循環器トライアルデータベース

NEAT-HFpEF
Nitrate’s Effect on Activity Tolerance in Heart Failure with Preserved Ejection Fraction

目的 硝酸薬は一般的に心不全患者の症状緩和に使用されるが,EFが保持された心不全(HFpEF)患者での有効性は十分には検討されていない。また運動耐容能評価において,非断続的監視下で行う運動機能検査は患者の日常生活機能への治療効果を完全には反映していない可能性があるが,装着型加速度計を用いれば患者の日常生活活動を連続的に,より正確に評価できる可能性がある。
HFpEF患者において,isosorbide mononitrate(一硝酸イソソルビド)の日常活動への効果を検討した。

一次エンドポイントは,120mg投与期間中の日常活動レベル(装着型加速度計で評価)。
コメント HFpEFに対する有効な治療法は見い出せていない。硝酸薬は収縮機能の低下したHFrEFの運動耐容能を改善するためHFpEFにもしばしば用いられているが,本研究でHFpEFに対する硝酸薬の効果が検討された。 結果はネガティブ(無効)であった。6分間歩行距離,NT-proBNP,QOLスコアも有意差を認めなかったが,加速度計を用いた日常生活度は硝酸薬群でむしろ低下したことから,心不全症状の改善を目的とした硝酸薬の使用はお奨めできない。(
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,クロスオーバー,多施設(米国の20施設), intention-to-treat解析。
期間 試験期間は12週間。
登録期間は2014年4月7日~10月30日。
対象患者 110例。50歳以上の安定した内科治療を受けている歩行可能な心不全患者で,EF≧50%,心不全の客観的証拠として12か月以内に以下の基準を1つ以上満たした症例: X線画像上の肺うっ血を伴う心不全による入院歴,安静時の左室拡張末期圧上昇(≧15mmHg),肺毛細管楔入圧上昇(安静時≧20mmHg・運動時≧25mmHg),NT-proBNP上昇(>400pg/mL),BNP上昇(>200pg/mL),ドプラ心エコーによる拡張機能障害。さらにスクリーニング時の質問票で活動低下の原因が呼吸困難・疲労・胸痛と回答したもの。
除外基準:収縮期血圧(SBP)<110mmHg・>180mmHg,硝酸薬・ホスホジエステラーゼ5阻害薬に対する有害反応既往または現在長期使用中。
■患者背景:平均年齢69歳,女性57%,心不全罹病期間中央値1.8年,白人(isosorbide mononitrate群86%,プラセボ群92%),BMI(36.2kg/m², 35.1kg/m²),NYHA心機能分類(II度:49%, 56%,III度:51%, 41%),Kansas City Cardiomyopathy質問票スコア(53.6, 58.0),ミネソタ心不全QOL質問票スコア(46.0, 43.3),6分間歩行距離(300m, 321m),活動量(9,889加速度単位/日,9,607加速度単位/日),活動時間(9.6時間/日,9.2時間/日),SBP(129mmHg, 132mmHg),心拍数(73拍/分,70拍/分),頸静脈圧上昇(40%, 29%),浮腫(63%, 59%),既往症:心不全による入院(24%, 27%),高血圧(88%, 92%),虚血性心疾患(63%, 61%),心房細動既往(37%, 34%),糖尿病(43%, 36%),慢性閉塞性肺疾患(12%, 17%),睡眠時無呼吸(57%, 50%),貧血(36%, 31%),ステージ3以上の慢性腎臓病(42%, 54%),治療背景:ループ利尿薬(71%, 61%),ACE阻害薬/ARB(67%, 61%),β遮断薬(71%, 69%),アルドステロン拮抗薬(27%, 22%),Ca拮抗薬(20%, 41%;p=0.02),脂質低下薬(63%, 71%),抗血小板/抗凝固薬(84%, 80%),クレアチニン(両群とも1.2mg/dL),NT-proBNP中央値(210pg/mL, 248pg/mL),EF(62%, 65%;p=0.03),相対壁厚>0.41(50%, 45%),E/ e' 比(両群とも15),左房容積(41.2mL/m², 38.9mL/m²)。
治療法 isosorbide mononitrate群(51例):前期にisosorbide mononitrate,後期にプラセボを投与。
プラセボ群(59例):前期にプラセボ,後期にisosorbide mononitrateを投与。
2週間休薬後に30mg/日×1週間, 60mg/日×1週間,120mg/日×2~4週間を投与し(前期),2週間のウォッシュアウト後にクロスオーバー(後期)。
日常活動レベルは患者に装着型加速度計を24時間/日(入浴時・水泳時を除く)装着してもらい,前期,後期終了時に回収して評価。15分単位で96件/日記録されたデータを合計し,1日の活動量(単位は任意の加速度単位)とした。
結果 120mg投与期間の加速度計のデータが得られたのは前期101例,後期91例で,データ取得期間中央値はそれぞれ16日,14日(p<0.001)。
[一次エンドポイント]
isosorbide mononitrate投与期間でプラセボ投与期間にくらべ低い傾向がみられた(群間差:-381加速度単位/日,95%信頼区間-780~17, p=0.06)。
[二次エンドポイント]
120mg投与期間中の1日あたりの活動時間は,isosorbide mononitrate投与期間のほうがプラセボ投与期間にくらべ有意に短かった(群間差:-0.30時間/日,-0.55~-0.05, p=0.02)。30~120mg投与期間すべてを合計すると,活動レベルはisosorbide mononitrate投与期間のほうが有意に低かった(-439加速度単位/日,-792~-86, p=0.02)。ベースラインとくらべた活動レベルは,isosorbide mononitrate投与期間では用量が増加するほど有意に大きく低下した。6分間歩行距離,QOLスコア,およびNT-proBNPレベルには有意な群間差を認めなかった。
血圧はisosorbide mononitrate投与期間のほうが有意に低かった(SBP:125mmHg vs 129mmHg, p=0.04,平均動脈圧:88mmHg vs 90mmHg, p=0.03)。
[有害事象]
重篤な有害事象は少なく(isosorbide mononitrate投与期間2例 vs プラセボ投与期間1例),死亡はなかった。
その他の有害事象は,不整脈(2例 vs 2例),心不全悪化(5例 vs 1例),脳卒中/一過性脳虚血発作(1例 vs 0例),失神寸前の状態/失神(6例 vs 3例)であった。
★結論★EFが保持された心不全患者において,isosorbide mononitrate群はプラセボ群にくらべ活動レベルが低く,QOLや運動耐容能も改善しなかった。
ClinicalTrials.gov No.:NCT02053493
文献
  • [main]
  • Redfield MM et al for the NHLBI Heart Failure Clinical Research Network: Isosorbide mononitrate in heart failure with preserved ejection fraction. N Engl J Med. 2015; 373: 2314-24. PubMed

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収載年月2016.05