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ABSORB Japan

目的 生体吸収性薬剤溶出スキャフォールド(BVS)は,理論的には金属製薬剤溶出ステント(DES)よりも長期転帰に優れるはずであるが,少なくとも中短期の同等性を確認することは重要である。ABSORB II(Lancet. 2015; 385: 43-54. PubMed),EVERBIO II(J Am Coll Cardiol. 2015; 65: 791-801.)でAbsorb BVSの9~12か月後の安全性,有効性が新世代DESと同等であることが示されている。
ABSORB Japanは日本で承認を得るべく企画されたAbsorb BVSの安全性と有効性をコバルトクロム製everolimus 溶出ステント(CoCr-EES)と比較したランダム化比較非劣性試験。

一次エンドポイントは,12か月後の標的病変不全(TLF:心臓死,術中を含む標的血管に起因する心筋梗塞,虚血による標的病変再血行再建術[ID-TLR]の複合エンドポイント)。
コメント 本試験は日本人において生体吸収性薬剤溶出性スキャフォールド(Absorb BVS)とEverolimus溶出性ステント(EES)とを比較した多施設無作為割付け単盲検試験である。 今回発表された1年後の結果では,safety endpointであるTLF(Target Lesion Failure),有効性の指標となるセグメント内遠隔期損失径(LLL)ともにEESに対するAbsorb BVSの非劣性が示された。昨年 9月に発表された欧州でのABSORB II試験に追従する形で進行しているが,1年間の BVS群のTLF(ABSORB Japan;4.2%, ABSORB II;4.8%)などで近似したデータが得られている。
本試験はAbsorb BVS国内承認を目的としている。従って,我々は間もなく,この新たな魔法の杖を手に入れることになる。薬剤溶出性 BVSはPCI領域でballoon・BMS・DESに続く「第四の革命」と称される。しかしこれまでの“劇的な”変化に比べ,BVSとDESとの間にどのような違いがあるのか,特に長期的な有用性が期待されてはいるがまだ検証できてはいない。実証されているデータは, ABSORB IIやABSORB Japanのように比較的単純病変への single implantationが短期的に“非劣性”であるという仮説のみである。
BMSやDESはoff-label使用が先行し,あとになってその有用性が実証されてきた歴史があるが,デリバリー性や血管支持力に劣り,まだまだ strutも厚いBVSについては,果たしてどうだろうか? DESとの使い分けが焦点となる。
本試験でのBVS群のデバイス血栓症は1.5%であった。従来ステント血栓症が少ないと評価されている本邦において,である。レジストリーを含めたこれまでの BVSの報告では,半年から1年間のデバイス血栓症は0%から3.0%とまちまちである。従来指摘されてきたステント血栓症のリスク因子が検証しきれないためか,あるいは未知のリスクが存在するのかは不明であるが,最近の DESによるステント血栓症の均一性とは明らかに趣が異なる。 理論的には理想のデバイスと考えられているBVSではあるが,我々は来年にも承認されるであろうこの魔法の杖を振り回すことなく,EBMを検証し,地に足をつけた活用が重要と考える。(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,単盲検(患者),多施設(日本の38施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は13か月(予定全追跡期間は5年)。
登録期間は2013年4月27日~12月27日。
対象患者 400例。固有冠動脈1~2枝に新規病変を有する20歳以上の虚血性心疾患(安定・不安定狭心症,無症候性虚血)患者で,冠動脈造影上の参照血管径2.5~3.75mm,病変長≦24mm,狭窄率50%~<100%。
除外基準:EF<30%,推算糸球体濾過量<30mL/分/1.73m²,(亜)急性心筋梗塞,出血高リスク例,冠動脈造影上の左主幹部・入口部病変,過度の蛇行・屈曲,標的病変内または近位部の高度石灰化,血栓性病変,2mm以上の側枝を含む分岐部病変,再狭窄病変など。
■患者背景:平均年齢67.2歳,男性(BVS群78.9%,CoCr-EES群73.9%),BMI(24.0kg/m², 24.3 kg/m²),現喫煙(19.9%, 21.6%),高血圧(78.2%, 79.9%),脂質異常症(82.0%, 82.1%),糖尿病(36.1%, 35.8%),HbA1c(両群とも6.2%),MI既往(16.0%, 23.9%),早発性CAD家族歴(6.5%, 8.1%),虚血(安定狭心症:63.9%, 65.7%,不安定狭心症:9.8%, 16.4%,無症候性虚血:26.3%, 17.9%),病変(左前下行肢:46.2%, 42.3%,左回旋枝:22.9%, 26.3%,右冠動脈:30.9%, 31.4%),石灰化(中等度・重度:27.7%, 32.8%,高度:6.9%, 10.9%),中等度・重度蛇行(8.5%, 8.0%),偏心性病変(81.7%, 82.5%),ACC/AHA病変分類(B2:56.0%, 49.6%,C:20.0%, 26.3%)。
