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Prospective Randomized Comparison of the BioFreedom Biolimus A9 Drug-Coated Stent versus the Gazelle Bare-Metal Stent in Patients at High Bleeding Risk

目的 PCI施行患者の15%以上は出血リスクが高いと推定されており,治療は第二世代薬剤溶出性ステント(DES)+短期の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT),またはベアメタルステント(BMS)+1か月間のDAPTであるが,後者は再狭窄・標的病変再血行再建術(TLR)のリスクが高い。biolimus A9(umirolimus)をコーティングしたポリマーフリーの薬剤コーティングステント(DCS)は植込み後約1か月でbiolimusを血管壁に移行させるもので,first-in-human試験では12か月後のステント内損失径でpaclitaxel溶出ステントに対する非劣性が示された。
出血リスクが高いPCI施行患者において,DAPTを1か月のみ併用するプロトコルでのポリマーフリーbiolimus使用DCSの有効性,安全性をBMSと比較する。

安全性の一次エンドポイントは,390日後の心臓死,心筋梗塞(MI),definite・probableステント血栓症の複合エンドポイント。
有効性の一次エンドポイントは,390日後の臨床的指標によるTLR。
コメント N Engl J Med. 2015; 373: 2038-47. へのコメント
「出血リスクが高い症例でDAPT期間を短くしたいけれど,BMSに変わるDESはないだろうか?」というニーズに応えるべく企画された試験である。drug-coated stent(DCS)と称されるBioFreedomTMステントは,従来のDESのようにポリマーやキャリヤーを介さず,独自のテクノロジーでステント表面にコーティングされた薬剤が4週間で血管側に移行し,以後はBMSとして血管を支えることになる。その薬剤umirolimus(=Biolimus A9)は脂溶性が高いため組織移行が良好で,また代謝時間も長いため,従来のDESと同様の再狭窄抑制作用が期待されている。
本試験は中等度の出血リスク(CRUSADE bleeding score;34)を有する症例をランダム化し,DCSあるいはBMS留置後DAPTを1ヵ月だけ継続し,その後SAPT(aspirin)のみで臨床経過を観察した二重盲検試験である(ステントプラットフォームが同一のため二重盲検が実現した)。今回は途中経過として約1年後の結果が示された。
大出血(BARC 3~5)が高率に合併する(7.2% vs 7.3%)中で,有効性エンドポイント(臨床症状によるTLR)の半減はacceptableである。安全性一次エンドポイントにも有意差が認められたが,両群ともステント血栓症はやや高く(2.0% vs 2.2%),有意差を引っ張った心筋梗塞合併率(6.1% vs 8.9%)は我々の日常臨床とはかけ離れている印象である。ステント血栓症の半数が1ヵ月以内であったり,入院48時間以内のurgent TLRが高率(3.3% vs 5.8%)であるなど,手技的要因の関連も示唆される。
出血のハイリスク症例は血栓形成についてもハイリスクであるが,保険制度が異なる諸外国のお家事情でPCI手技内容やfollow-upの“手厚さ”が違い,本邦のデータと重ね合わせるのは難しいのかも知れない。従って今回の結果をそのまま日本の臨床現場に適合させられるのかどうかに疑問は残る。とは言え,我々のラインナップに力強い味方が加わったのは間違いなさそうである。現在日本でも,同様の症例群を対象として少数例でのsingle arm studyが進行中であり,その結果が待たれる。(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(4大陸20か国68施設),modified intention-to-treat解析(冠動脈造影前のランダム化例,PCI非施行例を除外)。
期間 一次エンドポイントの追跡期間は390日,720日後まで追跡予定。
登録期間は2012年12月~2014年5月。
対象患者 2,466例。PCI適応の冠動脈疾患(CAD)患者で,下記の出血リスク因子を1つ以上保有するもの:≧75歳,PCI後に経口抗凝固薬の投与継続予定,ヘモグロビン<11g/dL・4週間以内の輸血,血小板数<10万/mm³,12か以内の出血による入院,12か月以内の脳卒中,脳内出血既往,重度の慢性肝疾患,クレアチニンクリアランス<40mL/分,3年以内の癌,12か月以内の大手術予定,PCI後>30日のグルココルチコイド・非ステロイド性抗炎症薬投与予定,DAPT期間>30日のアドヒアランス不良が予測されるもの。
■患者背景:平均年齢75.7歳,女性(DCS群29.8%,BMS群30.9%),BMI(27.5kg/m², 27.2kg/m²),糖尿病(34.0%, 32.3%),高血圧(78.1%, 79.6%),高コレステロール血症(62.0%, 62.7%),安定CAD(58.5%, 56.9%),非ST上昇型MI(22.4%, 23.2%),不安定狭心症(14.5%, 15.9%),多枝疾患(62.9%, 61.6%),既往:MI(19.6%, 21.4%);PCI(22.2%, 21.9%);CABG(9.4%, 10.1%),うっ血性心不全(14.4%, 12.4%),心房細動(34.9%, 34.6%),末梢血管疾患(15.7%, 15.8%),CRUSADEスコア*(34.1, 34.6),橈骨動脈アクセス(60.7%, 58.7%),多枝治療(21.8%, 21.4%),DAPT施行(退院時:96.5%, 96.9%,23日後:95.2%, 94.7%,37日後:9.1%, 9.8%)。
