循環器トライアルデータベース

VA NEPHRON-D
Veterans Affairs Nephropathy in Diabetes

目的 ACE阻害薬とARBの併用療法は,それぞれの単剤療法よりも蛋白尿抑制効果が高いことが示されている。しかし,心血管高リスクの患者を対象としたONTARGET試験では,両薬剤の併用による腎保護作用は認められず,逆に高カリウム血症と急性腎障害のリスクが増大した。一方,ACE阻害薬あるいはARBによる末期腎疾患(ESRD)リスクの抑制は,顕性蛋白尿の患者のみで認められており,ONTARGETには顕性蛋白尿患者はほとんど含まれていない。
糖尿病性腎症患者において,ACE阻害薬lisinoprilとARBのlosartanの併用療法が腎障害の進行にもたらす有効性と安全性を,losartan単剤療法と比較する。

一次エンドポイントは 推算糸球体濾過量(eGFR)の低下*,ESRD,または死亡。
* ベースライン値が≧60 mL/分/1.73m²の場合は≧30mL/分/1.73m²の低下,<60 mL/分/1.73m²の場合は≧50%の低下。
コメント レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬は単独投与では糖尿病腎症患者の末期腎疾患のリスク抑制効果が認められ,これは降圧,アルブミン尿減少を介するものと考えられてきた。ACE阻害薬とARBの併用はさらなる降圧と蛋白尿低下を可能とする報告もあり,より腎機能の温存に有効ではないかという考えから当初は併用されることも少なくなかった。しかし比較的早期の腎症患者を対象としたONTARGETの結果に続き,顕性蛋白尿患者を対象とした本研究においても末期腎疾患リスクの抑制効果は認められなかった。さらに急性腎障害や高カリウム血症といった有害事象は併用群において有意に高率であり,試験の早期中止に追い込まれている。
以上の結果とこれまでの報告(ONTARGET,ALTITUDE[ACE阻害薬あるいはARBとレニン阻害薬アリスキレンの併用試験])を総合するとRAAS阻害薬の併用効果の論争には終止符が打たれたといってもよいのかもしれない。基本的には併用しないという結論である。ただし,あくまでこの結果は平均値であり,RAAS阻害薬併用が効果を示す患者のサブグループが存在する可能性は否定できない。(弘世
デザイン ランダム化,二重盲検,多施設(退役軍人病院32施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は2.2年(中央値)。
登録期間は2008年7月~’12年9月。
対象患者 1,448例。尿中アルブミン/クレアチニン比≧300mg/g, eGFR 30.0~89.9 mL/分/1.73m2の2型糖尿病患者。
除外基準:非糖尿病性腎疾患,カリウム>5.5mmol/Lなど。
■患者背景:年齢(併用療法群64.5歳,単剤療法群64.7歳),男性(98.8%, 99.6%),白人(72.2%, 72.9%),BMI(34.9kg/m², 34.3kg/m²),冠動脈疾患(22.0%, 23.1%),網膜症(42.7%, 42.8%),血圧(136.9/72.5mmHg, 137.0/72.8mmHg),LDL-C(81.6mg/dL, 84.3mg/dL),HbA1c(両群とも7.8%),血清クレアチニン(両群とも1.5mg/dL),血清カリウム(両群とも4.3mmol/L),eGFR(53.6mL/分/1.73m², 53.7mL/分/1.73m²),尿中アルブミン/クレアチニン比(842mg/g, 862mg/g[中央値]),降圧薬(ACE阻害薬:66.6%, 70.4%;ARB:19.5%, 16.3%;ACE阻害薬+ARB:5.8%, 5.1%;利尿薬:71.3%, 70.3%;Ca拮抗薬:59.3%, 57.1%;β遮断薬:69.9%, 68.7%;α遮断薬:21.0%, 21.9%)。
治療法 登録時にレニン・アンジオテンシン系阻害薬を投与していた症例は,投与を中止。最初に全例にlosartan 50mg/日を投与。カリウム<5.5mmol/L,クレアチニンの増加≦30%であれば100mg/日に増量し,30日間以上投与後に下記2群にランダム化。
併用療法群(724例):losartan+lisinopril。lisinoprilはカリウムとクレアチニンをモニターしながら,2週間ごとに10mg,20mg,40mg/日に増量。
単剤療法群(724例):losartan+プラセボ。
降圧目標は110~130/<80mmHg。
結果 予定症例数は1,644例であったが,安全性の問題(併用療法群で重篤な有害事象,高カリウム血症,急性腎障害が増加)から本試験は早期に登録を中止した。
[一次エンドポイント]
有意な群間差は認められなかった(併用療法群132例[18.2%] vs 単剤療法群152例[21.0%]:ハザード比0.88;95%信頼区間0.70~1.12, p=0.30)。
[二次エンドポイント:eGFRの低下+ESRD]
併用療法群で抑制傾向が示されたが(10.6% vs 14.0%:0.78;0.58~1.05, p=0.10),この傾向は時間とともに消失した(非比例性p=0.02)。
[その他]
死亡(8.7% vs 8.3%, p=0.75),心筋梗塞+心不全+脳卒中(18.5% vs 18.8%, p=0.79)には有意差を認めなかった。
[安全性]
重篤な有害事象は併用療法群のほうが多い傾向が示された(98 vs 82イベント/100人・年,p=0.06)。医師が試験薬によるものと判断した重篤な有害事象の割合も,併用療法群が多かった(p=0.049)。
併用療法群は,急性腎障害(12.2 vs 6.7イベント/100人・年:1.7;1.3~2.2, p<0.001),高カリウム血症(6.3 vs 2.6イベント/100人・年:2.8;1.8~4.3, p<0.001)のリスクが有意に高かった。
★結論★糖尿病性腎症患者において,ACE阻害薬とARBの併用はACE阻害薬単剤にくらべ重篤な有害事象(急性腎障害と高カリウム血症)の発生率が有意に高かった。
ClinicalTrials.gov No.:NCT00555217
文献
  • [main]
  • Fried LF, et al.; VA NEPHRON-D investigators: Combined angiotensin inhibition for the treatment of diabetic nephropathy. N Engl J Med. 2013; 369: 1892-903. PubMed
    de Zeeuw D: The end of dual therapy with renin-angiotensin-aldosterone system blockade? N Engl J Med. 2013; 369: 1960-2. PubMed

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収載年月2014.01