C=70mg/dLは,non–HDL-C=93mg/dL, TC/HDL-C比=2.6に相当。
LDL-C<70mg/dL, non-HDL-C<93mg/dLのそれぞれ58.4%, 45.7%がTC/HDL-C≧2.6に分類された。この割合もTGの増加に伴い上昇した(28.9%→ 95.6%;32.9%→ 87.1%)。
[不一致の関連因子]
年齢,性別,TGの自然対数値にTCとHDL-Cを加えたモデルにより,TC/HDL-CとLDL-Cの不一致の88%,non–HDL-Cとの不一致の86%を説明できた。
★結論★TC/HDL-C比とLDL-C, non–HDL-Cの大きな不一致が認められたことから,TC/HDL-C比をLDL-C, non–HDL-Cに加えることで新たな情報が得られる可能性が示された。

(3)VLDL-10B
[LDL-CとLLDR]
LDL-C, non-HDL-C は50代までは男性のほうが高かった(50歳代のnon-HDL-Cを除く)が,中年期以降(≧60歳)は女性のほうが高かった。30~70代の10年ごとのLDL-C, non-HDL-Cの中央値は下記の通り。
男性:118, 118, 121, 99, 89mg/dL;146, 147, 138, 123, 112mg/dL。
女性:108, 114, 111, 116, 105mg/dL;130, 137, 144, 139, 129mg/dL。
女性での中年期以降の増加は主にbuoyant LDL-Cの増加によるものであった。
女性のほうが全年齢層でLLDRが低かった(buoyant LDL-Cが多かった)が,中年期以降は男性のLLDRも低下したため性差は縮小した。
[HDL-CとLHDR]
HDL-Cは全年齢層で一貫して女性のほうが高く,男女ともに数値は比較的一定であった。LHDRは全年齢層で女性のほうが低かった。30代以降は男女ともに低下したが,LLDR同様,中年期以降は男性で大きく低下したため,性差が縮小した。
[LVDR]
LLDR,LHDRとは異なり女性のほうが高かった(denser VLDL-Cが多かった)が,30代以降は男性のLVDRが徐々に増加したことから差が縮小し,60代以降は男女同等となった。
★結論★中年期以降のCVDリスクの性差の縮小は,女性においてアテローム惹起性リポ蛋白質コレステロールが増加することと,リポ蛋白の比重の特徴が男性に近づくことを反映している。

[主な結果]
  • (1) Elshazly MB et al: Non-high-density lipoprotein cholesterol, guideline targets, and population percentiles for secondary prevention in 1.3 million adults: the VLDL-2 study (very large database of lipids). J Am Coll Cardiol. 2013; 62: 1960-5. PubMed
  • (2) Elshazly MB et al: Patient-level discordance in population percentiles of the total cholesterol to high-density lipoprotein cholesterol ratio in comparison with low-density lipoprotein cholesterol and non-high-density lipoprotein cholesterol: the Very Large Database of Lipids Study (VLDL-2B). Circulation. 2015; 132: 667-76. PubMed
  • (3) Swiger KJ et al: Narrowing sex differences in lipoprotein cholesterol subclasses following mid-life: the very large database of lipids (VLDL-10B). J Am Heart Assoc. 2014; 3: e000851 PubMed

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収載年月2016.02