循環器トライアルデータベース

U.S. CoreValve High Risk Study(CoreValve Pivotal)

目的 手術高リスクの重症大動脈弁狭窄患者において,自己拡張型経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)の安全性,有効性を外科的大動脈弁置換術(SAVR)と比較する非劣性試験。

一次エンドポイントは1年後の全死亡。
コメント N Engl J Med. 2014; 370: 1790-8. へのコメント
症候性の重症ASで手術ハイリスク例に対して,選ばれた心臓血管外科医のいる選ばれた施設では,CoreValveによるTAVRが開胸外科手術によるSAVRよりも1年後の生存率が有意に高いことが今回のメインの結果である。主要有害心脳血管イベントも有意に少ないが,QOLやNYHAクラスには差はみられていない。PARTNER-A試験よりも手術リスクが少し低い症例が今回対象となっており,脳血管障害の発生率がPARTNER-A試験と異なってSAVRと同等である。長期予後と関連する弁周囲逆流がTAVRでは多いので,1年後の結果だけでは満足できない。しかし,術後早期に見られた弁周囲逆流が中等度や高度であってもその3/4の症例が1年後には軽度になっている。CTで大動脈弁輪径を正確に計測し,大動脈弁輪と装着する人工弁の位置関係を模索することで弁周囲逆流の頻度は低下しており,長期予後にも期待できる内容である。これまでの報告と同様,CoreValveは少し長いのでペースメーカー必要例が多くデバイスの何らかの改善がより望ましい。一般の施設で行われるreal worldでの成績でもCoreValveによるTAVRがSAVRより優位であれば大きな期待が寄せられる。Sapien XTとCoreValveとの直接対決はCHOICE studyで報告されつつある。(星田
デザイン 無作為割付け,多施設(米国の45施設),intention-to-treat(ITT)・as-treated解析。
期間 追跡期間はTAVR群14.1か月,SAVR群12.8か月。
登録期間は2011年2月~’12年9月。
対象患者 ITT解析795例;as-treated解析747例。重症大動脈狭窄*,NYHA心機能分類II度以上の心不全患者で,SAVRによる死亡リスクが高い**もの。
* 大動脈弁口面積(AVA)≦0.8cm²あるいは体表面積補正AVA係数≦0.5cm²/m²,および平均大動脈弁圧較差>40mmHgあるいは最高大動脈弁通過血流速度>4.0m/秒。
** 施行施設の心臓外科医2名,インターベンション循環器内科医1名が術後30日までの予測死亡リスク≧15%,および死亡あるいは不可逆性の合併症リスク<50%と推定したもの。手術のリスクはSTS PROM(Society of Thoracic Surgeons Predicted Risk of Mortality)でも評価した。
■患者背景(as-treated解析例):平均年齢83.2歳,男性52.7%,STS PROMに基づく30日後の予測死亡率7.4%,併存症の重症度指標であるCharlson comorbidity indexスコア(範囲0~33)≧5(重症)55.8%。
糖尿病合併(TAVR群34.9%,SAVR群45.4%, p=0.003),インスリンによるコントロール例(11.0%, 13.2%),NYHA心機能分類(III度:65.4%, 69.5%,IV度:20.3%, 17.4%),Logistic EuroSCORE(17.7%, 18.6%),慢性腎臓病(CKD)ステージ4/5(12.2%, 12.8%),高血圧(95.1%, 96.1%),末梢血管疾患(41.1%, 41.7%),冠動脈疾患(75.4%, 75.9%),CABG既往(29.5%, 31.1%),PCI既往(34.1%, 37.5%),ペースメーカーまたはICD例(23.3%, 21.3%),うっ血性心不全(95.4%, 96.6%),心房細動(AF)/粗動既往(40.9%, 45.9%)。
治療法 各施設の最初の登録3例は“roll-in”としランダム化はせず,CoreValveデバイス体験症例とした。
TAVR群(ITT解析394例,as-treated解析390例):自己拡張型CoreValveを使用。弁サイズはCT造影をもとに決定した。手技前および手技後3か月間は2剤併用抗血小板療法(aspirin 81mg/日以上,clopidogrel 75mg/日)を推奨。その後,同量のaspirinまたはclopidogrelを単剤で無期限投与。他の理由でwarfarinが必要となった場合は,clopidogrelを投与せず,aspirin 81mg/日以上とwarfarinを無期限投与した。
SAVR群(401例,357例):心肺バイパスを使用した現行の開胸術。術後,warfarin継続投与例も含む全例にaspirin 81mg/日以上を無期限投与した。
as-treated解析後にITT解析を実施。非劣性が証明されたら優越性を検証。
結果 弁置換術が成功したのは742例。
[一次エンドポイント]
as-treated解析において,死亡率はTAVR群が有意に低かった(TAVR群14.2% vs SAVR群19.1%:TAVR群の絶対リスク低下4.9パーセンテージポイント;95%信頼区間上限-0.4:非劣性のp<0.001;優越性のp=0.04)。
ITT解析も同様の結果であった(13.9% vs 18.7%:4.8パーセンテージポイント;-0.4:非劣性のp<0.001;優越性のp=0.04)。
治療との有意な交互作用がみられたサブグループはなかった。
[二次エンドポイント]
