循環器トライアルデータベース

COPE
Combination Therapy of Hypertension to Prevent Cardiovascular Events

目的 現行ガイドラインでは高血圧患者の治療に複数の薬剤の使用を推奨しているが,どのような組み合わせが心血管イベント予防にもっとも適しているかは不明である。Ca拮抗薬はとくに脳卒中などの心血管イベントの予防に有効で,日本のように脳卒中が多い地域では第一選択薬の一つとされている。
L/N/T型Ca拮抗薬benidipine投与下で降圧目標を達成できない高血圧患者において,ARB,β遮断薬(BB),またはサイアザイド系利尿薬(TD)の併用による降圧効果と心血管イベント予防効果を比較する。

一次エンドポイントは心血管イベント*と降圧目標達成。
* 突然死,致死的・非致死的脳卒中,致死的・非致死的心筋梗塞(MI),不安定狭心症による入院,NYHA心機能分類II~IV度の心不全,末梢動脈疾患の新規発症・増悪,腎イベント。
コメント 本試験は当初年齢別に降圧目標値を設定しており,われわれの考えと隔たりがあったため東京都健康長寿医療センターでは参加を辞退しているが,途中で年齢に関わらず一律な降圧目標値に変更になったようである。昨今ARBが第一選択薬として用いられているトライアルが多いなか,第一選択薬としてCa拮抗薬を用いた場合の併用薬に何が最適であるかを検討した実地診療の疑問に即したトライアルで意義がある。Ca拮抗薬を第一選択薬とした場合,併用薬としてサイアザイド系あるいはサイアザイド類似薬治療群がもっとも心血管イベントが少なく,さらに糖尿病への影響が少なかった。この廉価で効果的かつ安全な組み合わせはぜひ臨床の場で活かされるべきである。ARB併用群に新規糖尿病発症が少ないことを強調しているが,心血管イベントと同列にあつかうべきエンドポイントではない。(桑島
デザイン PROBE(prospective, randomized, open-label, blinded-endpoint),多施設(日本の710施設)。
期間 追跡期間は3.61年(中央値)。
登録期間は2003年6月~’09年11月。
対象患者 3,293例。40~85歳,収縮期血圧≧140mmHg,拡張期血圧≧90mmHg,またはその両方を満たす外来高血圧患者。
除外基準:血圧≧200/120mmHg,二次性高血圧,インスリン治療を要する糖尿病,6か月以内の脳血管障害・MI・狭心症・冠動脈血管形成術・CABGの既往,心不全など。
■患者背景:年齢(ARB併用群63.0,BB併用群63.2,TD併用群63.1歳),男性(51.0, 50.5, 50.5%),BMI(24.6, 24.6, 24.4kg/m²),血圧(153.9/89.0, 153.7/88.7, 154.1/88.7mmHg),心拍数(74.0, 74.2, 74.2拍/分),心血管疾患既往(13.0, 11.4, 12.5%),糖尿病(13.9, 14.2, 14.4%),脂質異常症(38.6, 38.8, 41.5%),現喫煙(39.3, 39.6, 39.8%),降圧治療(80.3, 79.8, 79.7%;benidipine:62.9, 63.7, 63.2%;他のCa拮抗薬:11.6, 10.6, 11.0%;ARB:9.3, 9.5, 9.0%),BB(1.1, 0.7, 1.2%),利尿薬(1.1, 0.7, 1.2%),スタチン(17.0, 17.0, 16.3%),抗血小板薬(8.9, 6.8, 7.3%),抗糖尿病薬(6.9, 7.3, 7.2%)。
治療法 服用中の降圧薬を中止し,4~8週間のrun-in期間中にbenidipine 4mg/日を投与。この間に降圧目標(診察室血圧<140/90mmHg)を達成できなかった患者を下記3群にランダム化。いずれもbenidipineに追加投与。
ARB併用群(1,110例),BB併用群(1,089例),TD併用(1日量の半量のサイアザイド系利尿薬)群(1,094例)。
クラス内の薬剤の選択は担当医師に一任。併用開始後4~8週間で目標未達の場合はbenidipineを8mg/日に増量。さらに4~8週後に目標未達の場合は試験薬を増量。両方を増量しても4~8週後に目標未達の場合は,試験薬のクラス以外の降圧薬を追加。
結果 使用された薬剤は下記の通り。
ARB群:valsartan 34.2%, candesartan 24.0%, telmisartan 16.6%, olmesartan 13.3%, losartan 11.9%, irbesartan 0.1%。
BB群:atenolol 33.4%, carvedilol 21.5%, bisoprolol 17.3%,その他27.8%。
TD群:trichlormethiazide 72.8%, indapamide 16.3%,その他10.9%。
試験薬以外の降圧薬の使用率は,ARB群21.7%,BB群26.3%,TD群29.8%。
[一次エンドポイント]
降圧目標達成に群間差はみられなかった(治療終了時の血圧:ARB併用群;134.7/77.2,BB併用群;133.9/77.0,TD併用群;134.0/76.6mmHg,降圧目標達成率:64.1%, 66.9%, 66.0%)。
心血管イベントはTD群にくらべると他の2群のほうが多い傾向が示されたが,有意差はなかった(41例[3.7%],48例[4.4%],32例[2.9%];ARB群 vs TD群:ハザード比1.26;95%信頼区間0.80~2.01, p=0.3505,BB群 vs TD群:1.54;0.98~2.41, p= 0.0567)。
[二次エンドポイント]
心血管ハードエンドポイント(心血管死+非致死的MI+非致死的脳卒中[一過性脳虚血発作を除く])のリスクはBB群がTD群にくらべ有意に高かった(2.13;1.12~4.02, p=0.0201)。
BB群はTD群よりも致死的・非致死的脳卒中リスクが高く(2.31;1.17~4.56, p= 0.0109),ARB群よりも糖尿病新規発症のリスクが高かった(1.85;1.08~3.16, p=0.0240)。
全死亡には有意な群間差はなかった。
[有害事象]
いずれの試験治療も忍容性は良好で,重篤な有害事象による治療中止はそれぞれ12例(1.1%),11例(1.0%),11例(1.0%)であった。
★結論★Ca拮抗薬benidipineとARB,β遮断薬,またはサイアザイド系利尿薬の併用療法は,いずれも同等に降圧目標を達成し,心血管イベントを予防した。
文献
  • [main]
  • Matsuzaki M et al for the combination therapy of hypertension to prevent cardiovascular events trial group: Prevention of cardiovascular events with calcium channel blocker-based combination therapies in patients with hypertension: a randomized controlled trial. J Hypertens. 2011; 29: 1649-59. PubMed

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収載年月2013.11