循環器トライアルデータベース

ABSORB China

目的 中国人の待機的PCI適応患者において,生体吸収性薬剤溶出スキャフォールド(BVS)の血管造影上および臨床上の安全性と有効性を,コバルト-クロム製everolimus溶出ステント(CoCr-EES)と比較する(非劣性試験)。

一次エンドポイントは,1年後のセグメント内遠隔期損失径。
コメント 本試験は中国において生体吸収性薬剤溶出性スキャフォールド(Absorb BVS)とeverolimus溶出性ステント(EES)とを比較した多施設無作為割付けオープン試験である。先に発表された日本のpivotal試験であるABSORB Japanと,除外項目・病変背景・血管径・病変長・治療戦略等は酷似している。一方,対象年齢・糖尿病罹患率・虚血の状況(安定・不安定)等には差異があり,さらに coronary imaging device使用率が大きく異なる(ABSORB Japanは2/3に使用)。結果として(一次・二次の違いはあるが),1年後の安全性・有効性エンドポントである TLF(target lesion failure)・セグメント内遠隔期損失径(LLL)において両群に差はなく,また両試験とも似たような数値を示した。目立つのは,ABSORB Japanにおいてスキャフォールド血栓症が多かったことである。
BVSはストラットが厚いが透視では見えにくく,広がりや圧着の確認にimaging deviceが有効と考えられている。異なる試験であり単純比較できないのはもちろんであるが,留置 1年後までの有用性に傍証が得られなかったのは残念である。(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,オープン,多施設(中国の24施設),intention-to-treat(ITT)解析(一次エンドポイントはper-treatment解析)。
期間 追跡期間は1年(予定追跡期間は5年)。
登録期間は2013年7月31日~’14年3月13日。
対象患者 480例。18歳以上,心筋虚血が確認された待機的PCI適応患者で,定量的冠動脈造影または目視にて参照血管径2.5~3.75mm,病変長≦24mmの新規固有冠動脈病変を最大2病変有するもの。
除外基準:心筋梗塞(MI)亜急性期でバイオマーカーが正常化しないもの,不安定な不整脈,EF<30%,12か月以内の標的血管PCI・30日以内の非標的血管PCI,標的・非標的血管のstaged PCI施行予定,左主幹部病変,血管径≧2.0mmの側枝・狭窄率≧50%・ガイドワイヤ保護を要する分岐部病変,入口部病変,中等度~高度石灰化病変,心筋ブリッジ,血栓など。
■患者背景:平均年齢(BVS群57.2歳,CoCr-EES群57.6歳),男性(71.8%, 72.6%),BMI(25.2kg/m², 25.3kg/m²),現喫煙(32.8%, 35.4%),高血圧(58.8%, 60.3%),高脂血症(42.4%, 38.4%),糖尿病(25.2%, 23.2%),PCI既往(9.7%, 8.0%),MI既往(16.8%, 16.0%),不安定狭心症(64.7%, 64.1%),病変数(1枝:63.0%, 56.5%,2枝:19.3%, 21.9%,3枝:17.6%, 21.5%),標的病変数(1病変:94.5%, 93.7%),非標的病変の治療(8.4%, 6.8%),IVUS使用(両群とも0.4%),退院時処方(aspirin:両群とも100%,clopidogrel:98.7%, 99.2%,ticagrelor:1.3%, 0.8%)。
・病変背景:左前下行肢(55.4%, 52.4%),左回旋枝(19.5%, 24.2%),右冠動脈(25.1%, 23.4%),中等度~高度石灰化(17.5%, 15.5%),偏心性病変(78.5%, 75.1%),分岐部病変(50.2%, 48.6%),ACC/AHA病変分類(B1:21.1%, 22.3%, B2:47.8%, 50.2%, C:27.1%, 21.9%),前拡張(99.6%, 98.0%),後拡張(63.0%, 54.4%, p=0.05),総デバイス長(22.8mm, 22.3mm),最大デバイス径(両群とも3.1mm),最大バルーン拡張圧(前拡張:12.4, 11.8atm[p=0.04],後拡張:16.8, 16.9atm)。
治療法 BVS群(238例・251病変),CoCr-EES群(237例・252病変)。
前拡張は必須とし,後拡張は術者に一任。手技の6~24時間前にローディングドーズとしてaspirin≧300mgとclopidogrel≧300mgまたはticagrelor 180mg投与。手技後はaspirin 100mg/日を5年以上,clopidogrel 75mg/日またはticagrelor 90mg×2回/日を12か月以上投与。
結果 クロスオーバーは両群とも2例。
急性期臨床的デバイス成功率はBVS 群98.0% vs CoCr-EES 群99.6%(p=0.22),手技成功率は97.0% vs 98.3%(p=0.37)。
1年後のaspirin服用率は99.6% vs 96.2%(p=0.02),P2Y12阻害薬は98.3% vs 95.8%(p=0.10)。
[一次エンドポイント]
1年後の血管造影データが得られたのは86.3% vs 83.3%。
per-treatment解析によるセグメント内遠隔期損失径は0.19mm vs 0.13mmで,BVS群のCoCr-EES群に対する非劣性が示された(群間差0.06mm;片側97.5%信頼区間上限0.14mm;非劣性マージン0.15mm, p=0.01)。ITT解析の結果も同様であった。
[臨床転帰]
1年後の全死亡(0% vs 2.1%, p=0.03)を除き,有意な両群間差を認めなかった(標的病変不全[心臓死,標的血管MI,虚血による標的病変再血行再建術]:3.4% vs 4.2%,心臓死:0% vs 1.3%,MI:2.1% vs 1.7%,全血行再建術:6.7% vs 7.2%,definite/probableスキャフォールド・ステント血栓症:0.4% vs 0%)。
★結論★待機的PCI施行1年後のセグメント内遠隔期損失径において,BVSはCoCr-EESに対し非劣性であった。
ClinicalTrials. gov No.:NCT01923740
文献
  • [main]
  • Gao R et al on behalf of the ABSORB China investigators: Bioresorbable vascular scaffolds versus metallic stents in patients with coronary artery disease: ABSORB China trial. J Am Coll Cardiol. 2015; 66: 2298-309. PubMed
    Windecker S et al: Bioresorbable scaffolds versus metallic drug-eluting stents: Are we getting any closer to a paradigm shift? J Am Coll Cardiol. 2015; 66: 2310-4. PubMed

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収載年月2016.03