循環器トライアルデータベース

SWEDEHEART
Swedish Web-System for Enhancement and Development of Evidence-Based Care in Heart Disease Evaluated According to Recommended Therapies

目的 慢性腎臓病(CKD)を合併した心房細動(AF)患者は,CKD非合併例にくらべ虚血性脳卒中および血栓塞栓症のリスクが高い。抗凝固薬のwarfarinは,ランダム化比較試験において腎機能低下症例が除外されていたにもかかわらず,CKD合併例にも使用されてきた。しかし,そのような患者では死亡や脳卒中のリスクが増加するとの報告がある一方で,否定する報告もあり,またそれらのリスクが有用性を上回る腎機能低下レベルも明らかでない。
スウェーデンの循環器救急医療施設に入院した患者全例が登録されているSWEDEHEARTのデータを用いて,AF患者におけるwarfarin治療の転帰と腎機能の関係を検討する。

おもな評価項目は,退院後1年以内の(1) 死亡,心筋梗塞(MI)による再入院,虚血性脳卒中の複合エンドポイント(いずれか最初に発生したもの),(2) 出血(出血性脳卒中,消化管出血,出血による貧血,その他による再入院の複合エンドポイント),(3) (1)+(2)。
コメント JAMA. 2014; 311: 919-28. へのコメント
心房細動(AF)と慢性腎臓病(CKD)の合併はありふれた病態である。CKDでは,心筋梗塞や脳卒中などの血栓塞栓症リスクが高く,また同時に出血を伴いやすい。血栓塞栓症と出血のリスクは腎機能悪化に伴い指数関数的に増加することも知られている。AFとCKDの合併症例におけるワルファリンの効果について,SWEDEHEARTはCKDの重症度に関係なく,ワルファリンが有効であることを示した。新規経口抗凝固薬(Novel Oral Anticoagulant:NOAC)が腎機能により使用に制限があることから,AFとCKDの合併症例におけるワルファリンのエビデンスが示されたことの意義は大きい。(中村中野永井
デザイン 前向きコホート研究,多施設(72施設)。
期間 登録期間は2003年~’10年。
参加者 24,317例。急性冠症候群疑いで冠動脈疾患集中治療室(CCU)に入院した連続症例。急性心筋梗塞(AMI)入院例15万8,059例中,AFを合併していた34,087例から血清クレアチニン・warfarin治療・年齢に関する情報がないもの,入院中に死亡,SWEDEHEARTへの登録歴のあるものなどを除外した。
■患者背景:年齢*(warfarin投与例78歳,非投与例80歳),男性(63.9%, 58.2%),喫煙(10.0%, 14.1%),BMI*(26.2kg/m², 25.5kg/m²),クレアチニン*(1.09mg/dL, 1.07mg/dL),推算糸球体濾過量(eGFR)*(59.2, 58.8mL/分/1.73m²),糖尿病(30.4%, 27.5%),高血圧(54.0%, 53.4%),MI(39.2%, 39.4%),心不全(50.6%, 41.0%),虚血性脳卒中(23.3%, 17.8%),出血(7.2%, 11.2%),CHADS2 スコア≧2(81.9%, 77.9%),PCI歴(13.6%, 11.5%),CABG歴(17.0%, 11.8%)。
* 中央値
入院後経過:非代償性心不全(25.9%, 26.6%),ST上昇型MI(18.5%, 22.3%),PCI(27.3%, 30.3%),EF<50%(66.1%, 59.6%),新規のAF(18.5%, 26.6%)。
調査方法 退院時warfarin投与例(5,292例[21.8%])と非投与例(19,025例)の転帰を,腎機能別(腎機能正常~CKDステージ1/2[eGFR>60 mL/分/1.73m²]:11,734例,ステージ3[>30~60 mL/分/1.73m²]:10,139例,ステージ4[>15~30 mL/分/1.73m²]:1,966例,ステージ5[≦15 mL/分/1.73m²]:478例)に評価。死亡データはSwedish population registryと照合(~2011年12月31日)。
結果 [複合エンドポイント]
死亡,MIによる再入院,虚血性脳卒中の複合エンドポイント発生は,9,002例(37.0%)。
腎機能レベルを問わず,warfarin投与例は非投与例にくらべリスクが有意に低かった。