出血リスク因子:≧75歳(64.5%, 64.1%),経口抗凝固薬投与予定(36.7%, 35.6%),ヘモグロビン<11g/dL・輸血(15.2%, 16.0%),クレアチニンクリアランス<40mL/分(17.9%, 20.2%),大手術予定(15.3%, 17.4%)など,平均1.7因子を保有。
* Can Rapid Risk Stratification of Unstable Angina Patients Suppress Adverse Outcomes with Early Implementation of the American College of Cardiology/ American Heart Association Guidelines出血リスクスコア:非ST上昇型MI症例の院内出血リスクを算出するためのスコア。範囲は1~100で高スコアほど大出血リスクが高い。≦20:very low, 21~30:low, 31~40:moderate, 41~50:high, >50:very highに分類され,moderate riskでの大出血リスクは約9%。
治療法 DCS群(1,221例):ポリマーフリーbiolimusコーティングステント(BioFreedom)植込み。
BMS群(1,211例):類似BMS(Gazelle)植込み。
血管アクセスと周術期の抗血栓療法は術者に一任。staged PCIは1週間以内の施行を許可。aspirin(75~250mg/日)とP2Y12阻害薬(clopidogrel 75~150mg/日を推奨)を30日間投与(退院時ビタミンK拮抗薬投与例は3剤併用またはビタミンK拮抗薬+clopidogrelを投与)後,抗血小板薬単剤を投与(aspirinを推奨)。
結果 [進行中]
390日追跡終了は,DCS群98.0%,BMS群98.2%。
[安全性の一次エンドポイント]
DCS群のBMS群に対する非劣性が示され(DCS群112例[9.4%]vs BMS群154例[12.9%]:推定絶対リスク差-3.6パーセンテージポイント;95%信頼区間[CI]-6.1~-1.0[非劣性p<0.001]),さらに同群の優越性も示された(ハザード比[HR]0.71;95%CI 0.56~0.91[優越性p=0.005])。
これはおもにMIの低下によるもので(6.1% vs 8.9%, p=0.01),心臓死(4.2% vs 5.3%),definite・probableステント血栓症(2.0% vs 2.2%)には有意な両群間差はみられなかった。
[有効性の一次エンドポイント]
臨床的指標によるTLRのリスクはDCS群が有意に低かった(59例[5.1%]vs 113例[9.8%];HR 0.50;95%CI 0.37~0.69;p<0.001)。
標的血管再血行再建術などのその他の再血行再建術のリスクもDCS群のほうが低かった。
[その他]
全死亡は両群同等であった(8.0% vs 9.0%)。
自然発症MI(2.1% vs 3.7%, p=0.023),ステント内再狭窄関連MI(0.9% vs 2.2%, p=0.009)は,全MI同様にDCS群が少なかった。
BARC基準出血は両群同等であった(1~5:18.1% vs 19.1%, 2~5:13.9% vs 14.7%, 3~5:7.2% vs 7.3%)。
サブグループ解析でDCS群の有効性が顕著だったのは,安全性の一次エンドポイントでは急性冠症候群患者(交互作用p=0.04),有効性の一次エンドポイントでは入院時非腎不全患者(p=0.02),CRUSADEスコア≦35(p=0.02),貧血・輸血・入院を要する出血非発生患者(p=0.03)。
★結論★高出血リスクのPCI施行患者において,DAPT期間を1か月とした場合に,ポリマーフリーbiolimusコーティングステントは1年後の安全性,有効性でBMSより優れていた。
ClinicalTrials gov. No: NCT01623180
文献
  • [main]
  • Urban P et al for the LEADERS FREE investigators: Polymer-free drug-coated coronary stents in patients at high bleeding risk. N Engl J Med. 2015; 373: 2038-47. PubMed
  • [substudy]
  • 1年後にみられたDCS群のBMS群を上回る安全性,有効性は2年後も持続した。
    730日後の生存例2,386例(98.1%:抗血小板薬1剤使用はDCS群78.8%,BMS群76.8%,DAPTは5.3%, 7.6%,経口抗凝固薬投与37.7%, 38.0%)における2年後の安全性,有効性の結果。
    安全性のエンドポイントは,DCS群のほうがBMS群よりも有意に少なかった(12.6% vs 15.3%:ハザード比0.80;95%信頼区間0.64~0.99, p=0.039)。1年後~2年後の発生数は53件・37例 vs 44件・29例。関連因子は,年齢,貧血,うっ血性心不全,多枝病変,留置ステント数,BMS。
    有効性のエンドポイントもDCS群がBMS群より有意に少なかった(6.8% vs 12.0%:0.54;0.41~0.72, p<0.0001)。1年後~2年後の発生数は24件・20例 vs 43件・29例。
    冠動脈血栓性イベントはDCS群が有意に少なかった(8.2% vs 10.6%, p=0.045)。大出血(8.9% vs 9.2%),死亡率(13.1% vs 13.8%),心臓死(6.6% vs 6.9%),ステント血栓症(definite, probable: 2.1% vs 2.3%)に有意な両群間差はなかった:J Am Coll Cardial. 2017; 69: 162-71. PubMed

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収載年月2016.01
更新年月2017.02