循環器トライアルデータベース

ABSORB III

目的 金属製薬剤溶出性ステント(DES)植込み後の遅発性標的病変不全などの有害事象を抑制し,長期転帰を改善させる目的で開発された血管壁にステントフレームが残らない生体吸収性薬剤溶出スキャフォールド(BVS)は,複数の研究で1年間の有害事象ではDESと差がないことが報告されたが,臨床的エンドポイントの検出力は不十分であった。
BVS(Absorb)の有効性と安全性をコバルトクロム合金製everolimus溶出ステント(Xience)と比較した(非劣性試験)。

一次エンドポイントは,1年後の標的病変不全(TLF:心臓死,標的血管心筋梗塞[MI],虚血による標的病変再血行再建術[TLR]の複合エンドポイント)。
コメント ABSORB III trialは冠動脈インターベンション(PCI)における完全生体吸収型スキャフォールド (BVS)とエベロリムス溶出性コバルトクロムステント(EES)を比較する最大規模の試験で,臨床エンドポイントであるtarget-lesion failureについてBVSのEESに対する非劣性が証明された。デバイス血栓症にも有意差はなかったが,1.5% 対 0.7%と数字の上ではBVS群でデバイス血栓症発生率が高い傾向にあった。さらにデバイス成功率は94.3% 対 99.3%とBVS群で有意に低く,EESに比べてBVSのほうがデリバリー性能に劣ることが示された。
本試験のstudy limitationsとしては,まず過去最大規模の試験であるとはいえclinical endpoints,特にデバイス血栓症の評価においてはパワー不足であることが挙げられる。実際に最近Lancetに報告されたKastratiらのABSORB III trial も含む3,738例のメタ解析(Lancet. 2016; 387: 537-44. Epub 2015 Nov 17. PubMed)では,BVSとEESを比較して亜急性血栓症の発生率はBVS群で有意に高いと報告されている。高圧後拡張の励行やOCTなどのimaging guidanceによりデバイス血栓症発生率の低下が期待出来る可能性があるとはいえ,早期のデバイス血栓症発生リスクはEESに比べてBVSの方が高いと言える。BVSに比べ最新のmetallic stentのほうが術者に対して厳密な手技を要求しない“forgiving”であるという点は重要である。2番目のstudy limitationsとしては,本試験に登録された患者さんは比較的シンプルな病変を有する患者であり,実地臨床における複雑病変を有する患者のPCIに本試験結果を外挿することは出来ないという点が指摘できる。実地臨床における高度石灰化病変,屈曲病変などへのデバイスのデリバリー,側枝へのアプローチ,デバイスオーバーラップの問題などPCI施行時のデバイスパフォーマンスにおいて,現世代のBVSが最新のmetallic stentに劣ることは明らかであり,日本における承認後のBVSの適応決定には十分な注意を払うことが必要である。(木村
デザイン 無作為割付け,単盲検,多施設(米国,オーストラリアの193施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は12か月(予定追跡期間は5年)。
登録期間は2013年3月19日~’14年4月3日。
対象患者 2,008例。18歳以上の冠動脈1~2枝の新規固有病変に対するPCI施行予定の心筋虚血患者で,冠動脈造影上の参照血管径2.5~3.75mm(視覚的評価),病変長≦24mmのもの。
除外基準:急性MI,特定の複雑病変。
■患者背景:平均年齢(Absorb群63.5歳,Xience群63.6歳),男性(70.7%, 70.1%),白人(87.1%, 88.3%),BMI(30.6kg/m², 30.5kg/m²),高血圧(84.9%, 85.0%),高脂血症(86.2%, 86.3%),糖尿病(31.5%, 32.7%),インスリン治療下の糖尿病(10.5%, 11.2%),MI既往(21.5%, 22.0%), eGFR<30mL/分/1.73m²・透析(10.8%, 11.1%),現喫煙(21.3%, 20.7%),無症候性虚血(10.0%, 10.2%),狭心症(安定:57.3%, 60.8%,不安定:26.9%, 24.5%),標的病変(左前下行枝:44.5%, 42.2%,左回旋枝:26.2%, 30.6%[p=0.03],右冠動脈:29.2%, 27.2%),ACC/AHA病変分類B2・C(68.7%, 72.5%),参照血管径(2.67mm, 2.65mm),狭窄率(65.3%, 65.9%),病変長(12.6mm, 13.1mm[p=0.05])。
手技背景:bivalirudin使用(60.7%, 58.7%),GP IIb/IIIa阻害薬使用(10.1%, 12.4%),治療病変数(全病変:両群とも1.2,標的病変:両群とも1.0),デバイス留置(割付けデバイス留置:95.5%, 99.3%*,割付けデバイスにみ留置:93.8%, 99.1%*),後拡張(65.5%, 51.2%*),血管内画像ガイド(11.2%, 10.8%),手技時間(42.2分,38.3分*),総デバイス長(20.5mm, 20.7mm),最大デバイス長(3.18mm, 3.12mm[p=0.007])。* p<0.001
治療法 前拡張を必須とし,前拡張成功後に2:1にランダム化。
Absorb群(1,322例・1,385病変):everolimus溶出生体吸収性スキャフォールドを植込み。
Xience群(686例・713病変):everolimus溶出コバルトクロム合金ステントを植込み。
全例に,植込み前24時間以内にaspirin≧300mg,植込み前または植込み後1時間以内にP2Y12受容体拮抗薬のローディングドーズを投与。その他の薬剤の投与は標準法に従った。
結果 12か月追跡終了は1,989例(99.1%)。
[手技成績]
デバイス成功率はAbsorb群94.3%,Xience群99.3%(p<0.001),手技成功率は94.6%, 96.2%。
Absorb群のほうが手技後のデバイス内急性期獲得径(1.45mm vs 1.59mm),最小血管径(2.37mm vs 2.49mm)が小さく,狭窄率が大きかった(11.6% vs 6.4%;すべてp<0.001)。
[薬物治療]
入院中と30日後の抗血小板薬2剤併用療法の実施率は両群同等であったが,1年後はAbsorb群のclopidogrel使用頻度が低く,prasugrel使用頻度が高かった。
[一次エンドポイント]
TLFはAbsorb群102/1,313例(7.8%),Xience群41/677例(6.1%)で(相対リスク1.28;95%信頼区間0.90~1.82),Absorb群のXience群に対する非劣性が示された(リスク差1.7パーセントポイント[95%信頼区間-0.5~3.9;非劣性マージン4.5%];非劣性p=0.007;優越性p=0.16)。
心臓死(0.6% vs 0.1%),標的血管MI(6.0% vs 4.6%),虚血によるTLR(3.0% vs 2.5%)にも有意な群間差はみられなかった。
[二次エンドポイント]
患者報告による狭心症(18.3% vs 18.4%),全再血行再建術(9.1% vs 8.1%),虚血による標的血管再血行再建(5.0% vs 3.7%)などにも有意な群間差はみられなかった。
デバイス血栓症にも有意差はなかったが(1.5% vs 0.7%),発生時期でみると24時間~30日はAbsorb群のほうが有意に多く,急性期(≦24時間)と遠隔期(>30日)は差を認めなかった。
★結論★非複雑性閉塞性冠動脈疾患患者において,1年後のTLFでのAbsorb群のXience群に対する非劣性が認められた。
ClinicalTrials.gov no.:NCT01751906
文献
  • [main]
  • Ellis SG et al for the ABSORB III investigators: Everolimus-eluting bioresorbable scaffolds for coronary artery disease. N Engl J Med. 2015; 373: 1905-15. PubMed

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収載年月2016.01