ステージ1/2:warfarin投与例28.0 vs非投与例36.1/100人・年;調整ハザード比0.73(95%信頼区間0.65~0.81),ステージ3:48.5 vs 63.8/100人・年;0.73(0.66~0.80),ステージ4:84.3 vs 110.1/100人・年;0.84(0.70~1.02),ステージ5:83.2 vs 128.3/100人・年;0.57(0.37~0.86)。
[出血]
出血イベント発生は1,202例(4.9%)。
腎機能レベルを問わず,warfarin投与による出血リスクの有意な上昇は認められなかった。
ステージ1/2:5.0 vs 4.8/100人・年;1.10(0.86~1.41),ステージ3:6.8 vs 6.3/100人・年;1.04(0.81~1.33),ステージ4:9.3 vs 10.4/100人・年;0.82(0.48~1.39),ステージ5:9.1 vs 13.5/100人・年;0.52(0.16~1.65)。
[複合エンドポイント+出血]
複合エンドポイント+出血イベント発生は9,592例(39.4%)。
腎機能レベルを問わず,warfarin投与例は非投与例よりもリスクが低かった。
ステージ1/2:32.1 vs 40.0/100人・年;0.76(0.69~0.84),ステージ3:53.6 vs 69.0/100人・年;0.75(0.68~0.82),ステージ4:90.2 vs 117.7/100人・年;0.82(0.68~0.99),ステージ5:86.2 vs 138.2/100人・年;0.55(0.37~0.83)。
★結論★AFを合併した急性心筋梗塞患者において,warfarin投与例は非投与例にくらべ1年後の死亡,MI,虚血性脳卒中のリスクが低く,出血リスクの増加も認められなかった。この関連性はCKDの重症度とは関連しなかった。

[主な結果]
  • Carrero JJ, et al: Warfarin, kidney dysfunction, and outcomes following acute myocardial infarction in patients with atrial fibrillation. JAMA. 2014; 311: 919-28. PubMed
  • MI既往の80歳以上の高齢患者において, ticagrelorはclopidogrelにくらべ, MIおよび脳卒中のリスクは低減するものの,死亡および出血イベントについてはリスクが増加。
    心筋梗塞(MI)既往の80歳以上の高齢患者におけるticagrelorとclopidogrelの有効性および安全性を比較検討。対象は,2010~2017年に組み入れられた,MIによる入院後も生存の80歳以上の高齢患者で,aspirinとticagrelorまたはclopidogrel併用による抗血栓療法を受けている14005例(ST上昇型MIの割合は,31.6%)。
    一次エンドポイントは,死亡,MI,脳卒中の複合。さらに,出血による再入院についても解析を行った。
    [一次エンドポイント:死亡,MI,脳卒中の複合]
    • 複合一次エンドポイントの発生率は,ticagrelor群とclopidogrel群で同等(ticagrelor群18.7/100人・年 vs. clopidogrel群32.8/100人・年,HR 0.97; 95%CI 0.88~1.06)。
    • 一次エンドポイントを構成する項目ごとにみると,リスク/ベネフィットにはばらつきが認められた。新規MIおよび脳卒中ではticagrelor群でリスクが低下したのに対し(MIのHR 0.80; 95%CI 0.70~0.92,脳卒中のHR 0.72; 0.56~0.93),死亡リスクは増加(HR 1.17; 1.03~1.32)。
    [安全性のエンドポイント:出血による再入院]
    • ticagrelor群で有意にリスクが増加(HR 1.48; 95%CI 1.25~1.76)。
    [感度解析:80歳未満の患者での検討]
    • 80歳未満の患者では,複合一次エンドポイントを構成するすべての項目でclopidogrel群にくらべticagrelor群でリスクは低減(MIのHR 0.82,脳卒中のHR 0.82,死亡のHR 0.85)したが,出血イベントはticagrelor群でリスク増加(HR 1.32; 1.18~1.47)。
    Szummer K, et al: Comparison Between Ticagrelor and Clopidogrel in Elderly Patients with an Acute Coronary Syndrome: Insights from the SWEDEHEART Registry. Circulation. 2020 Sep 1 [Epub ahead of print]. PubMed
