循環器トライアルデータベース

WEARIT-II Registry
Prospective Registry of Patients Using the Wearable Cardioverter Defibrillator -II Registry

目的 植込み型除細動器(ICD)は心臓突然死(SCD)などのリスクが高い患者において全死亡を抑制するが,SCDリスクが一過性の患者や心筋梗塞(MI)などのイベント発症後の経過時間によりICD植込み基準を満たさない患者,合併症などによるICD抜去例などでは,ICDの必要性を適切に判断する必要がある。着用型自動除細動器(Wearable Cardioverter Defibrillator:WCD)は,ベストに除細動パッドとECG電極を搭載し,接続されたモニタリング装置で致死性不整脈を検出してショック治療を行う自動除細動器で,通常は3か月間使用し,その間にICD植込みの適応を判断する。WCDの有効性と安全性についての研究は行われているものの,実地臨床での前向きデータは報告されていない。
実地臨床において,WCD処方患者の特徴とWCD使用中の持続性心室性頻脈性不整脈リスクを疾患別に評価し,高リスク心疾患患者における使用終了時のEF改善率とICD植込みの必要性を評価する。
本報は使用期間中(3か月)の報告。
コメント ICDがVT・VFによる突然死の予防に有効であることは実証されている。しかし,急性期の病態が不安定な時期にICDの適応か否かを判定することは,しばしば難しい。WCDはこの時期にVT・VFリスクをモニターし,これらの致死性不整脈が発生した場合には自動的に除細動し救命することができる。3ヵ月という不安定な時期(急性心筋梗塞発症直後,心不全発症直後など)を過ぎて病態が安定すると,致死性心室性不整脈のリスクが消失する例では,無用なICD植込みを回避することができる。
本研究はWCDの有用性を明らかにした初めての実臨床の前向きデータであり,基礎疾患によって3ヵ月後のICD植込み率に差があることも明らかになった。今後,WCD植込みの12ヵ月後(WCD使用を中止後9ヵ月)の追跡データが検討される予定であり,その結果が待たれる。(井上
デザイン 前向き登録研究。
期間 追跡期間は3か月(予定追跡期間は12か月)。
登録期間は2011年8月~’14年2月。
対象 2,000例(虚血性心筋症805例[40%],非虚血性心筋症927例[46%],先天性・遺伝性心疾患268例)。WCD(LifeVest system; ZOLL社)処方患者。WCDの適応は,EFが低くSCD高リスクのMI後の患者,冠動脈血行再建術後の患者,安定するまでSCDリスクが高い新規発症非虚血性拡張型心筋症患者,先天性・遺伝性心疾患患者。
■患者背景:年齢中央値(虚血性心筋症群65歳,非虚血性心筋症群59歳,先天性・遺伝性心疾患群59歳)*,女性(23%, 36%, 29%)*,EF中央値(26%, 20%, 23%)*,心不全(48%, 52%, 63%)*,腎疾患(10%, 6%, 11%;p=0.002),糖尿病(35%, 20%, 30%)*,心房細動(AF)(30%, 23%, 39%)*,心停止(SCA)の既往(11%, 7%, 7%;p=0.023),失神(23%, 13%, 19%)*,β遮断薬(88%, 86%, 83%),ACE阻害薬・ARB(75%, 75%, 68%;p=0.031),amiodarone(14%, 12%, 15%)。* p<0.001
調査方法 患者を(1)MI既往,冠動脈疾患(CAD)を合併したSCDリスクが高い虚血性心筋症患者,(2)CADのない非虚血性心筋症患者,(3)先天性・遺伝性心疾患患者の3群に分類。
WCD使用期間中に発生した不整脈を,(1)WCDショック治療が行われた持続性VT(≧30秒)または心室細動(VF),(2)レスポンスボタン**が押され,ショック治療が行われなかった持続性VT,(3)非持続性VT(<30秒),(4)AFあるいは上室頻拍,の4つに分類。不適切治療はWCDにより検出され,ショック治療が行われた非VT・VFに分類。
** 不整脈が検出され患者に知らせるアラームが鳴り始めたときに,不要なショック治療を回避するために患者自身が押すボタン。ボタンが押されず25秒間経過するとショック治療が開始される。
結果 [コンプライアンス]
WCD着用期間中央値は90日。
1日あたりの使用時間中央値は22.5時間で,疾患による差はみられなかった。
[不整脈イベント]
持続性VT・VFの発生は41例・120件(22件/100人・年)。
適切なショック治療が行われたのは22例・30件で,すべて初回ショック治療で停止した。
レスポンスボタンが押されて治療されなかった22例・90件は,その後自然停止した。
不適切治療が行われたのは10例・11件のみ(ECGのアーチファクトによる)。
疾患別では,3か月間の持続性VT発生率は,虚血性心筋症群と先天性・遺伝性心疾患群(ともに3%)が非虚血性心筋症群(1%)より有意に高かった(p=0.02)。
[ICD植込みの判定]
WCD使用終了時にICDを植込んだ患者は840例(42%),疾患別では虚血性心筋症群42%,先天性・遺伝性心疾患群46%,非虚血性心筋症群36%であった。
ICD非植込みの理由はEFの改善がもっとも多かった(41%)。
[死亡]
全死亡は3例(0.2%)で,いずれも心室静止。
★結論★ICD植込み基準を満たさない高リスク患者において,3か月間のWCD使用中の持続性心室性頻脈性不整脈発生率は高いことが示され,WCDはこのリスク評価期間中に致死的不整脈を安全に停止できる可能性が示唆された。
文献
  • [main]
  • Kutyifa V, et al. Use of the wearable cardioverter defibrillator in high-risk cardiac patients: data from the prospective registry of patients using the wearable cardioverter defibrillator (WEARIT-II Registry). Circulation. 2015; 132: 1613-9. PubMed

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収載年月2016.02