循環器トライアルデータベース

ADAPT-DES
Assessment of Dual Antiplatelet Therapy with Drug-Eluting Stents

目的 冠動脈への薬剤溶出性ステント(DES)植込み後は,aspirinとclopidogrelによる1年以上の2剤併用抗血小板療法(DAPT)が推奨されている。しかし,clopidogrelを投与した患者では血小板反応性のばらつきが大きく,血小板反応性高値はステント血栓症や有害心血管転帰に関連することが示されている。また,aspirinに対する血小板の反応性についても,有害転帰との関連性は明らかでないものの,ばらつきが認められている。
DES植込み成功例において,DAPT実施中の血小板反応性と臨床転帰の関係を検討する。

一次エンドポイントは,definiteまたはprobableステント血栓症(ARC基準)。
コメント Lancet. 2013; 382: 614-23. へのコメント
PCI後の心血管イベント発症には血小板血栓の関与が少なくない。一方,抗血小板剤抵抗性についてin vitroでは多くの報告があり,特にアジア人では遺伝的要因によりクロピドグレル抵抗性が多いと指摘されている。
本トライアルはDES-DAPT実施中の症例において,抗血小板剤投与後の血小板反応性と臨床転帰との関連を検討したこれまでで最大規模の前向き登録研究である。
その結論を鵜呑みにすると,(1) clopidogrelはステント血栓症・心筋梗塞を予防するが出血を増やし,予後は改善しない,(2) aspirinは出血を助長するだけで保護的には働かない,ということになる。また論文中のKaplan-Meier曲線を見ると,clopidogrelへの血小板反応性の差異が臨床転帰(ステント血栓症・心筋梗塞・出血)に影響を与える期間は手技を含めた1ヵ月以内であり,その後はほぼ平行線を辿っている。従って,(3) clopidogrelの内服は1ヵ月で十分,とも解釈できる。
わずか5%での「アスピリン抵抗性」の検討は論外として,クロピドグレルに関しても果たしてそうであろうか?
本研究に用いられたVerifyNowは,GPIIb/IIIa受容体を介した血小板凝集の活性化を評価するアッセイ系である。しかし血小板機能の調整機構は多様であり,血栓イベントも多因子が関与する複雑な病態であるため,そこまで事は単純ではないはずである。またVerifyNowという測定法に対しても評価はさまざまで,non-responderと判定するための採血のタイミングやカットオフ値も確立されたものではない。
しかし一方,ADAPT-DES以外にもVerifyNowで定義された「クロピドグレル抵抗性」を心血管イベントの独立した危険因子と結論づけた臨床試験が複数報告されている。従って血小板機能評価としての是非はともかく,クロピドグレル投与下のステント後血栓イベントの予測因子としては有用なのかもしれない。
本邦でもこれから新規薬剤が上市され抗血小板療法が多様化してくる。従って血小板機能に着目して治療を個別化しようという試みは重要と思われる。また抗血栓作用ばかりに捕らわれていると出血に相殺されて予後改善にはつながらない,というのも本研究の教訓である。(中野中村永井
デザイン 登録研究,多施設(米国とドイツの11施設)。
期間 平均追跡期間は350日。
登録期間は2008年1月7日~’10年9月16日。
対象 8,583例。1本以上のDES植込みに成功し,aspirinとclopidogrelを投与された連続症例。
除外基準:手技中または血小板機能検査前の重大な合併症,PCI後のバイパス術予定。
■患者背景:平均年齢63.6歳,男性74.1%,高血圧79.6%,高脂血症74.3%,糖尿病32.4%,現喫煙22.6%,既往:心筋梗塞(MI)25.2%;PCI 42.8%;CABG 17.1%;末梢動脈疾患10.2%,BMI 29.5kg/m²,安定虚血性心疾患48.3%,急性冠症候群51.7%(不安定狭心症27.6%,非ST上昇型MI 14.6%),病変枝数(1枝:38.3%,2枝:33.0%,3枝:28.7%),EF 54.9%。
・手技背景:大腿アクセス95.4%,橈骨アクセス4.4%,治療病変数/患者1.5,植込みステント数/患者1.7,総ステント長/患者32.5mm,最大血管径3.1mm,最大狭窄率(手技前88.1%,手技後1.7%),DESの種類(everolimus溶出ステント64.5%,paclitaxel溶出ステント16.5%,sirolimus溶出ステント13.5%)。
調査方法 aspirinは,PCIの6時間前までに非腸溶錠300mg以上,あるいは30分前までにチュアブル錠324mgまたは静注剤250mg以上を投与。clopidogrelは,血小板機能検査の6時間前までに600mg,12時間前までに300mg,または5日以上前から≧75mg/日を投与。PCI後はaspirinの無期限投与,clopidogrelの12か月以上の投与を推奨。
血小板機能については,PCI成功後(平均20.3時間後)にVerifyNowポイントオブケアアッセイにより下記項目を測定:aspirin reaction unit(ARU), P2Y12 baseline reactivity(BASE), P2Y12 reaction unit(PRU), P2Y12阻害率,IIb/IIIa overall on-treatment platelet aggregation unit(PAU)。血小板反応性高値のカットオフ値は,PRU>208(または≧230),ARU>550と定義。
結果 [早期終了]
予定症例数は11,000例,追跡期間は2年であったが,財源の制約により早期登録終了。
[一次エンドポイント]
1年間の追跡終了は8,246例(96.1%)。
