循環器トライアルデータベース

UMPIRE
Use of a Multidrug Pill in Reducing Cardiovascular Events

目的 心血管疾患(CVD)患者における二次予防治療の長期継続率は,特に低・中所得国で低いが,高所得国でもそれほど高くはない。またCVD未発症のリスク因子保有例も十分には治療されていない。複数の固定用量の薬剤を含む配合薬(FDC)は,低コストで利便性があり,治療意欲やアドヒアランスの改善が見込める。しかし,従来のFDCの研究は短期間で,CVD低~中リスク者を対象としており,CVD発症例における有効性は確立されていない。
CVDまたはCVDリスクが高い患者において,aspirin+スタチン+降圧薬2剤を含むFDCを用いた治療の有効性を通常ケアと比較する。

一次エンドポイントは,服薬アドヒアランス(患者自己報告による現行の抗血小板薬,スタチン,降圧薬≧2剤を直前1週間のうち4日以上服用),SBPおよびLDL-Cの変化。
コメント ポリピルの考え方は以前から提唱されていた。臨床試験も複数行われている。国内においても降圧薬の配合薬や降圧薬とスタチンの配合薬が使用されるようになるなど,複数の固定用量の薬剤を配合して治療薬とする方法は拡大する傾向にある。服薬アドヒアランスを向上させる効果が期待されることから,ポリピルについての臨床試験結果は注目される。
国内では配合薬について,特に高齢者の服薬アドヒアランスについての意義が期待されている。UMPIREの結果は,配合薬群62.1歳(1,002名),通常治療群61.6歳(1,002例)で,20%ものアドヒアランスに違いがあることが明らかとなった。3種類以上の成分を含む配合薬については,積極的に用いるべき症例もあると思われる。(中村中野永井
デザイン PROBE(prospective, randomized, open-label, blinded-endpoint),多施設(インド,英国,アイルランド,オランダ),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は15か月(中央値)。
登録期間は2010年7月~’11年7月。
対象患者 2,004例(うちCVD患者1,771例[88%])。18歳以上のCVD患者またはCVD高リスク者。
■患者背景:年齢(FDC群62.1歳,通常ケア群61.6歳),実施国(インド:501例,499例;欧州:501例,503例),男性(81.5%, 82.3%),血圧(137.0/77.4mmHg, 137.7/78.1mmHg),総コレステロール(160.5mg/dL, 162.8mg/dL),HDL-C(43.5mg/dL, 43.4mg/dL),LDL-C(90.5mg/dL, 92.5mg/dL),トリグリセライド(133.3mg/dL, 136.1mg/dL),血糖値(112.9mg/dL, 114.0mg/dL),クレアチニン(両群とも1.01mg/dL),喫煙歴(54.0%, 50.3%);現喫煙(13.1%, 14.4%),BMI(27.0kg/m², 26.9kg/m²),中等度身体活動(163.2分/週,158.3分/週),既往(冠動脈疾患:76.7%, 75.7%;脳血管疾患:15.4%, 15.7%;糖尿病:28.2%, 28.0%)。
・薬物治療:降圧薬(単剤:26.5%, 22.5%;≧2剤:65.9%, 71.0%),スタチン(88.0%, 87.6%),抗血小板薬(91.8%, 91.0%),抗血小板薬+スタチン+降圧薬≧2剤(59.7%, 63.4%),薬剤費負担免除(50%, 46%)。
治療法 FDC群(1,002例):aspirin 75mg/ simvastatin 40mg/ lisinopril 10mg/atenolol 50mg,またはaspirin 75mg/ simvastatin 40mg/ lisinopril 10mg/ hydrochlorothiazide 12.5mg。
通常ケア群(1,002例)。
結果 [一次エンドポイント]
試験終了時のアドヒアランスはFDC群で通常ケア群にくらべ有意に改善した(86% vs 65%:アドヒアランス良好の相対リスク[RR]1.33;95%信頼区間1.26~1.41, p<0.001)。これに伴い,SBP(平均群間差-2.6mmHg;95%信頼区間-4.0~-1.1mmHg, p<0.001)とLDL-C(-4.2mg/dL;-6.6~-1.9mg/dL, p<0.001)もFDC群で改善した。
[二次エンドポイント]
12か月後のアドヒアランス(88% vs 65%:1.36;1.29~1.43, p<0.001),DBP(-2.5;-3.3~-1.6mmHg, p<0.001)もFDC群で有意に改善したが,血漿クレアチニンは同群のほうが高かった(1.07 vs 1.04mg/dL:0.03;0.01~0.05, p=0.002)。
心血管イベントに有意差はみられなかった(50例[5%] vs 35例[3.5%]:1.45;0.94~2.24,p=0.09)。
[サブグループ]
ベースライン時のアドヒアランス不良例(727例[36%])はFDCによる改善が大きく,試験終了時のアドヒアランスは77% vs 23%(3.35;2.74~4.09;交互作用p<0.001),SBPは4.9mmHg低下(交互作用p=0.01)し,LDL-Cは6.7mg/dL低下(交互作用p=0.11)した。
[安全性]
重篤な有害事象は118例(11.8%)vs 102例(10.2%),死亡は17例 vs 15例であった。
★結論★CVD患者またはCVDリスクが高い患者において,FDCを用いた降圧+脂質低下+抗血小板治療は,通常のケアにくらべ15か月後の服薬アドヒアランスを有意に改善し,SBP,LDL-Cもわずかながら統計学的有意に改善した。
ClinicalTrials.gov No.: NCT01057537
文献
  • [main]
  • Thom S, et al.; UMPIRE collaborative group. Effects of a fixed-dose combination strategy on adherence and risk factors in patients with or at high risk of CVD: the UMPIRE randomized clinical trial. JAMA. 2013; 310: 918-29. PubMed
    Gaziano JM: Progress with the polypill? JAMA. 2013; 310: 910-1. PubMed

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収載年月2013.12