循環器トライアルデータベース

KPAF
Kansai Plus Atrial Fibrillation

目的 心房細動(AF)に対する肺静脈隔離(PVI)後の心房性頻脈性不整脈再発のほとんどは,左房-肺静脈間の再伝導により発生する。従って,この再伝導を永久的に遮断することが重要である。
KPAFはカテーテルアブレーションを施行するAF患者における心房性頻脈性不整脈再発の抑制効果を検証する試験で,下記の2試験から成る。
(1)アデノシン三リン酸(ATP)ガイド下PVI vs 標準的PVI(UNDER-ATP試験:Unmasking Dormant Electrical Reconduction by Adenosine Triphosphate)。
(2)アブレーション後90日間の抗不整脈薬(AAD)投与 vs 対照(EAST-AF試験:Efficacy of Antiarrhythmic drugs Short-Term use after catheter ablation for Atrial Fibrillation)。
本報は(1)UNDER-ATP試験の結果。

一次エンドポイントは,1年後(90日間のブランキング期間を含む)の心房性頻脈性不整脈再発(>30秒持続するもの,または再焼灼,入院,Vaughan Williams分類I・III群AADの投与を要するもの)。
コメント 心房細動例のPVIは根治術として普及しているが,不顕性PV伝導はアブレーション後の再発の主要な原因である。不顕性PV伝導を検出し,これを遮断すれば再発を抑制できるだろうことは予想されることで,不顕性伝導の検出法としてアデノシン投与が広く行われている。しかし,本法の有効性に関して多数の例を対象とした比較試験は行われていなかった。本報告は2,000例を超す症例を対象にアデノシンの有効性を検証した我が国のランダム化比較試験(RCT)であり,アデノシンの有効性を否定する結果となった。この結果は著者らが考察している通り,手技,器具,装置の進歩,改良によるところが大きい。大がかりなRCTが我が国から報告されたことは大変喜ばしいことであり,本試験のもう一つのサブ試験であるEAST-AF試験の公表が期待される。(井上
デザイン 無作為割付け,2×2 factorial,多施設(日本の主に関西地区の19施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は384日(中央値)。
登録期間は2011年11月~’14年3月。
対象患者 2,113例。21~79歳,発作性・持続性・長期持続性AFに対する高周波カテーテルアブレーション初回施行患者。
除外基準:ATPまたはVaughan Williams分類I群・III群AAD禁忌(重度の気管支喘息・冠攣縮性狭心症・徐脈など),腎機能障害,NYHA心機能分類IV度,EF<40%,左房径>55 mm,AF罹病期間≧5年,心筋梗塞発症後<6か月,重症弁膜症など。
■患者背景:平均年齢(ATPガイド下PVI群58.6歳,標準的PVI群68.5歳)*,男性(77.0%, 72.7%, p=0.01),BMI(24.3, 23.7kg/m²)*,AF罹病期間(23.3か月,26.4か月),AF病型(発作性:66.3%, 68.2%;持続性:22.0%, 23.4%;長期持続性:11.7%, 8.4%),CHADS2スコア(≦1:81.8%, 64.6%;2:12.7%, 21.5%)*,高血圧(47.6%, 58.9%)*,EF(64.2%, 64.6%),脳卒中・一過性脳虚血発作既往(5.9%, 10.8%)*,クレアチニンクリアランス(94.6, 74.4mL/分)*,無効AAD数(0:42.5%, 39.4%;1:39.3%, 41.1%;2:13.0%, 13.8%),経口抗凝固薬(warfarin:30.3%, 36.7%;dabigatran:46.7%, 41.3%;Xa阻害薬:17.9%, 19.2%, p=0.002),抗血小板薬(8.0%, 13.2%)*,β遮断薬(35.2%, 36.1%),ACE阻害薬・ARB(33.6%, 42.5%)*,Ca拮抗薬(30.0%, 40.9%)*,Vaughan Williams分類I・III群のAAD(30.0%, 31.0%)。
・手技背景:左房roof line(18.2%, 21.7%, p=0.04),総通電回数(106回,101回;PVIのみ:83.7回,80.4回,ともにp=0.02),総通電時間**(47.1分,45.5分;PVIのみ:37.1分,35.1分[p=0.005]),初回PVI成功~最終確認の時間**(67分,61分)*,総手技時間**(195分,192分),放射線量**(399mGy, 370mGy)。
* p<0.001,** 中央値
治療法 全例に広範囲同側肺静脈同時隔離法によるPVIを施行し,初回成功後に一定時間待機して自然発生再伝導が認められれば再焼灼を実施。
ATPガイド下PVI群(1,112例):さらにATPテスト(ATP 0.4mg/kgの急速静注により不顕性PV伝導が顕在化するかを確認)を行い,再伝導が認められた場合は消失するまで焼灼を追加。消失が困難な場合に焼灼を中止するかどうかは,術者に一任した。
標準的PVI群(1,001例):ATPテストを行わない。
その他のアブレーションを行うかどうかは術者と担当医に一任し,90日間のブランキング期間中のアブレーションは行わないよう強く推奨した。
層別ランダム割付け時にシステムのプログラミングエラーのため2群間に不均衡が生じたが,事前に決定されていたCox比例ハザードモデルにより,層別変数(年齢・性別・施設・AFの病型)と90日間のAAD投与を調整して解析。
結果 [手技成績]
初回PVI成功後(中央値43分)に自然発生再伝導を認めたのは,ATPガイド下PVI群474例(42.6%),標準的PVI群419例(41.9%)。
ATPガイド下PVI群におけるATPテスト実施率は97.7%,ATPは初回PVI成功後57分(中央値)に投与された。ATPにより不顕性PV伝導が顕在化したのは307例(27.6%),このうち追加のアブレーションにより不顕性伝導が消失したのは302例(98.4%)。
[一次エンドポイント]
死亡は5例,追跡不能は6例。
1年後の心房性頻脈性不整脈の再発回避率に両群間で有意差は認められなかった(ATPガイド下PVI群68.7% vs 標準的PVI群67.1%:調整ハザード比0.89;95%信頼区間0.74~1.09, p=0.25)。
発作性 vs 非発作性,左房アブレーション追加の有無などによるサブグループ解析の結果も同様であった。
[その他]
1年後の心房性不整脈に対する再アブレーションにも差はみられなかった(0.83;0.65~1.08, p=0.16)。
ATPによる不顕性PVの顕在化を認めた症例と認めなかった症例の比較でも,心房性頻脈性不整脈の再発,再アブレーションともに差はみられなかった。
[手技合併症]
周術期の死亡は両群ともになく,喘息,冠攣縮性狭心症,持続性低血圧(<90mmHgまたは昇圧剤投与を要するもの)などのATPに関連する合併症にも差はみられなかった。
★結論★AFに対するカテーテルアブレーションにおいて,ATPガイド下PVIは標準的PVIにくらべ1年後の心房性頻脈性不整脈再発を有意に抑制はしなかった。
ClinicalTrials.gov No.:NCT01477983
文献
  • [main]
  • Kobori A et al on behalf of the UNDER-ATP trial investigators: Adenosine triphosphate-guided pulmonary vein isolation for atrial fibrillation: the UNmasking Dormant Electrical Reconduction by Adenosine TriPhosphate (UNDER-ATP) trial. Eur Heart J. 2015; 36: 3276-87. Epub 2015 Aug 30. PubMed

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収載年月2015.09