循環器トライアルデータベース

ACS1
Azilsartan Circadian and Sleep Pressure - the 1st Study

目的 新規ARBのazilsartanは他のARBより降圧効果が強く,24時間にわたる降圧効果が期待される。amlodipineもCa拮抗薬のなかで降圧効果がもっとも強力で持続的に降圧する。睡眠時の血圧は心血管リスクと関連するが,これまでこの2剤の睡眠時の降圧効果を直接比較した試験はない。
本態性高血圧患者において,24時間自由行動下血圧測定(ABPM)で評価した睡眠時血圧に対するazilsartanの降圧効果をamlodipineと比較する。さらに,この効果を年齢別(<60歳,≧60歳)に評価する探索的解析も実施した。

一次エンドポイントは,睡眠時収縮期血圧(SBP)の変化。
コメント ARBとCa拮抗薬アムロジピンの心血管合併症予防効果を比較した試験としては,バルサルタンを用いた海外のVALUE試験とカンデサルタンを用いたわが国のCASE-J試験がよく知られている。VALUE試験では試験開始6ヵ月間における降圧度がアムロジピン群のほうが強かったために,二次エンドポイントである心筋梗塞と脳卒中の予防効果がアムロジピン群のほうが優れているという結果であった。またCASE-J試験では両群の血圧値がほぼ同等になったため心血管エンドポイント発生にも差がなかった。しかし,カンデサルタン群のほうがアムロジピン群よりも併用した降圧薬の数が有意に多かったことから,ARBがアムロジピン群と同等の降圧を得るためにはより多くの降圧薬併用が必要であることが示された。これまでARBに関する大規模臨床試験が多数行われているが,そのほとんどは降圧利尿薬の併用がなされていることも判明している。
それではお互いに併用薬なしで,head-to-headで対決した場合どちらの降圧効果が強いのか,という疑問があった。このACS1試験はそのテーマに挑んだ臨床試験である。しかも外来血圧値よりははるかに客観性の高い24時間血圧を用いての比較であり,試験されたARBは販売企業が自社のカンデサルタンも含めて従来のARBよりも降圧効果が強いと宣伝で強調している新規ARBアジルサルタンである。
その結果はなんと,ARBの完敗である。年齢別に検討しているが,60歳未満では24時間血圧や外来血圧の変化量に両薬剤群間に大きな差はないが,顕著なのは60歳以上である。60歳以上では,24時間血圧,昼間血圧,夜間血圧いずれもアムロジピン群のほうが有意に降圧度が大きかった。
60歳未満では降圧度には両治療群に差がないのに,コントロール率(あらかじめ設定した基準値以下になった症例の割合)はARB群で有意に大きかったとしているが,これは治療前値が,夜間血圧,昼間血圧,24時間血圧のいずれもがアジルサルタン群のほうが低かったことによるものである。降圧度とコントロール率の間に乖離が生じる場合には基本的には治療前の値が異なることに他ならない。
この結果は高齢者高血圧の第一選択薬としてはNICEガイドラインが推奨しているように,ARBよりもCa拮抗薬が適切であることを示している。最近の高血圧治療に関する大規模臨床試験の対象者の平均年齢はおおむね65歳前後であることを考えると,これまでARBがどうしてもCa拮抗薬に匹敵するだけの心血管合併症予防効果を証明できなかった理由の一端が明らかにされた点で意義のある試験である。
しかもこれはアジルサルタンを販売している企業の資金提供で行われている点で注目すべきである。これまでであれば発表されなかったか,あるいは試験を途中で打ち切られた可能性のある結果であるが,果敢に発表にこぎ着けた研究責任者とそれを容認した支援企業に敬意を表したい。
この結果が広く,正確に一般臨床医に周知されることを願うばかりである。(桑島
デザイン 無作為割付け,オープン,多施設(日本の99施設)。
期間 追跡期間は8週間。
対象患者 718例。≧20歳,ステージI~IIの本態性高血圧で,run-in開始時と試験治療開始時の座位SBPが140~179mmHg,拡張期血圧(DBP)が90~109mmHgの患者(文献2))。
除外基準:二次性・悪性高血圧,washout前の服用降圧薬≧2剤,run-in開始前24週間以内の心血管疾患・慢性腎臓病(CKD),シフトワーカーなど(文献2))。
