循環器トライアルデータベース

VA-CART Program
Veterans Affairs Clinical Assessment Reporting and Tracking

目的 CABG後の伏在静脈グラフト(SVG)狭窄の発生率は施行後5年間で50%にのぼり,治療としてPCIとステント植込み(SVG-PCI)がルーチンで行われている。しかし,SVGと固有冠動脈病変の病態生理は基本的に異なるため,固有病変に対するPCIにおいて比較したベアメタルステント(BMS)と薬剤溶出ステント(DES)のベネフィット,リスクがSVG-PCIでも当てはまるかは明らかではない。
米国の治療の質の評価と改善を目的とした国家的プログラムの一環として行われているVA-CART Programは,退役軍人(VA)施設の心臓カテーテル(心カテ)室で施行された全PCIの患者・手技および長期データを登録している。このデータを用いてSVG-PCI患者におけるDESとBMSの有効性,安全性を比較する。
評価項目は,短期転帰(心カテ室内での手技関連合併症:死亡,周術期心筋梗塞[MI],再灌流なし,解離,穿孔[パーフォレーション],急性標的血管閉塞),長期予後(死亡,MI)。
コメント SVGと固有冠動脈では血流形態・シアストレスの程度・吻合部の有無が異なるため血管局所での炎症反応には相違があり,再狭窄の病態生理は異なる。以前,SVG再狭窄に対するSESはBMSよりも6ヵ月後の再狭窄率は低いが32ヵ月後の死亡率が高いと報告されたが,DAPTは2ヵ月間のみであった。他の報告では,DESとBMSが同等,あるいはDESのほうがよいとするものなど一定の見解が得られておらず,短い追跡期間や小規模の研究であった。今回の研究は大規模で長期間follow-upしており,BMSと第1世代・第2世代DESの対比が可能となった。結果としては,第2世代DESはBMSや第1世代DESと同様にSVG再狭窄に対して安全に使用でき,2年間以上の長期follow-upでは最も死亡率が低いことが明らかとなった。SVG-PCI後1年ぐらいでは第1世代より第2世代DESのほうが心筋梗塞や死亡率がやや高い傾向にあるが,この原因は議論されていない。no-reflowがBMSで多い理由としては,静脈グラフト径が大きいとno-reflowが生じやすいとされており,静脈グラフト径が大きい場合にはDESでは対応できないのでBMSを植え込む確率が高くなることが影響しているかもしれない(今回静脈グラフト径は評価されていない)。
limitationとしては,VA病院コホートなのでほとんどが男性,高血圧97%,脂質異常症97%,糖尿病60%,喫煙57%であり,片寄った症例群であること,心筋梗塞はICD-9コードから選出しており疾病内容が不明であること,心血管死亡率が不明で抗血小板薬の期間は明らかでないこと,follow-up CAGが未施行であること,などが考えられる。それでも,SVG-PCIも通常のPCIと同様,DESが長期的に安全で有効に使用できることが確立されたことは重要なエビデンスである。(星田
デザイン 後ろ向きコホート研究,多施設(退役軍人施設63施設)。
期間 SVG-PCI施行期間は2007年10月1日~’11年9月30日,転帰の評価は’12年9月30日まで実施。
参加者 2,471例。SVG-PCI施行例。
除外基準:手技詳細(PCIの適応,ステントタイプなど)不明,SVG-PCI既往,DESとBMSの両方を植込んだもの。
■患者背景:年齢中央値67歳(DES群66歳,BMS群68歳*),男性99.4%,白人91.1%,高血圧97.3%,高脂血症96.5%(97.1%, 95.6%;p=0.01),糖尿病59.7%(61.2%, 57.0%;p=0.03),喫煙57.2%,肥満46.8%(49.5%, 42.3%*),うっ血性心不全37.0%,慢性閉塞性肺疾患25.3%,脳卒中/一過性脳虚血発作30.0%,末梢血管疾患(PVD)36.5%,腎疾患16.7%,PCI歴70.9%,MI既往51.2%,PCI適応:ST上昇型MI 4.1%(3.2%, 5.5%*);非ST上昇型MI 27.0%;不安定狭心症29.6%;安定狭心症26.3%,心原性ショック1.1%。
* p<0.001
・病変・手技背景:標的固有血管(左回旋枝42.0%;右冠動脈36.6%),グラフト病変部位(SVG体部65.4%,大動脈入口部20.9%,吻合部11.0%)。
右冠動脈病変にはBMSが植込まれる傾向がみられた一方で,対角枝領域への植込みはDESが多かった。さらに,BMS例ではグラフト病変部位がSVG体部が多く,吻合部が少なかった。