  • 非閉塞性心筋梗塞患者の二次予防において,スタチン,ACE阻害薬/ARBの長期有益性,β遮断薬は有効な傾向,DAPTは中立的であることが示された。
    19万9,162例の心筋梗塞(MI)入院患者のうち,退院30日後に生存していた非閉塞性(狭窄率<50%)冠動脈疾患患者9,136例(平均年齢65.3歳,女性61%)を追跡し,薬物治療と主要有害心イベント(MACE)の関係を,propensity scoreマッチングした非治療例と比較し推定ハザード比(HR;95%信頼区間)で示した。登録期間は2003年7月~’13年6月,追跡は’13年12月まで。平均追跡期間4.1年(DAPTのみ追跡期間はMI発症後1年)。
    退院時のスタチン投与例は84.5%,ACE阻害薬/ARB 64.1%,β遮断薬83.4%,2剤併用抗血小板療法(DAPT)66.4%。一次エンドポイント(MACE)は,2,183例(23.9%)。
    MACEのHRはスタチン:0.77;0.68~0.87,ACE阻害薬/ARB:0.82;0.73~0.93,β遮断薬:0.86;0.74~1.01,DAPT:0.90;0.74~1.08。年齢,性別のサブグループでも結果は一貫していたが,ACE阻害薬/ARBと年齢(≧70歳,<70歳)のみに有意な交互作用がみられた(p=0.002)。
    Lindahl B, et al: Medical therapy for secondary prevention and long-term outcome in patients with myocardial infarction with nonobstructive coronary artery disease. Circulation. 2017; 135: 1481-9. PubMed
  • 急性心筋梗塞後のACE阻害薬/ARB投与と転帰-退院例の71%が投与。腎機能を問わず,幅広いリスク患者の3年後生存率改善と関連。
    急性心筋梗塞(AMI)後の腎機能などのリスクレベルが異なる患者において,ACE阻害薬/ARB投与と長期予後との関係を検証した結果:2006~’09年にAMIで入院し生存退院した64,442例。追跡は2010年末までの3年。
    退院時投与例は45,697例(70.9%),うちACE阻害薬58.4%,ARB 13.6%。投与例背景:年齢中央値71歳,男性65.5%,合併症(高血圧60.5%,糖尿病27.1%,MI既往26.4%,心不全23.5%,脳卒中既往13.7%,PCI(11.9%)・CABG(9.2%)歴,心房細動11.3%)。推算糸球体濾過量(eGFR)中央値は74mL/分/1.73m²で,投与例の割合は>60 mL/分/1.73m²例(70.3%)の72%から透析例の51%に低下。
    3年後の全死亡は12,745例(19.8%)。ACE阻害薬/ARB投与例は非投与例よりリスクが低かった(17.4% vs 25.4%)。死亡リスクは腎機能が低下するごとに上昇したが,透析例を含むいずれの腎機能レベルでも投与例のほうが低かった。急性腎障害リスクは低く,eGFRによる違いはなかったものの,投与例で有意に高かった(2.5% vs 2.0%)。また投与例は3年後のMI(発症率15.6%)リスクも有意に低かったが,脳卒中(5.7%)との有意な関係はみられなかった。
    Evans M, et al: Angiotensin-converting enzyme inhibitors and angiotensin receptor blockers in myocardial infarction patients with renal dysfunction. J Am Coll Cardiol. 2016; 67: 1687-97. PubMed
  • 50歳以下のCABG-全施行例のおよそ5%で,約11年後の生存率,主要心血管イベント回避率は>50歳より有意に高い。長期死亡,有害転帰の危険因子は>50歳と同様。
    1997~2013年にprimary CABGのみを施行した76,780例のうち,≦50歳の患者の長期生存率,有害心血管イベント,リスク上昇関連因子を検証した結果(4,086例[5.3%];平均年齢46.2歳・女性18%;追跡期間中央値10.9年):51~70歳群(36,442例[47.5%];61.2歳),>70歳群(36,252例[47.2%];74.8歳)と比較した。
    41,162人・年追跡で死亡は490例(12%),うち心血管死は5.8%,非心血管死4.8%,原因不明死1.8%。30日後の死亡は33例(0.81%)。生存率は5年後96%,10年後90%,15年後82%で,51~70歳群,>70歳群より有意に高かった。