ステント血栓症の発生は70例(0.84%)で,うち53例(0.63%)がdefiniteステント血栓症,40例(57.1%)が30日以内の発症。
[その他]
MIは269例(3.1%),臨床的に問題となる出血は531例(6.2%),死亡は161例(1.9%)。
[血小板反応性と臨床転帰の関連性]
平均PRUは188,平均ARUは419。血小板反応性高値例は,カットオフ値PRU>208:3,610例(42.7%), PRU≧230:2,961例(35.0%), ARU>550:478例(5.6%)。
PRU>208は≦208にくらべ,definite/probableステント血栓症(調整ハザード比2.49;95%信頼区間1.43~4.31, p=0.001),MI(1.42;1.09~1.86, p=0.01)のリスクが高く,臨床的に問題となる出血リスクは低かったが(0.73;0.61~0.89, p=0.002),全死亡とは関連しなかった(1.20;0.85~1.70, p=0.30)。ARU>550はステント血栓症(1.46;0.58~3.64, p=0.42),MI,全死亡とは関連しなかったが,臨床的に問題となる出血とは負の関係であった(0.65;0.43~0.99, p=0.04)。
★結論★DES植込み成功例において,clopidogrel投与下の血小板反応性高値は,1年後のステント血栓症およびMIリスクの増大,臨床的に問題となる出血リスクの低下と有意に関連したが,死亡とは関連しなかった。一方,aspirin投与下の血小板反応性高値は,出血リスクの低下と関連したが,その他の転帰との関連は認められなかった。
ClinicalTrials.gov No:NCT00638794
文献
  • [main]
  • Stone GW, et al for the ADAPT-DES investigators: Platelet reactivity and clinical outcomes after coronary artery implantation of drug-eluting stents (ADAPT-DES): a prospective multicentre registry study. Lancet. 2013; 382: 614-23. PubMed
    Price MJ: Platelet reactivity after coronary stenting. Lancet. 2013; 382: 583-4. PubMed
  • [substudy]
  • DES植込み例における退院後の出血と死亡-300日(中央値)で6.2%に発生,2年後の死亡と強く関連し,その影響度はMIよりも大きい。
    DES植込み後の退院例において,退院後の出血(PDB)の発生率,予測因子,死亡への影響を,とくに退院後の心筋梗塞(PDMI)と比較検証した結果(8,577例;追跡期間中央値729日):PDBはTIMI定義の大・小出血,GUSTO定義の重度・中等度出血,ACUITY定義の大出血,治療を要する出血と定義。PDB発生は535例(6.2%)・662件,うち複数回発生は82例(15.3%)で,出血部位は消化管がもっとも多く(61.7%),168例(31.4%)に輸血が必要であった。PDB初発までの時間は300日(中央値),発生時期は<30日10.5%,30日~>1年後48.2%,1~2年後41.3%。
    多変量解析で,退院後2年以内のPDBの独立した予測因子は高齢,末梢動脈疾患,ヘモグロビン低値,P2Y12 reaction unit(PRU)低値,退院時warfarin使用,重度石灰化,分岐部病変であった。
    PDB発生例は非発生例よりKaplan-Meier推定による2年後全死亡率(13.0% vs 3.2%),心臓死亡率(5.1% vs. 1.9%)が有意に高かった。PDBとPDMIを時間依存共変量とした多変量解析で,PDBは2年後の死亡と強く関連し(ハザード比5.03),その影響度はPDMI(1.92)の約2.6倍であった:J Am Coll Cardiol. 2015; 66: 1036-45. PubMed
  • IVUSガイド vs 冠動脈造影ガイド-IVUSガイドのほうが1年後のステント血栓症,MI,主要有害心イベントリスクが低い。
    IVUSガイド下でPCIを施行した3,349例(39%)の1年後の転帰を,冠動脈造影(CAG)ガイドで施行した5,234例と比較した結果:IVUSガイド群はCAGガイド群にくらべ若く,喫煙者,ST上昇型MIが多かったが,高血圧,高脂血症,CABG既往例は少なかった。また,3枝病変は少なかったが,総ステント長,ステント径は大きかった。IVUSのタイミングはPCI前7%,PCI後30%,PCI前後63%,IVUSに基づくPCI戦略の変更は74%(変更:ステント・バルーン径38%;拡張圧23%;ステント長22%,後拡張追加[拡張不十分13%,ステント圧着不良7%],ステント追加8%)。
    IVUSガイド群はCAGガイド群にくらべ1年後のdefinite/probableステント血栓症(18例[0.6%]vs 53例[1.0%]:調整ハザード比0.40;0.21~0.73, p=0.003),MI(2.5% vs 3.7%:0.66;0.49~0.88, p=0.004),主要有害心イベント(MACE[心臓死+MI+ステント血栓症の複合エンドポイント]3.1% vs 4.7%:0.70;0.55~0.88, p=0.002)のリスクが低かった。IVUSガイド群におけるMACEの低下が顕著だったのは,急性冠症候群と複雑病変を有する患者であった:Circulation. 2014; 129: 463-70. PubMed

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収載年月2014.05
更新年月2015.10