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FAMOUS-NSTEMI

目的 非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)患者における治療法の決定において,冠血流予備量比(Fractional Flow Reserve:FFR)ガイドと冠動脈造影ガイドとを比較する。

一次エンドポイントは薬物治療患者の割合。
コメント FAMOUS-NSTEMIはST非上昇型心筋梗塞(NSTEMI)患者の治療法決定における冠血流予備量比(Fractional Flow Reserve: FFR)ガイドストラテジーと冠動脈造影ガイドストラテジーを比較するランダム化比較試験である。
本試験からの知見は以下の通りである。
(1) NSTEMI 患者350例において,急性冠症候群(ACS)の急性期に責任病変/非責任病変を問わず冠動脈造影目視評価狭窄度30%以上の706病変中704病変にFFR評価が安全に施行可能であった。
(2) FFRガイドストラテジー群では21.6%の患者において予定されていた治療(PCI/CABG/内科治療)が変更され,冠動脈造影ガイドストラテジーに比較して内科治療(冠動脈血行再建なし)が選択された症例が有意に多かった(22.7% vs 13.2%, P=0.022)。
(3) 12ヵ月の臨床アウトカム(MACE: 心臓死/心筋梗塞あるいは心不全による入院)には両群で差を認めなかったが,FFRガイドストラテジー群では手技関連心筋梗塞が少ない傾向にある一方で,自然発生心筋梗塞が多い傾向があった。