    全死亡,再血行再建術,心筋梗塞(MI)・心不全・脳卒中による再入院の複合エンドポイントの累積発生率は32%で,MI,再血行再建術(14%)が多かった。リスク上昇と有意に独立して関連した因子は,慢性腎臓病,1型糖尿病,高血圧,末梢血管疾患,EF低下,慢性閉塞性肺疾患など。一方,PCI・MI既往例,内胸動脈グラフト使用例はリスクが有意に低く,>40歳か否かによる違いはみられなかった。複合エンドポイント回避率は,5年後83%,10年後68%,15年後51%で,51~70歳群,>70歳群より有意に高かった。
    Dalén M, et al. Coronary artery bypass grafting in patients 50 years or younger: a Swedish nationwide cohort study. Circulation. 2015; 131: 1748-54. PubMed
  • hs-cTnTと転帰-軽微上昇(14~49ng/L)例は22%。MI診断例が少ない不均一集団ながらリスクは高く,1年死亡リスクは14ng/Lから上昇。
    第5 世代高感度心筋トロポニンT(hs-cTnT)アッセイ(検出限界5ng/L,健常者の99パーセンタイル値14ng/L)の臨床導入の意義を明らかにするため,従来のアッセイで検出できなかった14~49ng/Lの患者の特徴を明らかにし,死亡リスクが上昇し始める閾値を検証した結果(2009~’12年登録の48,594例;追跡期間1年):入院中の最大hs-cTnT値により次の4群に分類:<6ng/L(対照)群(5,790例[11.9%];年齢中央値58歳),6~13ng/L群(6,491例[13.4%];66歳),14~49ng/L群(10,476例[21.6%];73歳),≧50ng/L群(25,837例[53.2%];72歳)。
    14~49ng/L群は≧50ng/L群にくらべ年齢,性,保有危険因子は同様ながら,心疾患既往や入院時不整脈,薬物治療例が多かった。入院中はhs-cTnT高値群ほど冠動脈造影・心エコーの実施率が高く,それに伴い有意狭窄例・左室収縮機能低下例が増加。退院時に急性冠症候群と診断されたのはそれぞれ30.5%, 48.3%, 61.7%, 89.6%で,うち心筋梗塞(MI)は2.2%, 2.6%, 18.2%, 81.2%。1年後の死亡率は1.6%, 2.4%, 10.3%, 17.1%。hs-cTnTを20群にわけると,調整死亡率は14~18ng/Lから段階的に上昇した。
    Melki D, et al: Implications of introducing high-sensitivity cardiac troponin T into clinical practice: data from the SWEDEHEART registry. J Am Coll Cardiol. 2015; 65: 1655-64. PubMed
  • CABG後の糖尿病と長期死亡率-T1DMの6年後の死亡リスクは非糖尿病例の2倍以上,T2DMのリスク上昇はわずか。
    2003~’13年に非緊急primary CABGのみを施行した39,235例のうち,糖尿病患者(23%)の長期死亡リスクを,1型(T1DM;725例[1.8%]・平均年齢58.8歳,女性42.1%,罹病期間40.8年),2型(T2DM;8,208例[21%]・67.4歳,23.1%,9.6年)にわけて検証した結果(平均追跡期間5.9年):T1DM例はT2DM例より腎機能が低く,末梢血管疾患,心不全が多かった。
    死亡は6,765例(17%)。非糖尿病例の死亡率は17%(男性16%,女性19%),T1DM 21%(19%, 24%),T2DM 19%(18%, 22%)。非糖尿病例と比較した死亡の調整ハザード比はT1DMが2.04(95%信頼区間1.72~2.42),T2DMが1.11(1.05~1.18)。死因別にみると,T1DMは非心血管(CVD)死との関連が強く,T2DMとCVD死の有意な関連はみられなかった。
    Holzmann MJ, et al: Long-term prognosis in patients with type 1 and 2 diabetes mellitus after coronary artery bypass grafting. J Am Coll Cardiol. 2015; 65: 1644-52. PubMed

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収載年月2014.12
更新年月2020.09