hierarchical testing により,1年後の心エコー上の弁狭窄指標のベースラインからの変化についても,TAVR群のSAVR群に対する非劣性が示された(平均大動脈弁圧較差:-39.04 vs -35.42mmHg;有効弁口面積:1.20 vs 0.81cm²,ともに非劣性のp<0.001)。NYHA心機能分類,QOLについてもTAVR群の非劣性が認められた(p<0.01)。
探索的解析では,TAVR群における1年後の主要有害心・脳血管イベントの低下(20.4% vs 27.3%, p=0.03)と,脳卒中リスクの上昇がないこと(8.8% vs 12.6%, p=0.10)が示唆された。
[手技関連合併症]
重大な血管合併症,恒久的ペースメーカー植込みはTAVR群のほうが有意に多かった。一方,出血,急性腎傷害,AFの新規発症または増悪はSAVR群のほうが有意に多かった。
また手技後の弁周囲の逆流はどの時点でもTAVR群のほうが有意に多かった。
★結論★手術高リスクの重症大動脈狭窄患者において,自己拡張型TAVR群は1年後の生存率がSAVR群よりも有意に高かった。
ClinicalTrials. Gov No: NCT01240902
文献
  • [main]
  • Adams DH et al for the U.S. CoreValve Clinical Investigators: Transcatheter Aortic-Valve Replacement with a Self-Expanding Prosthesis. N Engl J Med. 2014; 370: 1790-8. (Epub 2014 Mar 29.) PubMed
  • [substudy]
  • 在宅酸素療法,フレイルなどの新規予測因子を主としたリスクスコアは,TAVR後の短期・長期死亡リスクの層別に有用な可能性が示された。
    抽出コホート(2,482例)における死亡の有意な標準的および新規予測因子(ベッドサイド因子:肝疾患,在宅酸素療法,フレイル,機能的障害など)をベースにした死亡ハザード比によるスコアリングシステムを作成し,検証コホート(1,205例)で確認した。
    3,687例(超高リスク639例,高リスク391例,FDA承認までの継続登録研究2,657例:平均年齢83.3歳,女性46.3%,標準的予測因子:STS PROM 8.9%,logistic Euro-SCORE 22.2%,新規の予測因子:在宅酸素療法 22.0%,併存疾患:Charlson comorbidity index≧5 57.3%,フレイル:5m歩行速度低下82.4%;握力低下68.3%,要介助12.2%,Katzの日常生活動作障害≧2 10.3%)。
    Kaplan-Meier推定の全死亡率は30日後5.8%,1年後22.8%。
    死亡の有意な予測因子は30日後が,在宅酸素療法,要介助,アルブミン値<3.3g/dL,>85歳,1年後は在宅酸素療法,アルブミン値<3.3g/dL,6か月以内の転倒,STS PROM score>7%,Charlson comorbidity score≧5。
    これらの因子をベースにしたリスクスコアリング(在宅酸素療法,アルブミン<3.3g/dL[1年後は1ポイント],要介助[1年後は含まず];2ポイント,>85歳,転倒*,STS PROM>7%*,Charlson comorbidity≧5*;1ポイント * 1年後のみ)による重み付けスコアは,30日後の抽出コホートが1.52,検証コホートが1.48,1年後は1.97, 1.95。30日・[1年]死亡の低(0ポイント[0~1ポイント])・中等度(1~2[2~3])・高リスク(3~7[4~6])を良好に層別,検証コホートでの死亡率に高リスクと低リスクで3倍の差があった(30日後:それぞれ3.6%, 10.9%,1年後:12.3%, 36.6%)。C統計量は30日後 0.75,1年後0.79:J Am Coll Cardiol 2016; 68: 343–52. PubMed
  • 3年後の結果-TAVR群はSAVR群よりも転帰が良好。弁の構造的劣化もみられず,大動脈弁血行動態も良好であった。
    2年後までSAVR群を上回っているTAVR群の有効性が3年後も持続するかを検証し,大動脈弁血行動態を両者で比較した結果(転帰データ取得はTAVR群228/生存246例,SAVR群179/194例;追跡期間中央値35.8か月,34.6か月):全死亡,脳卒中はTAVR群のほうがSAVR群よりも有意に低かった(37.3% vs 46.7%, p=0.006)。全死亡(32.9% vs 39.1%, p=0.068,全脳卒中(12.6% vs 19.0%, p=0.034),全死亡,主要な脳卒中(35.0% vs 41.6%, p=0.046),主要心脳血管イベント(40.2% vs 47.9%, p=0.025),生命を脅かすあるいは障害を伴う出血(19.1% vs 41.3%*)も同群が少なかったが,永久的ペースメーカーの植込みは多かった(28.0% vs 14.5%*)。
    心エコーによる大動脈弁血行動態評価では,大動脈弁圧較差はTAVR群のほうが良好(7.62 vs 11.40mmHg*)だったが,中等度~重度の残存大動脈弁逆流は同群で多かった(6.8% vs 0.0%*)。弁血栓や弁の構造的劣化(1か月~3年後の圧較差>50%:9.5% vs 12.6%, p=0.38)はみられなかった。* p<0.001:J Am Coll Cardiol. 2016; 67: 2565-74. PubMed

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収載年月2014.03
更新年月2017.01