まさに「優れた研究はResearch Questionに対する回答よりもさらに多くの疑問を提供する」という印象である。ACSにおける責任病変/非責任病変のFFR評価は重要な課題であると同時にその安全性/有用性には疑問があった。FAMOUS-NSTEMIは少なくともNSTEMI(STEMI以外のACS)において急性期のFFR評価が安全に施行可能であること示した。
一方,ACSにおける責任病変/非責任病変のFFR評価の有用性については以下のように依然として不明な点が多い。
(1) 心筋梗塞急性期で冠微小循環障害が存在する状況におけるFFR評価は正確か?
(2) FFR評価が正確であったとして,ACS責任病変においては血栓形成や冠攣縮など瞬時に変化する因子が心筋虚血発症に関与していると想定される中で,ある時点のFFRをもって冠動脈血行再建の適応を決定することは妥当か?
(3) ACS患者の非責任病変はplaque vulnerabilityが高いとされ,FFR評価時点で生理学的に有意でない病変が将来の心血管イベントの責任病変となる可能性がある。PRAMI試験やCvLPRIT試験では冠動脈造影ガイドでの非責任病変を含めた完全血行再建の有用性が示唆されているが,FFRガイドで完全血行再建の適応を決定することで逆にその有用性が失われることはないか?
これらの新たな疑問に回答を出すためには,臨床アウトカム評価に十分な検出力を有する大規模試験(FFR-guided Complete Revascularization versus Culprit-only Revascularization, FFR-guided versus Angiography-guided Culprit Revascularization, FFR-guided versus Angiography-guided Complete Revascularizationなどのデザイン)が必要である。これらの試験結果が明らかになる時,ACS患者における冠動脈血行再建治療はさらに成熟の域に達するものと考える。(木村
デザイン 無作為割付け,多施設(英国の6施設)。
期間 追跡期間は12か月。
登録期間は2011年10月~’13年5月。
対象患者 350例。最近NSTEMIと診断され,糖尿病などの冠動脈疾患の危険因子を1つ以上有しているもので,心筋虚血発症から72時間以内に緊急侵襲的治療が予定されている,あるいは5日以内の虚血症状再発既往例。
冠動脈造影登録基準:≧30%の狭窄病変が1つ以上あり,TIMI grade III。
除外基準:薬物治療ではコントロールできない虚血の症状;血行動態不安定;ST上昇が持続する心筋梗塞(MI);抗血小板薬不忍容など。
■患者背景:平均年齢(FFRガイド群62.3歳,冠動脈造影ガイド群61.6歳),男性(75.6%, 73.0%),初診時にECG上の虚血を認めたもの(77.8%, 82.2%),6か月以内の死亡あるいはMIのGRACEスコア(両群とも146);>140(58.0%, 55.7%),糖尿病(14.8%, 14.9%),既往:心房細動/粗動(6.8%, 4.0%);脳卒中/一過性脳虚血発作(8.5%, 5.2%);末梢血管疾患(両群とも8.0%);MI(12.5%, 13.8%);PCI(10.8%, 10.9%);高血圧治療(44.3%, 46.6%);高コレステロール血症治療(40.3%, 32.2%),喫煙(現在:40.9%, 40.8%,禁煙後>3か月:31.2%, 27.0%),CCS IV度の狭心症(94.3%, 89.7%),NYHA心機能分類 I度(87.5%, 88.5%),フレイルティ良好(87.1%, 87.8%)。
・FFR・血管造影・手技背景:FFR≦0.80(430病変[61.1%]:FFRガイド群142例・208病変[平均FFR 0.56],冠動脈造影ガイド群145例・222病変[0.58]),左前下行枝近位部,中間部の1病変以上がFFR≦0.80(40.9%, 49.4%)。≧30%狭窄(355病変,351病変);≧50%(172例・331病変,168例・314病変),左前下行枝近位部,中間部の1病変以上が≧50%狭窄(65.3%, 63.2%)。
橈骨アクセス(89.8%, 90.2%),造影・PCIを含む手技時間(66.5分,70.5分),ステント数/患者(1.1, 1.4),総ステント長/患者(24.4, 29.4mm)。
aspirin(両群とも99.4%),clopidogrel(96.0%, 97.1%),スタチン(95.5%, 96.0%),β遮断薬(91.5%, 84.5%),低分子量heparin(93.8%, 96.6%)。
治療法 冠動脈造影後,造影登録基準を満たした患者をランダム化。
冠動脈造影とその他の情報をもとに治療プランを決定後,FFRを測定。
FFRガイド群(176例):FFRはadenosine静注(140μg/kg/分)による冠動脈充血時に測定。FFR≦0.80例はPCI,CABGを,>0.80例は至適薬物治療(OMT)のみを実施。FFR後に治療プランが変更された場合は,前向きに追跡して記録した
冠動脈造影ガイド群(174例):FFRガイド群と同様にFFRを測定するが,結果は開示しない。
結果 ・発症から冠動脈造影までの期間は3日(中央値),イベントあるいは直近の胸痛から5日以内に81%が実施(FFRガイド群3日,冠動脈造影群4日)。
・FFRを測定したのは,狭窄率≧30%の704/706病変(99.7%)。
・冠動脈造影での有意な狭窄病変は,1枝病変(FFRガイド群35.2%,冠動脈造影群39.1%),2枝病変(40.9%, 39.7%):3枝病変(18.8%, 15.5%),FFR測定での有意狭窄病変(FFR<0.80)は,1枝病変(両群とも51.7%);2枝病変(22.2%, 24.1%);≧3枝病変(6.8%, 7.5%)。
[一次エンドポイント]
薬物治療を実施したのは,FFRガイド群のほうが冠動脈造影ガイド群より多かった(40例[22.7%] vs 23例[13.2%]:リスク差9.5%[95%信頼区間1.4~17.7%], p=0.022;相対リスク1.72[1.08~2.82])。
・FFR群での治療法の変化のうち,決定治療法がOMT単独(40例)だったのは,冠動脈造影後の治療法選択がCABG+OMT(14例)→ FFR測定後2例,PCI+OMT(144例)→ 25例,OMT単独(18例)→ 13例。
血行再建術は,136例(77.3%) vs 151例(86.8%)。
PCIは125例(71.0%) vs 139例(79.9%):リスク差-8.9%(ー18.1~0.2%), p=0.057;CABGは11例(6.2%) vs 12例(6.9%):-0.7%(-6.2~4.8%)。
[その他のイベント]
心血管死,非致死的MI,脳卒中/一過性脳虚血発作による予定外の入院(7.4% vs 9.2%),心臓死,心不全による予定外の入院(8.0% vs 8.6%),全死亡(2.8% vs 1.7%)など両群間に有意差のあったものはなかった。
MIは11例(6.2%) vs 15例(8.6%)で,うち手技関連は2.8% vs 6.3%,自然発症は4.0% vs 2.9%であった。
[その他]
12か月後の健康関連QOL(EQ-5D:0.844 vs 0.804),ベースラインから12か月後までの健康状態の変化(0.066 vs -0.010)は両群同等であった。
コスト:入院期間は6.1日 vs 6.5日で,material cost(ガイド・バルーンカテーテル,ステントなど)がFFR群で有意に高かった(1,095 vs 822ポンド,p<0.01)以外は入院費用(5,701 vs 6,117ポンド)など両群間に有意差はなかった。
★結論★NSTEMI患者において,急性期のFFR測定は安全に施行可能であり,FFRガイド治療は冠動脈造影ガイド治療にくらべ血行再建術を減少させた。
ClinicalTrials gov No: NCT01764334
文献
  • [main]
  • Layland J et al on behalf of the FAMOUS-NSTEMI investigators: Fractional flow reserve vs. angiography in guiding management to optimize outcomes in non-ST-segment elevation myocardial infarction: the British Heart Foundation FAMOUS-NSTEMI randomized trial. Eur Heart J. 2015; 36: 100-11. (Epub 2014 Sep 1.) PubMed
    De Bruyne B and Adjedj J: Fractional flow reserve in acute coronary syndromes. Eur Heart J. 2015; 36: 75-6. (Epub 2014 Sep 1.) PubMed

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収載年月2014.10