・手技背景:手技後の光干渉断層法(OCT)/IVUS評価(68.8%, 68.7%),手技時間(49.8分,44.9分[p=0.04]),総ステント長(20.2mm, 19.5mm[p=0.01]),前拡張(両群とも100%),留置圧(10.4atm, 11.2atm[p=0.003]),留置時予測デバイス径(3.30mm, 3.19mm),後拡張(82.2%, 77.4%),バルーン径(3.18mm, 3.29mm[p=0.0495]),バルーン圧(15.5atm, 16.0atm),予測バルーン径(3.32mm, 3.45mm[p=0.02]),最終バルーン圧(14.7atm, 15.1atm),予測バルーン径(3.34mm, 3.41mm)。
治療法 2:1にランダム化。
BVS群(266例・275病変):Absorb everolimus溶出BVS(アボット社)を植込み。
CoCr-EES群(134例・137病変):XIENCE Primeまたは Xpedition CoCr-EES(アボット社)を植込み。
治療はsingle stentingのみで前拡張を必須とした。BVS留置後は0.5mm以内でのサイズアップした後拡張は許容。bail-outも同じデバイスを使用。
チエノピリジン系抗血小板剤は12か月継続,aspirinは継続投与とした。
結果 [進行中]
病変あたりのデバイス成功率はBVS群98.9%(2例はCoCr-EESで治療),CoCr-EES 群99.3%,手技成功率は97.7%,98.5%。デバイス内の最小血管径はBVS群で小さく(2.42 vs 2.64mm,p<0.0001),狭窄率は高かった(11.8% vs 7.1%, p<0.0001)。
12か月追跡終了は 264例(99.2%),133例(98.8%)。
12か月後の2剤併用抗血小板療法施行率は,97.0% vs 93.3%(p=0.08)。
[一次エンドポイント]
12か月後のTLFはBVS群11/265例(4.2%),CoCr-EES群5/133例(3.8%)で(相対リスク1.10;95%信頼区間0.39~3.11),BVS群のCoCr-EES群に対する非劣性が示された(群間差0.39%[95%信頼区間上限3.95%;非劣性マージン8.6%];非劣性p<0.0001)。
ID-TLRは2.6% vs 2.3%(p=1.00),TV-MIは3.4% vs 2.3%(p=0.76)で治療に関連したMIは1.1% vs 1.5%(p=1.00)。
12か月後のdefinite/probableステント・スキャフォールド血栓症は両群とも1.5%(p=1.0),再狭窄によるID-TLRの頻度は低かった(1.1% vs 1.5%,p=1.0)。
[二次エンドポイント]
13か月(平均395日)後の血管造影施行率は95.6% vs 94.2%。
セグメント内晩期損失径に有意な両群間差はみられなかった(0.13mm vs 0.12mm;群間差0.01mm[95%信頼区間上限0.07mm;非劣性マージン0.195mm];非劣性p<0.0001)。
セグメント内再狭窄率は1.9% vs 3.9%(p=0.31),エッジでの再狭窄率は0.4% vs 2.3%(p=0.11)
★結論★BVS植込み12か月後の臨床転帰および13か月後の冠動脈造影転帰は,CoCr-EESと同等であった。
ClinicalTrials.gov no.:NCT01844284
文献
  • [main]
  • Kimura T et al on behalf of the ABSORB Japan investigators: A randomized trial evaluating everolimus-eluting Absorb bioresorbable scaffolds vs. everolimus-eluting metallic stents in patients with coronary artery disease: ABSORB Japan. Eur Heart J. 2015; 36: 3332-42. Epub 2015 Sep 1. PubMed
    Kristensen SD et al: Deliver the drug and be resorbed: evidence from ABSORB Japan. Eur Heart J. 2015; 36: 3343-5. Epub 2015 Sep 1. PubMed

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収載年月2015.09