■患者背景:平均年齢(<60歳:azilsartan群50歳,amlodipine群49歳;≧60歳:両群とも69歳),男性(61.8%, 58.1%;52.2%, 55.0%),BMI(両群とも26kg/m²;両群とも24kg/m²),現喫煙(22.4%, 25.7%;18.8%, 11.8%),睡眠時間(両群とも6時間;両群とも7時間),高血圧罹病期間(1,438日,1,099日;2,114日,2,116日),CKD(2.0%, 4.7%;4.3%, 1.9%),2型糖尿病(18.4%, 16.9%;20.8%, 21.8%),降圧薬投与歴(ARB:19.1%, 12.2%;27.1%, 28.0%,Ca拮抗薬:9.9%, 9.5%;24.6%, 25.6%,非投与:71.1%, 79.1%;46.9%, 45.0%),睡眠時血圧(137.3/84.0, 140.1/86.3mmHg;139.8/80.2, 140.1/80.5mmHg),覚醒時血圧(156.6/96.4, 158.4/98.4mmHg;156.0/90.3, 157.8/90.7mmHg),24時間血圧(150.6/92.5, 152.8/94.7mmHg;150.7/86.9, 152.1/87.4mmHg),診察室血圧(148.6/94.5, 147.9/93.8mmHg;150.4/87.3, 152.3/87.1mmHg)。
治療法 2週間のwashout,1週間のrun-in(投薬なし)後にランダム化(文献2))。
azilsartan群(359例):20mg 1回/日朝食前または朝食後に服用。
amlodipine群(359例):5mg 1回/日を朝食前または朝食後に服用。
他の降圧薬,抗狭心症薬,抗不整脈薬,ジギタリス製剤,カリウム製剤の併用は禁止。
睡眠時血圧は就寝~起床までの平均血圧,覚醒時血圧は残りの時間の平均血圧と定義。血圧コントロール率は目標血圧(睡眠時<120/70mmHg,覚醒時<135/85mmHg,24時間<130/80mmHg,診察室<140/90mmHg)達成患者の割合で評価。
結果 脱落はazilsartan群27例,amlodipine群23例。
[一次エンドポイント]
8週後の睡眠時血圧の低下はamlodipine群が有意に大きかった(SBP:azilsartan群-12.6mmHg vs amlodipine群-17.5mmHg[p<0.001], DBP:-7.1 vs -8.9mmHg[p=0.006])。
[二次エンドポイント]
睡眠時以外のSBPの低下もamlodipine群が有意に大きかったが(覚醒時:-14.9 vs –17.6mmHg[p=0.011],24時間:-14.0 vs -17.5mmHg[p<0.001],診察室:-17.0 vs -19.6mmHg[p=0.016]),DBPの変化には有意差を認めなかった。
[年齢別解析]
amlodipineによるSBPの低下は≧60歳でとくに顕著であった(睡眠時:-12.0 vs -18.3mmHg,覚醒時:-14.1 vs -18.7mmHg,24時間:-13.2 vs -18.6mmHg,診察室:-16.4 vs -21.5mmHg);覚醒時(p=0.002)以外はp<0.001。
一方,<60歳では,診察室DBPの低下がazilsartan群で大きかったことを除き(-11.7 vs -9.2mmHg[p=0.024]),有意差はなかった(年齢×睡眠時SBP低下の交互作用p=0.024)。
[血圧コントロール]
<60歳では,azilsartan群のほうがコントロール率が良好で(睡眠時:33.3% vs 20.3%[p=0.014],覚醒時:34.8% vs 21.0%[p=0.011],24時間:30.5% vs 17.4%[p=0.010]),診察室血圧のみが同等であった(66.0% vs 62.2%)。
≧60歳では,両群間に有意差はなかった。
[安全性]
薬剤関連の有害事象はazilsartan群6.1% vs amlodipine群1.7%。軽度の起立性低血圧やめまいが各群1例など大半が軽度のものであった。
★結論★ステージI~IIの本態性高血圧患者において,ABPMで評価した降圧はamlodipine群のほうがazilsartan群よりも大きく,高齢者で同群の降圧・血圧コントロールが良好だった。
ClinicalTrials gov No: NCT01762501
文献
  • [main]
  • (1) Kario K and Hoshide S: Age-related difference in the sleep pressure-lowering effect between an angiotensin II receptor blocker and a calcium channel blocker in Asian hypertensives: the ACS1 study. Hypertension. 2015; 65: 729-35. PubMed
  • (2) プロトコル
    Kario K and Hoshide S: Rationale, study design, and implementation of the ACS1 study: effect of azilsartan on circadian and sleep blood pressure as compared with amlodipine. Blood Press Monit. 2014; 19: 123-8. PubMed

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収載年月2015.07