全SVG-PCIの1/3が塞栓防止デバイスを使用していたが,ステントのタイプによる違いはなかった。
調査方法 全例のほか,propensity-matchedコホート(1,796例)でもDES群(901例)とBMS群(895例)の比較を行った。propensity scoreには年齢,性,PCI適応などの他に,手技前6か月の転倒リスク(Morse Fall Scaleスコア<25:低リスク,25~45:中等度リスク,>45:高リスク)も含んだが,スコアのない場合は低リスクに分類した。
第一世代DESはpaclitaxel溶出ステント,sirolimus溶出ステント,第二世代ステントはeverolimus溶出ステント,zotarolimus溶出ステントとした。
結果 [SVG-PCIにおけるDES施行率推移]
DES群1,549例(62.7%),BMS群922例(37.3%)で,第一世代DESは34%,第二世代DESが66%。
DESの植込みは2008年の50%から’11年には69%に増加。
[心カテ室内の手技関連合併症]
発生率は2.5%で,ステントタイプによる差はみられなかった(BMS群2.8% vs DES群2.3%, p=0.54)。
最も多かった合併症は,non-reflow(82例[3.3%])で,DES群にくらべBMS群で多かった(4.9% vs 2.4%, p<0.001)。propensity-matchedコホートでも同様であった(4.7% vs 2.3%, p=0.01)。
周術期MIは19例(0.8%),解離15例(0.6%)で,DES群,BMS群間に差はなかった。
パーフォレーションは13例(0.5%)で,BMS群のほうが多く(10例 vs 3例,p=0.01),これはpropensity-matchedコホートでも同様であった。
周術期の死亡はDES群の1例のみであった。
周術期の不整脈,肺浮腫,心原性ショック,脳卒中に両群間差はみられなかった。
[MI]
propensity-matchedコホート群での施行から365日間のKaplan-Meier推定発症率はBMS群7.75%(95%信頼区間6.20~9.70),DES群6.02%(4.60~7.80):第一世代DES群4.64%(2.90~7.40);第二世代DES群7.03%(5.10~9.70)。
730日後はBMS群11.38%(9.40~13.70),DES群10.49%(8.60~12.80):第一世代群9.48%(6.90~13.00);第二世代群11.16%(8.60~14.40)。
平均30か月追跡のBMS群とくらべたDES群のハザード比は0.94(0.71~1.24)で,ステントタイプによる差もみられなかった。
[死亡]
propensity-matchedコホート群での施行から365日間のKaplan-Meier推定発生率は,BMS群11.69%(9.70~14.00),DES群8.80(7.10~10.90):第一世代群7.92%(5.60~11.20);第二世代群9.44%(7.20~12.40),730日後はそれぞれ21.07%(18.40~24.00),15.46%(13.20~18.10):15.32%(12.00~19.50);15.43%(12.40~19.00)。
平均追跡期間33か月のBMS群にくらべたDES群のハザード比は0.72(0.57~0.89)。第二世代DES群のほうがBMSとくらべた死亡リスクは低かったが,第一世代DES群との間に有意差は認められなかった。
★結論★CABG施行例における伏在静脈グラフト病変へのPCIではDESの使用が増加している。2年後以降の転帰においてDESはBMSにくらべ安全で有効である。

[主な結果]
  • Aggarwal V et al: Safety and effectiveness of drug-eluting versus bare-metal stents in saphenous vein bypass graft percutaneous coronary interventions: insights from the Veterans Affairs CART program. J Am Coll Cardiol. 2014; 64: 1825-36. PubMed

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収載年月2015.02