循環器トライアルデータベース

AMBITION
Ambrisentan and Tadalafil in Patients with Pulmonary Arterial Hypertension

目的 肺高血圧症(PAH)の治療には,発症に関与する3つのシグナル伝達経路を標的とした薬剤(プロスタサイクリン,ホスホジエステラーゼ[PDE]-5阻害薬,エンドセリン受容体拮抗薬)が使用されるが,どの患者にも一律に有効な単剤治療法はなく,併用療法を第一選択として検討した試験もない。
治療歴のないPAH患者において,エンドセリン受容体拮抗薬のambrisentanとPDE-5阻害薬のtadalafilによる初期併用療法の有効性と安全性を,それぞれの単剤投与と比較する。

一次エンドポイントは,初発の臨床的不成功(死亡,PAH悪化による入院,疾患進行*,長期臨床的奏効不十分**の複合エンドポイント)。 * ≧14日の間隔で2回連続して6分間歩行距離がベースラインから>15%減少かつWHO機能分類III~IV度,** ≧14日の間隔で2回連続して6分間歩行距離がベースラインから減少,≧6か月の間隔でWHO機能分類III度。
コメント 肺高血圧の管理および治療については,近年いくつかの治療薬において,新たな進展があった。従来から用いられているベラプロストナトリウムの他に,ホスホジエステラーゼ-5阻害薬(PDE-5阻害薬)やエンドセリン受容体拮抗薬も登場している。一方,肺高血圧の病態が完全に解明されたわけではなく,薬理学的機序の異なる薬剤を併用することが,予後をさらに改善するのかについては明らかではなかった。AMBITIONでは二重盲検比較試験で,エンドセリン受容体拮抗薬とPDE-5阻害薬の併用が,各々単剤の治療よりも優れていることが示された。肺高血圧における薬剤選択や治療方針に大きな影響を与えるエビデンスが示されたといえる。(中村中野永井
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(日本を含む14か国120施設),modified intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は609日。
実施期間は2010年10月18日~’14年7月31日。
対象患者 500例。18~75歳,体重≧40kg,WHO機能分類II~III度,特発性・遺伝性PAHまたは結合組織疾患・薬物・毒物・HIV・修復した先天性心疾患に関連するPAHと診断された患者で,平均肺動脈圧≧25mmHg,肺高血圧の承認治療による治療歴なし・治療期間<14日かつ登録前7日間に承認治療を受けていないもの。
除外基準:左室拡張機能障害のリスク因子を3つ以上保有するもの。
■患者背景:平均年齢54.4歳,女性78%,白人(併用群92%,ambrisentan群85%, tadalafil群88%),地域(北米:46%, 40%, 50%,欧州:51%, 57%, 46%,日本・オーストラリア:3%, 2%, 3%),高血圧(41%, 41%, 36%),糖尿病(8%, 10%, 14%*),冠動脈疾患(6%, 2%*, 2%*),PAH(特発性:50%, 57%, 55%,結合組織疾患:41%, 35%, 33%),治療歴なし(96%, 95%, 95%)。
薬物治療:酸素(25%, 22%, 24%);抗凝固薬(31%, 24%, 38%);Ca拮抗薬(28%, 25%, 31%);利尿薬(56%, 57%, 55%);アルドステロン拮抗薬(19%, 25%, 17%)。
診断~試験薬初回投与の時間中央値(20.0日,20.5日,29.0日*),肺動脈圧(48.1mmHg, 50.4mmHg, 48.1mmHg),6分間歩行距離(353.5m, 354.2m, 349.2m),WHO機能分類III度(70%, 70%, 66%)。 * p<0.05 vs 併用群
治療法 下記3群に2:1:1にランダム化。
併用群(253例):ambrisentan+tadalafil。
ambrisentan単剤群(126例):ambrisentan+プラセボ。
tadalafil単剤群(121例):tadalafil+プラセボ。
ambrisentan, tadalafilは目標用量をそれぞれ10mg, 40mgとして漸増投与。
一次エンドポイントが発生した場合は単剤療法から併用療法へ,または単剤・併用療法からプロスタノイドなどによる他の治療法へ切り替え(盲検化は維持)。
結果 [一次エンドポイント]
臨床的不成功のリスクは併用群のほうが単剤群にくらべ有意に低かった(併用群46例[18%] vs 単剤群統合77例[31%]:ハザード比0.50;95%信頼区間0.35~0.72, p<0.001); vs ambrisentan群43例[34%]:0.48;0.31~0.72, p<0.001,vs tadalafil群34例[28%]:0.53;0.34~0.83, p=0.005)。
[二次エンドポイント]
併用群は単剤群にくらべ下記項目のベースラインから24週後までの変化が大きかった。NT-proBNP:-67.2% vs 両単剤群-50.4%(p<0.001),ambrisentan群-56.2%(p=0.01),tadalafil群-43.8%(p<0.001),6分間歩行距離(中央値):48.98m vs 23.80m(p<0.001), 27.00m(p<0.001), 22.70m(p=0.003)が,WHO機能分類の変化(改善:37% vs 33%, 34%, 33%)には有意差を認めなかった。
十分な臨床的奏効:39% vs 29%(p=0.03), 31%(p=0.15), 27%(p=0.03)。
[安全性]
併用群は各単剤群より末梢性浮腫,頭痛,鼻閉,貧血の発生率が高く,tadalafil群より浮動性めまいが多かったが,失神はtadalafil群が他の群より多かった。
低血圧,試験治療中止,重篤な有害事象の発生率に有意な群間差はみられなかった。
★結論★治療歴のない肺高血圧症患者において,ambrisentan+tadalafilによる初期併用療法は各単剤療法にくらべ臨床的不成功のリスクが有意に低かった。
ClinicalTrials.gov No.:NCT01178073
文献
  • [main]
  • Galiè N et al for the AMBITION investigators: Initial use of ambrisentan plus tadalafil in pulmonary arterial hypertension. N Engl J Med. 2015; 373: 834-44. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2016.02