循環器トライアルデータベース

FAST-MAG
Field Administration of Stroke Therapy-Magnesium

目的 硫酸マグネシウムの静注は脳卒中モデル動物において脳神経保護作用を示しているが,脳卒中患者を対象とした臨床試験(IMAGES)では発症後7.4時間(中央値)の投与で有効性は示されなかった。ただし,動物試験で神経保護薬効果が示されたのは発症後2時間以内に投与した場合であり,IMAGES試験でも3時間以内に投与を開始したサブグループでは有効な可能性が示唆された。
脳卒中が疑われる超急性期の患者において,救急隊員による発症後2時間以内の硫酸マグネシウム投与により長期の機能的転帰が改善するかを検討する。

一次エンドポイントは,90日後のmodified Rankin Scale(mRS)で評価した障害。
コメント 硫酸マグネシウムの静注投与は、虚血性脳卒中の神経保護効果を有することが、多くの動物実験で報告されている。発症後平均7.4時間以内に静注を開始したIMAGES試験では、有効性が認められなかったので、発症後2時間以内に投与を開始するプロトコルにしたのが、本試験(FAST-MAG)である。この迅速治療でも有効性は示されなかった。本試験は米国NIHが研究費を支援し、救急隊員が救急車の中で治療を開始する極めてユニークな試験デザインであり、医師が電話で患者への説明と同意をとる新しい試みである。これらの努力で迅速に治療が開始されていても有効性・安全性はプラセボ群と全く差がなかったことから、硫酸マグネシウムの臨床的有効性は否定されたと考えられる。(
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(米国ロサンゼルス市・オレンジ郡の救急車315台,病院60施設)。
期間 追跡期間は90日。
登録期間は2005年1月~'12年12月。
対象患者 1,700例。40~95歳,modified Los Angeles Prehospital Stroke Screen(LAPSS)で脳卒中疑いと判定され,発症2時間以内に治療を開始できた患者。
■患者背景:平均年齢69歳,女性42.6%,最終診断(脳虚血73.3%,頭蓋内出血22.8%,脳卒中様病態3.9%),平均Los Angeles Motor Scale(LAMS)スコア*3.7,白人(硫酸マグネシウム群77.5%,プラセボ群78.4%),ヒスパニック系(22.9%, 24.4%),高血圧(78.3%, 76.9%),糖尿病(22.1%, 22.3%),高脂血症(46.4%, 48.3%),心房細動(22.6%, 20.8%),喫煙(16.2%, 18.7%),飲酒(38.0%, 38.9%),入院中のNIHSSスコア(11.5, 11.2),脳虚血例での組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)静注(38.3%, 33.4%)。
発症~試験薬投与の時間45分(中央値),発症後60分以内の投与開始74.3%。
* LAMSスコア:範囲0~10,高スコアほど運動機能障害が重度。
治療法 硫酸マグネシウム群(857例):病院到着前に救急隊員が硫酸マグネシウム4g/生理食塩水54mLを15分でボーラス静注。到着後は救急部の看護師が維持量16g/240mLを10mL/時で24時間静注。
プラセボ群(843群)。
虚血性脳卒中では,発症後4.5時間以内のt-PA静注と脳血栓除去デバイスの使用を許可。
結果 [一次エンドポイント]
平均スコアは両群ともに2.7で,90日後のmRSスコア分布にも有意な群間差は認められなかった(スコア0:硫酸マグネシウム群18.7%,プラセボ群18.4%, 1:16.3%, 16.2%, 2:18.4%, 18.3%, 3:両群とも13.3%, 4:10.5%, 10.6%, 5:10.1%, 10.2%, 6:12.7%, 13.0%;p=0.28)。
[二次エンドポイント]
いずれの項目においても有意差を認めなかった。
非常に良好な転帰(mRSスコア0~1, Barthel index** ≧95,NIHSSスコア0~1, GOS[Glasgow Outcome Scale]*** スコア1):オッズ比0.97;95%信頼区間0.82~1.15(p=0.76)。
良好な転帰(mRSスコア≦2, Barthel index≧60,NIHSSスコア≦8,GOSスコア1~2):1.05;0.89~1.25(p=0.56)。
機能的転帰良好(mRSスコア0~1):36.5% vs 36.9%(p=0.87)。
神経学的障害(NIHSSスコア中央値):3 vs 3(p=0.28)。
機能的自立(mRSスコア≦2):52.4% vs 52.8%(p=0.87)。
** Barthel index:範囲0~100,高スコアほど機能的自立度が高い。
*** Glasgow Outcome Scale:範囲1~5,高スコアほど機能的転帰不良。
[安全性]
重篤な有害事象(51.2% vs 50.1%),症候性頭蓋内出血(2.1% vs 3.3%),死亡(15.4% vs 15.5%)に有意な群間差は認められなかった。
★結論★超急性期の脳卒中が疑われる患者において,病院到着前の硫酸マグネシウムの投与は安全であり,発症後2時間以内の治療開始は可能なことが示されたが,90日後の機能的転帰の改善は認められなかった。
ClinicalTrials gov No: NCT00059332
文献
  • [main]
  • Saver JL et al for the FAST-MAG investigators and coordinators: Prehospital use of magnesium sulfate as neuroprotection in acute stroke. N Engl J Med. 2015; 372: 528-36. PubMed

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収載年月2015.07