循環器トライアルデータベース

OBTAIN
Outcomes of Beta-blocker Therapy after Myocardial Infarction

目的 β遮断薬は心筋梗塞(MI)後の患者の生存を改善するが,用量別に有効性を比較した試験はなく,実地臨床での投与量は臨床試験での投与量または目標用量よりもかなり低いことが示されている。また,MI後のβ遮断薬の投与は死亡率および心拍数低下との関連性が指摘されており,心拍数の低下は用量依存性であることから,死亡率も用量に依存して低下する可能性がある。
急性心筋梗塞(AMI)患者において,退院時のβ遮断薬の投与量が生存に及ぼす影響を検討する。
主要評価項目は2年後の全死亡。
コメント 心筋梗塞後の患者にβ遮断薬が有効であるとするエビデンスは,以前から示されている。一方,日本人においては,β遮断薬が冠攣縮性狭心症を誘発するなどの理由から,使用が控えられていた時期もあった。β遮断薬の使用は血圧の低下や心拍数の減少をもたらすことから,投与量を調節することができる。しかし,血圧や心拍数を目安にβ遮断薬の投与量を調節することの有用性は明らかではない。このため,実臨床においては,β遮断薬の投与量は処方医や患者により,異なる場合が多い。OBTAINは実臨床で用いられているβ遮断薬投与症例を集積することで,投与量と生存との関係を明らかにしようとした。β遮断薬を投与することが投与しないよりも生存を改善させることは示せたが,投与量による違いは明らかでなかった。心筋梗塞後のβ遮断薬による治療には,投与量について課題が残されたといえる。(中村中野永井
デザイン 登録研究,多施設(米国,カナダの26施設)。
期間 追跡期間は2.1年(中央値)。
登録開始は2007年。
対象 6,682例。AMIによる連続入院患者で退院時の生存例。AMIは,クレアチンキナーゼ>正常上限の2倍またはトロポニン>3倍の上昇,胸痛(またはMIを示唆する症状)またはMIを示唆するECG変化で診断。
■患者背景:平均年齢(退院時β遮断薬非処方例65.1歳,処方例63.7歳)*,男性(61.6%, 68.6%)*,白人(77.2%, 79.3%),黒人(12.2%, 10.7%),アジア人(1.1%, 2.5%)*,BMI(28.0kg/m², 29.2kg/m²)*,糖尿病(26.9%, 32.5%)*,高血圧(63.1%, 68.4%)*,高脂血症(48.8%, 54.6%)*,MI既往(20.3%, 20.9%),慢性閉塞性肺疾患(18.0%, 10.1%)*,ST上昇型MI(35.4%, 44.0%)*,非ST上昇型MI(64.6%, 56.0%)*,収縮期血圧(133.3mmHg, 141.0mmHg)*,心拍数(両群とも82.9拍/分),入院時心不全(12.5%, 10.1%),EF(48.8%, 46.7%)*,トロポニン中央値(4.8ng/mL, 7.2ng/mL)*
退院時処方:aspirin(84.1%, 93.3%)*,ACE阻害薬/ARB(49.7%, 67.9%)*,スタチン(71.8%, 87.8%)*,clopidogrel(58.7%, 72.5%)*,抗血小板薬2剤併用療法(55.4%, 69.4%)** 有意差あり。
調査方法 最もよく使用されているβ遮断薬6剤の目標用量を設定(metoprolol: 200mg/日,carvedilol:50mg/日,propranolol:180mg/日,timolol:20mg/日,bisoprolol:10mg/日,atenolol:100mg/日)。この用量に対する実際の投与量の比率を算出し,5群(非投与,>0~12.5%, >12.5~25%, >25~50%, >50%)に分類。全5群間と≦25%群 vs >50%群で死亡リスクを比較した。また,非投与群を除く4群で3年後の死亡率を評価する感度分析とpropensity score解析を実施した。
結果 [β遮断薬の使用率]
退院時のβ遮断薬処方例は6,115例(91.5%)で,内訳はmetoprolol:67.7%, carvedilol:24.3%, atenolol:3.8%, bisoprolol:2.8%, propranolol:0.2%,その他:1.1%。
目標用量に対する実際の投与量の比率は,平均38.1%, >0~12.5%群24.0%, >12.5~25%群37.2%, >25~50%群25.5%, >50%群13.4%。
[一次エンドポイント]
2年後の死亡は831例(退院後死亡率12.4%)で,非投与群~>50%群のKaplan-Meier推定2年死亡率はそれぞれ21.7%, 11.5%, 9.5%, 12.9%, 14.7%(5群間p<0.0001)。
多変量解析で,非投与群を対照とすると他の群は有意に死亡リスクが低かった(>0~12.5%群:調整ハザード比0.530;95%信頼区間0.418~0.673, >12.5~25%群:0.492;0.392~0.617, >25~50%群:0.593;0.471~0.746, >50%群:0.615;0.475~0.797;すべてp≦0.0002)。
一方>50%群との比較では,他の群で有意な死亡リスクの増加はみられなかった(>0~12.5%群:0.862;0.677~1.098, >12.5~25%群:0.799;0.635~1.005, >25~50%群:0.963;0.765~1.213)。
≦25%群 vs >50%群では≦25%群のほうがリスクは低かったが(0.857;0.734~1.002, p=0.05),さらに共変量を加えると差は消失した(0.889;0.754~1.048)。
[感度分析とpropensity score解析]
感度分析とpropensity score解析で,>50%群と他の用量群とのKaplan-Meier推定3年後の死亡リスクの差は示されなかった。
もっとも症例数が多く,死亡率が低かった>12.5~25%群を対照とすると,>0~12.5%群(感度分析:1.092;0.896~1.331, propensity score解析:1.394;1.148~1.692;p=0.0008), >25~50%群(1.176;0.973~1.420, 1.248;1.035~1.505;p=0.02)は死亡リスクが高かった。
★結論★急性心筋梗塞後に従来のランダム化比較試験に近い用量のβ遮断薬を投与した患者において,低用量を投与した患者よりも高い生存率は示されなかった。
Clinicaltrials.gov:NCT00430612
文献
  • [main]
  • Goldberger JJ et al on behalf of the OBTAIN investigators: Effect of beta-blocker dose on survival after acute myocardial infarction. J Am Coll Cardiol. 2015; 66: 1431-41. PubMed
    Taqueti VR and O'Gara PT: Beta-blocker therapy after myocardial infarction: more questions than answers. J Am Coll Cardiol. 2015; 66: 1442-4. PubMed

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収載年月2016.02